幸せのつくね串
幸せになりたい。
でも、どうすればいいかわからない。
自分が、どうしたら幸せになれるかが、わからない。
多分、僕だけじゃなく、多くの人がそんな毎日に生きてるんだと思う。
でも
僕は最近、疲れたり、嫌なことがあったり。
ふとした時に、少しのしあわせが欲しいと思った時に、してることがある。
それは、ファミリーマートのつくね串を買って食べる事。
なんで幸せになりたいとつくね串を食べるのか。
それは、ある出会いがあったからだ。
とは言え、出会いと言ってしまうにはあまりにも一瞬で。
でも、見かけたと片づけてしまうには、
僕の中でそれはあまりにも強烈に刻まれている。
仕事で車に乗っていた時のこと。
助手席には同僚が座っていた。
信号待ち。
同僚が僕に話しかける。
「あれ、どこのですかね?」
同僚の方を見ると、隣で信号待ちをしている車を指さしている。
そこには、カップルらしき男女が乗っていた。
助手席に座っている彼女が、ジャジャーン!っと言わんばかりに笑顔でホットスナックの袋を開けている。
「つくねっぽいですね」
僕は答える。
「ああ、ファミマか」
もちろん、車越しの景色だし、彼女に直接聞いたわけでもない。
でも、僕たちの中でそれはファミリーマートのつくね串という事になった。
彼女が大きく口を開けて、一番上の一つを一口で頬張る。
すると彼女はジャジャーンの時より笑顔になって、腕をブンブン振り回し始めた。
信号が変わり、車を走らせる。
それだけ。
ほんの、数秒の出来事。
たったそれだけだった。
それでも。
僕は思わず
「いいなぁ。幸せだなぁ」
と口走った。
同僚は一瞬、「え?」という表情を浮かべた。
でもすぐにふっと笑って
「あ~。いいですねぇ~」
と言った。
ファミマのつくね串160円。
それで彼女は、幸せになる。
そんな彼女が、たまらなく羨ましくて、
そんな彼女が存在することが、たまらなく幸せだった。
だから僕は、幸せが欲しいとき、
ファミマのつくね串を食べる。
僕も、あの時の彼女のように、ちょっとだけ幸せになる。
そうしたら、もうちょっと頑張れる気がするから。
ありがとう。あの時の彼女。
平沼一丁目の交差点の先、信号待ちでつくね串を食べてた彼女。
もう二度と出会う事もないだろうし、きっとどこかで偶然すれ違っても、僕自身認識できる気はしない。
この文章が届くこともないだろうし、万が一目に触れたとしても、これ私だ!とはならないだろう。
でも、ありがとう。
僕は、あなたのおかげで、少しだけ幸せです。
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