〈絵本〉mozo mozo②
「おやおや、ねこが泳いでいるぞ。おかしいな?私の目がおかしいのか?いやいや、本当にねこが泳いでいる…」
「おおい、ねこや。どこへ行くんだい?」
タコがほら穴から顔を出して言いました。
「海の底の、もっと下。『もぞもぞ』に会いにいくんです」
タコは眼鏡をおさえながら言いました。
「もぞもぞだかなんだか知らないけれど、危ないことはよしなさい。
海の底にはなにもないよ。私の研究がそれを証明している。なぜなら…」
と、タコがコンピューターを使って説明をはじめようとしたので
「ごめんなさい。ぼく、急いでいるんです」とねこは言って
体をくねらせて再び潜っていきました。
どんどん、どんどん潜っていきます。
あたりは、暗く、冷たく、静かになっていきました。
そして…
ねこの足が地面につきました。そこから下には行けませんでした。
海の底についたのです。
そこは、真っ暗で、静かで、でこぼこしていました。
「ここに何をしに来た?」
と、後ろから低い声がきこえました。
「ここに何をしに来た?」と、不思議な形をした黒い魚が言いました。
「海の底の下にいる、『もぞもぞ』に会いにきたんです」
黒い魚はためいきをついて言った。
「おまえのようなものが次々とやってきて、海の底を荒らしたよ。海の底には宝が埋まっているとか、神様がいるとか言ってね。海の底はすっかり穴だらけだ。掘っても何もでてこなかったからだ」
「いいかね。私はこの深海でずっと生きてきた。その間、海の底の生き物なんか、一度も見たことがないんだよ。だから『もぞもぞ』なんかいるわけがないんだ」
そう言って黒い魚は去っていきました。
③につづく
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〈絵本〉mozomozo③|toga.shi|note
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