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青塔建立手記――序

※この記事には『The Tower of Blue』に関する重大なネタバレが多数含まれます。

自力で解き明かしてやりたいという方は、登り切ってからまた読んでください。
本記事は最後まで無料で閲覧いただけます。


はじめまして。兎谷あおいと申します。
駆け出しライトノベル作家にして――青い塔の主です。

このたびは、『The Tower of Blue』をプレイしていただき、ありがとうございました。

つくって解いてもらった後に、メイキングと込めた想いを語るまでがSICKS_MONSTERSリスペクト。
それでは参りましょう。
わたしが、なぜ、どうやって、塔を建てたのか。順を追って、お話していきます。


はじまりは The Quest Of X でした。

皆さま、Xはプレイしましたか?
プレイしていないなら今すぐ……って、塔は崩れてしまったんでした。
蜜井ひなさんと高井茅乃さんの記録映像がありますので、是非ご覧ください。

……どうでしたか?
クソゲーでしたよね。

知らなきゃ解けない知識問、導線が消された謎、果ては答えが確定しているのかすら怪しい問題。
つらかったですよね。私もつらかったです。
29Fで「は~~~」と叫び、61Fで「知らないよ……」とため息をつき、73Fで二晩ほど過ごし、98Fでひたすら「あかーん」と言い。

それでも。
それでも――100Fまで登り切った私は、長かった旅路を振り返り、こう感じてしまったのです。

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「楽しかったな」と。


そして――
Xの塔を登りきる前日、4月20日、私は自らの塔の建築をスタートしました。
……「そして」はおかしいって? 私もそう思います。
よくよく記憶を辿ると、直接のきっかけはこのツイートだったような気がします。時期的にもぴったり符号しますし。

あの狂気のコンテンツを、これだけ高く評価する人が世の中に存在するのなら。
私も、建ててみようと思ったのです。自分の塔を。
「Tower級」と呼ばれるような、そんな問題を集めたコンテンツを、つくってみようと思ったのです。


さて。
先人に倣って、私がなぜ塔を建てたのかについて語らせてください。

『The Quest Of X』が「狂気の塔」なら、『The Tower of Blue』は「エゴの塔」です。

私がつくった作品をモチーフに、私が"好き"な森羅万象を詰め込んで、私の好きな形にラッピングしたような。
ある意味で、私の半生が詰まったコンテンツと言っても過言ではありません。

好きなんですよ。Tower級の問題が。
よくわからない記号群と、頭の片隅に転がっていた知識が結びついた時の快感が。
徹底的に導線が消されてはいるけれども、確かにこの世のどこかに存在している知識に、調べて調べてやっと手が届いた時の気持ち良さが。
わけのわからない問題たちを、解いて解いて、完全制覇した時の達成感が。
"自分の好きなものが、世界に増えてほしい"
そう願う人は、多いはずです。
でもね。願うだけじゃ、世の中って変わらないかもしれないんですよ。

じゃあ、どうするか――

つくるしか、ないでしょう。

思えば、ライトノベル作家としてのデビュー作『わたしの知らない、先輩の100コのこと』を書き始めたときも、こんな心境でした。
主人公とヒロインがひたすらいちゃいちゃするやつが好き。でも世に少ない。じゃあ書く!!って。

自分でつくれば、たったひとつとはいえ、この世界に、自分の好きなものが増えます。
ひょっとしたら――それを見て影響を受けた人が、また新しいものをつくってくれるかもしれません。
それって、とっても素敵なことじゃないでしょうか?

……ま、それで建ったのがこのエゴの塔って考えちゃうと、あんまり素敵じゃないかもしれませんけど。

タイミングも、よかったですね。
零狐春さま『SICKS MONSTERS』(素晴らしかったです)やRIDDLERさま『FOR HEROES』(アツかったです)を皮切りに多数のMONSTER級の謎が来襲し、固定つよつよメンバーのギルドも形成されており、『O』や『The Quest Of X』のおかげでかなりの高難度でも解いてもらえることが分かってしまった。この状況、どなたかが「リスペクトって言えばジャンプに載れる」って言ってましたね。
自分のつくったコンテンツを一番多くの人に見てもらえるタイミングは、ここしかないと思いました。

あと、ちょうど「100」をキーとした自作が存在してしまったので。
これは建てるしかないな、と。

そして――塔は成りました。
4月22日、『X』の崩れる前日に告知を打ちます。『X』が好きでウォッチしている方々を逃さないようにという意図がありました。この時点では建設の進捗は4~5割だったでしょうか。
4月26日午前0時。常春さん製作のカレンダーを凝視し、翌27日にはMONSTERが襲来しないことを再確認。夜更かしさせるのも酷だと思い(結果的には夜更かしどころじゃなく多くの方のGWを奪い去る事態にまでなりましたが)OPEN日時を4/27 18:00として告知。
この時点では問題が9割5分完成、WordPressの方は登録しただけで手がついていませんでした。

満を持して、4月27日18時。

漠然と考えていたよりも遥か多くの来塔者を観測し、『SICKS MONSTERS』の偉大さを噛み締めました。
零狐春さま、RIDDLERさま、そして後に続くMONSTERを製作した多くの団体さま。このムーブメントをつくっていただき、本当にありがとうございました。謎解き界はこんな具合にリスペクトのサイクルががんがん回るのがすごいと思ってます。


開門直後は、実は腕が震えっぱなしでした。
人が来てくれなかったらどうしよう。
飽きられちゃったらどうしよう。
重大なバグだらけだったらどうしよう。
誰も見つけてくれなかったらどうしよう。
解いてくれなかったらどうしよう。
まあ、心配ごとなんて考えれば考えるほど出てくるわけです。

2Fに別解があると言われれば確かにその通りだと画像を直し。
9Fは「3.03cm」の間違いじゃないか? と聞かれれば慌てて確かめに行き。
24Fにミスがあると言われれば図の線の位置を修正し。
その他にもたくさんのミスやバグ、至らない点(導線消しすぎなど)がありました。
ご迷惑をおかけした皆さま、申し訳ありませんでした。

ともあれ。
謎解きお化けたちが、すごいペースで塔を登り始めました。

1時間弱でCheckpoint1に到達するギルドが現れ。
4時間もすると、Checkpoint2に人類が到達し。
そして――開門から21時間ほどが経つ頃には、一組のギルドの手によって、塔は踏破されていました。
後から話を聞いたところによれば、彼らはすぐに"見つけて"いたそうですが――にしても、早すぎる。強すぎる。
24時間経たないうちに攻略されてしまうとは、思っていなかったです。


そこからが、長かった。
全体を貫くモチーフについて、私は「どのギルドも最後まで見つけられない」か、「多くのギルドが初期に見つけてしまう」ことを想定していました。1ギルドだけが見つけるなんて事態は想定外だったわけです。
いや、だって……Xの塔リスペクトなんですよ……モチーフがないわけないじゃん……
まあ、私のエゴ丸出しだしそんなん見つけられるわけないじゃんといえばそれまでですが……
ちなみに「100コ」でググると一番上に出てくるらしいですよ。

……とはいえ、さすがに1週間も経つと塔を登り切るギルドが現れ始めました。1位ギルドとの差から、いかにこの塔がモチーフに拠っていたかがわかりますね。
最後まで登り切り、私を見つけ出してくださった皆さま、改めて、ありがとうございました。
貴方にとって、この塔は苦行でしたか? それとも楽しかったですか?

「こんなコンテンツだって、存在してもいいんじゃないか」
それだけを考えて作ったものです。荒削りな部分も多くあったと思います。

それでも――
それでも、「楽しかった」とか、「面白かった」とか。塔に挑んでくださった皆さまの人生に、結果としてプラスの影響を与えられていれば、こんなに嬉しいことはありません。


まだまだ語りたいことは山のようにありますが、ひとまず、「序」としてはこんなものでしょうか。
「『謎解き』と『検索謎』と『知識謎』と『クイズ』の違い」とか、「WordPressでひとりでも無料で塔が建てられます」とか、1問1問に込めた意図とか、今回の塔でうまくいかなかった部分とか、そういうことはまた別の記事で語ろうと思います。



この『青塔建築手記――序』は無料で公開しますが、もしも「面白かったぞ、金払わせろ」なんていう奇特な方がいましたら、是非お願いがあります。
私の書いた小説であり、『The Tower of Blue』のモチーフとなった作品。
『わたしの知らない、先輩の100コのこと』を、買ってください。読んでください。

電子書籍もありますので、おうちに籠もりきりのこんな機会に是非読書を。

今月からコミカライズも始まるんですよ。こちらもよろしければ。


自分が好きなもの、自分が作ったものを、ひとりでも多くの人に届けたい。
そんなエゴが肥大化して、いつの間にか塔が建っていました。

でも――こういうのが好きな人だって、きっといるでしょう?
そこの貴方とか。

だったら、こんなのだって、アリなんですよ。きっと。



ああ、そうそう。
『The Quest Of X』の施工主さん。
あなたの望んだ狂気は、この塔にありましたか?

私としては――そうですね。
ベクトルは違っていたかもしれないけれど、熱量だったら負けてないんじゃないかと思いますが。
施工主さんが次に見せてくれる新たな狂気を、私は、たぶん、心待ちにしています。


2020年5月10日
頭を使うエンターテイメントの更なる発展を願って

 兎谷 あおい

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