#アドベントリレー小説 4日目
本企画「アドベントリレー小説」は、12/1から始まり12/25に終わる、総勢25名で紡ぐリレー小説企画です。
前話:阿部秀斗さん
4日目 作:兎谷あおい
『緋色のヒーロー』#4
「青い雪」に曝露した者は、永劫に囚われる。意識だけがループする。
ごく微量ならば、その周期は長く。大量に摂取すれば、その周期は短く。
曝露者に配布されるアズールカウンターは、「巻き戻ってしまう」タイミングまでの残り時間を表示するものだ。
そして――「緋色のヒーロー」は、この「青い雪」に対抗する現象である。
どこからともなく現れた彼ら・彼女らは、その身に秘めた緋色の炎で、曝露者を焼き焦がす。「雪」の成分を、完膚なきまでに、概念ごと消し飛ばす。時間のもつれを正常に戻してゆく。
ヒーローは慈善事業。不運にも時間の檻に囚われてしまった魂たちを浄化し、"ただしい"輪廻に戻すことが正義である――
そう信じているから、彼らは性質が悪い。非曝露人には作用しないからって、力任せに街を丸ごと焼き払うとか、あいつらは平気でやる。こっちの事情なんてお構いなしだ。
俺はまだ、焼かれるわけにはいかない。
だって俺は、あいつを――あいつを、助けないといけないから。
次話:徒波咲(みぎめ)さん