道の駅西瓜をおいた夕暮れにほおずきが浮くちりんちりりりん

ずっと待っていた。わたしは哀しかった。ただそこにいたいだけなのに常に痛みを感じていた。いつもみんなをみていた。みんなはわたしから眼をそむけた。夏の雨に降られるようにこの世界から消えてゆくのがこわかったわたしは、夕暮れの境界に立ち尽くすようにして自分で自分を縛り付けていた。長いときが経った。ひとはわたしをじぶんの仲間でないなにかとして畏れた。脚がひきのばされ顔が横につぶれたわたしの姿をみたものはみんなわたしを拒絶した。わたしはただそこに立っているだけだった。バックパックを背負ったあなたは、夏の気配をまとっていた。小麦色に焼けたはだ、むわりと漂うひととしての匂い、わたしがかつて持っていたにくのあたたかさ。わたしはただ立っているだけだった。あなたはこちらを向いた。引き伸ばされた脚をみた。横につぶれた顔をみた。あなたはなにを想ったのだろう。ただこちらに向かって歩いてきた。わたしは立っていた。あなたはわたしの引き伸ばされた脚のふもとに西瓜をひとつおいた。突如としてわたしの痛みが癒やされた。夏の夕暮れのときだった。わたしはただ立っているだけだというのに、あなたは蓮のような笑顔を残してどこかへ歩いて行った。ゆらりと視界が揺らいだ。西瓜はただそこにあった。わたしはもうこわくなかった。錨のようななにかが外れる音がした。

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