映像制作者向け ビデオ三脚の選び方
映像制作をされている、もしくはこれからしたいと考えている皆さん。三脚はどんなものを使っていますか?筆者は、数年前まで三脚なんてどれも同じだろうと考えていましたが、映像制作を始めてからその重要さに気づかされました。スチル三脚とビデオ三脚の違い、ビデオ三脚の選び方について解説していますので最後までチェックしてください。
スチル三脚とビデオ三脚の違い
三脚には写真用のスチル三脚と動画用のビデオ三脚があります。このふたつの違いについては多くのところで解説されていますが改めて説明させていただきます。ビデオ三脚(雲台)の大きな特徴は以下の4つです。
1.水平出しができる
2.パンができる(カメラを上下左右に振って撮影できる)
3.ドラッグ/トルクが調整できる(パンチルトの速度を変えられる)
4.カウンターバランスが調整できる(手を離したらカメラが静止する)
1.水平出しができる
映像撮影ではカメラを固定して撮影するフィックス以外にも上下左右に振るパン(水平方向)、チルト(垂直方向)と呼ばれるカメラワークを駆使します。その際、雲台の水平がとれていないと、映像が傾いてしまいます。そのため、水平出しができることがビデオ三脚の最低ラインなのです。
2.パンができる(カメラを上下左右に振って撮影できる)
カメラを上下左右に振って撮影する技法をパンと言います。垂直方向に振る場合にはティルトとも言います。ビデオ三脚では安定してパンができることが求められます。
3.トルクが調整できる(パンチルトの速度を変えられる)
トルクやドラッグと呼ばれる機能を使うと、パンやチルトに対して負荷をかけることができます。早いものを追うときは負荷を少なく、逆にゆっくりと動かしたいときには負荷をかけるなど、カメラマンの好みに応じて負荷を変えることができます。エントリークラスのビデオ三脚にはほとんど搭載されていない機能です。そのような三脚で、パン、ティルトのロック機構を使って負荷をかける方法は三脚の破損につながるので避けたほうが良いかと思います。
4.カウンターバランスが調整できる(カメラが静止する)
カウンターバランスという言葉を聞いたことがありますか?動画三脚を使ったことがある人でも知らない機能かもしれません。これは低価格の動画三脚には搭載されていない機能なのです。(固定されていて、調整できない)
通常、カメラを垂直方向に振れば、カメラの自重で下に傾きます。しかし、このカウンターバランス機能を使うと、どの角度にカメラを振っても三脚から手を放したら静止した状態を保つことができます。これはカメラの自重に対して反対向きの力をかけ、自重と釣り合うことで、静止させているのです。カメラを振ったり、とめたりする映像撮影においては、この機能が非常に重要になるのです。
代表的なビデオ三脚ブランド
ビデオ三脚の代表的なブランドをご紹介しておきます。
日本 Libec 初心者用からプロユースまで幅広く展開
日本 SHOTOKU 放送用の大型カメラ三脚が中心
ドイツ Sachtler 日本の映画業界で定番
イギリス Vinten 日本のテレビ業界でENG三脚の定番
アメリカ OConnor ハリウッドで多く用いられている
イタリア Manfrotto エントリークラス~ミドルクラス
オーストラリア MILLER ミドルクラス~ハイエンドクラスまで
他にもたくさんあると思いますが、筆者が知っているブランドはこれくらいです。それぞれの特徴については筆者の主観です。
本当にたくさんのメーカーがあり、迷ってしまいそうですが、それぞれのブランドで方向性が違うので、使用するカメラや使用目的、予算などがしっかりと決まっていれば、ある程度は絞られると思います。
使用するカメラで三脚を選ぶ
三脚は「大は小を兼ねない」
三脚の選び方の一つが使用するカメラから選ぶというものです。これが一番重要です。三脚には脚とヘッドにそれぞれ耐荷重があります。耐荷重が小さい三脚に大型のカメラを乗せると十分な性能を発揮できなかったり、最悪の場合、破損したりする可能性があります。それなら、耐荷重の大きい三脚を買えば、大は小を兼ねるで問題はないのでは?と思われるかもしれません。しかし、大型の三脚に小型のカメラを乗せるとカウンターバランスが合わず、カメラを振っても跳ね返ってくるなんてこともあります。カメラに合わせた三脚を選ぶ必要があります。
※重心高をあげることで小さなカメラを大きな三脚で使うこともできなくはないですよ・・・
三脚のレベル
ここからは筆者の独断と偏見により、三脚を3つのレベルに分けて解説を進めていきたいと思います。
エントリークラス
ドラッグ、カウンターバランス調整などがない入門用三脚
マンフロット500、LibecTH-Xなどミドルクラス
ドラッグ、カウンター機能あり
耐荷重10Kg以下で業務でも使用できる
SachtlerのAceやFSBシリーズ、LibecのNX、VintenのBlueなどハイエンドクラス
耐荷重10kg以上の放送用、シネマ用三脚
SachtlerのCINEシリーズ、VintenのVision100など
カメラの種類別おすすめ三脚
ミラーレス一眼で動画を撮影する場合
フルサイズミラーレス一眼に標準レンズを付けたときの重量は約1.5㎏です。
この場合、エントリークラスからミドルクラスの三脚を選ぶと良いです。筆者のおすすめはLibecのNX100、SachtlerのAceです。どちらもカウンターバランス機能、ドラッグダイヤルを装備しており、動画撮影に十分な機能を備えていながら軽量扱いやすいです。価格は約10万円で、比較的手に取りやすい金額となっています。
ビデオカメラで撮影する場合
家庭用ビデオカメラの重量は約0.5㎏です。ミラーレスと同じく、エントリークラスからミドルクラスの三脚を選ぶと良いと思います。
業務用ビデオカメラで撮影する場合
ミドルクラスの三脚を選ぶと良いかと思います。家庭用ビデオカメラと同サイズの小型の業務用ビデオカメラ(SonyZ90、CannonXA40等)であればSachtlerのAce、NXシリーズがおすすめです。それよりも大きいものであればSachtlerのFSBシリーズ、VintenのVisionBlueシリーズがあると安心ですね。これらは15~30万円です。
レンズ交換式シネマカメラで撮影する場合
SONYのFS5、FS7、FX6、FX9、PanasonicのEVA1、CanonのC200などのスチルレンズを使用するタイプのシネマカメラを使用する場合はミドルクラスの三脚がおすすめです。おすすめはSachtlerのFSBシリーズ、VintenのVisionBlueシリーズです。
放送用カメラで撮影する場合
ENGカメラなどを使用する場合、ハイエンドクラスの三脚が必要です。ボール径100㎜以上で耐荷重がある程度あるものを使用します。
ENGカメラの使用であればVintenVision100がおすすめです。Vision100は一度使ったらやめられない、そんな三脚だと思います。
※このレベルのカメラを使用する人におすすめの三脚を紹介する必要などありませんが、趣味でENGカメラを使用している人、これから使ってみたい人に向けて一応書いておきます。
三脚にそこまでお金をかけるべきなのか
ここまでいくつかの三脚を紹介してきましたが、その金額の高さに驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。カメラに比べれば地味な機材ですし、ただの脚に数十万は高すぎるとお考えになるのも当然です。しかし、良い映像を撮影するために良い三脚は必須です。筆者は三脚にこそお金をかけるべきだと考えています。カメラの寿命は数年ですが、三脚は大切に使えば数十年使えます。そう考えれば、安いように感じられませんか?三脚は数千円で購入できるものから高いものでは数百万円するものまであります。どのレベルを良いものとするかは人それぞれだと思いますので、予算に合わせてご検討ください。
小さいカメラから大きいカメラまで使える三脚ってないの?
ここまでカメラの種類別におすすめの三脚を紹介してきました。三脚は大は小を兼ねないとお伝えしてきましたが、どうしても大は小を兼ねる三脚がほしいという人もいるはず!筆者もその一人でした。
そういった人におすすめしたいのが、SachtlerのAktiv8です。
Aktiv8についてはこちらの記事でレビューしていますので、ぜひチェックしてください。