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「玉響に咲くウタ」アレンジ制作過程

初めまして。つつつと申します🙇
この度、めえそらさんのオリジナルMV「玉響に咲くウタ」にて、編曲(アレンジ)を担当させていただきました!

この楽曲は、歌い手として活動されているめえ助さんとそらさんのデュオ「めえそら」の活動4周年の記念となる楽曲で、作詞作曲はかえるらさん、MVイラストはとりでのジョーさんが担当されています。
かえるらさんが描く独特な世界観に、とりでのジョーさんの温かみのあるイラスト、そしてめえそらさんの美しい歌声が重なり、まるで絵本や夢の中に迷い込んだような、少しダークでメルヘンな作品に仕上がっています。
ぜひ一度聴いてみてください!

このNoteでは、私つつつの視点からアレンジ制作の流れや、その過程で考えていたことについてご紹介します。


制作前の話

制作に入るまでの背景の話を少し…。

めえそらさんとの出会い

2024年5月頃に「第五回歌詞統一祭」というイベントが開催されました。
歌詞統一祭は、作詞家のエタさんとcataclecoさんが主催する投稿祭イベントで、参加者が同じテーマの歌詞に曲をつけて投稿するという内容の催しです。

自分はこれまでBGMなどのインスト曲しか作ってこなかったのですが、歌ものを作ってみたい気持ちから参加してみたのでした。
この第五回歌詞統一祭では、参加者の作品が歌い手の方々に歌っていただけるという賞もあり、そこでなんと、めえそらさんに自分の曲を歌っていただけることになったのです!
初めて作った歌ものの曲が、まさか誰かに歌ってもらえることになるとは思ってもみなかったので…この時は本当に嬉しかったです😭

めえそらさんとはこの時のご縁がきっかけで、その後X上で仲良くさせていただいています。

ちなみに、こちらがめえそらさんに歌っていただいた動画です。
ぜひ聴いてみてください!

アレンジのご依頼をいただく

2024年10月の初めに、めえそらさんから「作曲・作詞・イラストまで出来上がっている楽曲があり、その曲の編曲を依頼したい」というお話をいただきました。
日ごろから「誰かと一緒に創作したいな~~~」という気持ちが高まりつつも、コミュ力がないやら自信がないやらで踏み出せずにいた自分にとってはまさに…渡りに船…!!
喰い気味に「お手伝いさせてください!」とお返事しました。

その後、めえそらさんから楽曲の歌詞、音声ファイル(各パートのステムデータと全体の2MIXデータ)、そして美麗なイラストを送っていただきました。
アレンジの方向性についていくつかやり取りをした後、まずは短めのデモを制作し、そのイメージが合っているかをめえそらさんに確認してもらう形で進めることになりました。


制作開始・方向性決めの話

とりあえずメロディとベース(コード)を耳コピ

他の方が作った楽曲を本格的にアレンジするのは初めてだったため、手順も何もわからない状態でした。
そこで、まずは手を動かせるところから始めようと、仮歌などで必ず必要になるメロディの打ち込みから着手しました。

DAWに原曲のステムを読み込み、テンポを合わせて再生しながら、耳で聴き取ったメロディを以下の様に打ち込んでいきます。
この際、コード進行を把握しやすくするために、ベース音も併せて打ち込みました。

アレンジの方向性の検討

めえそらさんと相談しながら、アレンジの方向性について話し合った内容やキーワードをざっくりまとめると、以下のようになりました。

  • テーマは「夢の中」
    主人公と、夢に登場する“夢の案内人”(主人公のぬいぐるみ)のお話。

  • 編曲の方向性

    • ファンタジックで美しく、幻想的な雰囲気

    • 神聖さ・森の中感

    • めえ助さん:「なんか、キラキラほわー、みたいなwwwwww」

  • 楽器のイメージ

    • グロッケン、シンバル、ハープ、ウィンドチャイム など

  • アレンジの自由度

    • 「がっつりアレンジしてもOK」という作曲者さまのお墨付き

アレンジの方向性は、以下の3つのアプローチを行き来しながら考えていきました。

  1. とりあえずイメージ案をいくつか作ってみる

  2. 参考になりそうな楽曲を探す

  3. 歌詞やイラストからインスピレーションを得る

とりあえずイメージ案をいくつか作ってみる

がっつりアレンジOK!?じゃあ~~思いっきりやったるか!!!と意気込みながら、まずは耳コピしたメロディを使って、いくつか短いスケッチを作りました。
この段階ではあまり深く考えすぎず、一人ブレストのような感覚でアイデアを出していきました。

いただいた原曲はワルツ調のアレンジが施されており、少しダークでゴシックな雰囲気が漂っていました。
そこで、最初はその「ダークさ」を抑えつつ、より神秘的な方向へ寄せてみようと試行錯誤しました。
以下は、初期に作った没スケッチのいくつかです。

コードを変えてとにかく神秘感マシマシにしてみたり…

元のメロの調も変えて明るく幻想的にしてみたり…(もはや別の曲w)

参考となりそうな楽曲を探す

並行して、制作の参考になりそうな楽曲(いわゆるリファレンス曲)を探しました。

自分の場合、感覚に頼った曲作りが多いため、いつも1〜3曲ほどピックアップしています。
とはいえ、「この雰囲気を取り入れたいな〜」とか「インスピレーションをもらえたらいいな」くらいの感覚なので、最終的に完成する曲は、参考にしたものとはまったく違う雰囲気になることもよくあります。

今回は、以下の楽曲をなんとなーく参考にしていました。

  1. ヨッシーストーリー「ベビークッパのおしろ」
    森の雰囲気を出すのにピチカートを使いたいと思っていたのと、ダークさ・妖しさ・不気味さのある曲って何かあるかな…と考えていた時に、子どもの頃プレイしていたヨッシーストーリーのBGMを思い出しました。
    (蛇足ですが、ヨッシーストーリー、個人的になかなかのトラウマゲーです…。)
    ※Noteに貼るのによいリンクが無かったんですが、ググると動画とか出てくると思います。

  2. ハリーポッター「ヘドウィグのテーマ」の冒頭らへん
    森の雰囲気・神秘的な感じ・ファンタジーな感じ・妖しさがあって、まさしくこんな感じにしたいな~と…。

歌詞やイラストからインスピレーションを得る

歌詞を何度も繰り返し読み、自分なりに解釈してみました。
夢の中の不思議な森の中で、最初はよく分からない、ちょっと怪しい世界を案内されていくけど、最後には守ってくれると分かって安心できる場所…なのかな…??
とすると、ダークさを完全になくしちゃうとちょっと世界観と嚙み合わないかも…。
などと考えるうちに、「ダークさ・神秘さ・温かみ」を共存させる方向がいいのでは?」と感じ始めました。
以下、歌詞についてめえそらさんに送っていたチャットの内容です。

もともとのコード進行が結構ダークさといいますかゴシック感の強い進行とそれに合うようなメロディで作られていて、かつ、
・「注意:食べかけは残さぬように」
・「迷い子を食べたりはしないから」
・「あなたの家に帰りたいと思わぬように」
のような裏の思惑感・誘惑・現実からの逃避などのダークを少し感じるさせようなフレーズもあって、ダークさを完全になくすとちょっと世界観とかみ合わなくなるかも…と思ったというところがありまして、
ただし、ダークさだけかというとそういう訳でもなく、
・「今夜は君の手を握って眠っていたいよ」
・「ここにいる間は守って生きていたいよ」
のような安心感や温かみを感じさせるようなフレーズもあったり、頂いたイラストのかわいい感じもあるので、どこかでそういったあたたみを出せるようにしたいなぁと思ってはいますが、どうできるかは悩み中です…

ミニデモ第一稿送付時のチャット

ちなみに、歌詞については作詞者であるかえるらさんのNoteに詳しい解説がありますので、ぜひ見てみてください。曲作りのきっかけや経緯などから書かれていて、読み物としてめちゃ面白いですよ!

ミニデモ作成、めえそらさんに方向性確認

歌詞やイラストの雰囲気、参考曲から得たインスピレーションもあり、以下のようなフレーズを作りました。これが今回のアレンジの方向性の土台となりました。

上記のフレーズを基にアレンジを膨らませ、最終的に第一稿としてめえそらさんに方向性を確認していただくためにお送りしたミニデモがこちらです。
ほぼ最終系のイメージに近いですね。

このデモをめえそらさんに確認していただいたところ、一発でOKをいただきました(ものすごい喜びの反応を頂けてすごく嬉しかったです🤗)。
方向性がある程度定まったので、ここからは本格的に細かいアレンジ作業に進みます。


細かなアレンジの話

細かい話はたくさんあり、書き始めるとキリがなさそうですが、アレンジ作業の中で考えていたことをいくつか挙げてみました。

結局原曲の雰囲気が一番合ってる

いろいろとイメージ案を作ってみたものの、歌詞の内容などを踏まえると、結局メロディやコード進行は原曲のイメージが最も合うと感じました。
そのため、基本方針として、原曲からメロディやコード進行を大きく変えることはせず、使用する楽器とアレンジで少しファンタジックさを加えることにしました。

今回、原曲をいただいた時点ですでにアレンジがしっかり作り込まれていたため、そのアレンジ自体をかなり参考にさせていただきました。
具体的には、以下のような箇所はほぼ原曲のアレンジを踏襲しています。

  • イントロ・アウトロのグロッケンやピアノのフレーズ

  • Cメロのアコーディオンの対旋律

  • めえそらさんパートの掛け合い(一部修正しています)

  • 時計の音・ノックの音などの効果音

特に時計の音やノックの音などの効果音については、普段の自分の曲作りの中でもあまり取り入れようという発想自体がなかったので、こういった音を入れることで曲の世界観が強まっていくんだなぁ…と勉強になりました。
(ちなみに、あの「コンコン」というノックの音は、個人的には現実サイドからの何らかの干渉なのかな…と勝手に想像していますw)

サビでスウィング感を出すのと、前後の繋がり

以下はBメロ~サビ部分の伴奏です。

アレンジ作業中、ずっとデュアルモニターでイラストを横に表示させながら作業していたおかげか、イラストから多くのインスピレーションを受けました。
特に、イラストのめえそらさんがニコニコしながら楽しそうに夢の中を案内する感じをどう出そうかと考えた際、原曲にも少しハネたリズムがあったので、サビ部分ではウォーキングベースとスウィング感を取り入れ、ジャズワルツ風にしてみました。

ここで気を付けた点は、Bメロ部分の「ズンチャッチャ♪ズンチャッチャ♪」というワルツのリズムから突然サビの跳ねたリズムに切り替わると、ノリがガラッと変わって違和感が出てしまうため、できるだけ自然に繋がるように意識しました。
(文字の説明が難しいですが)サビ2小節前からのドラムとベースのリズムで足踏みするように溜め始め、1小節前で加わるピアノの2拍目のアクセントでサビに向けて勢いづかせています。
また、サビ終わりから間奏に向かう「僕達は迷い子を~」の部分では、ドラムのリズムが徐々に元の「ズンチャッチャ♪」に戻りつつあるのが感じられると思います。

ちなみに、イラストについては制作者のとりでのジョーさんが制作過程のNoteを公開されています。作品に寄り添いながらとても丁寧に制作されていることが伝わる内容となっているので、ぜひ見てみてください!

展開で飽きさせないように

以下は2番Aメロ部分の伴奏です。

曲が5分を超えるので、全体的に平坦なアレンジにならないよう、1番と2番のAメロで伴奏の形を変えました。
スケッチ案を考えている中でうまくはまるアイデアがあり、それを組み合わせて使用しました。

また、静かな部分は静かに、Cパートなど盛り上がる部分は盛り上げる、といったメリハリを意識しました。

ラストサビ転調を盛り上げる

以下はラストのサビ転調部分の伴奏です。

転調後のサビを盛り上げるために、ストリングスの伸ばしとアコーディオンの対旋律を加えました。
高音を含む広い音域のストリングスが入ると一気に空間が広がったような感じがしますね。
最後なのでアコーディオン君もここぞとばかりに暴れています。

ハモリ・コーラスについて

ハモリやコーラスは、曲の盛り上がりの部分や音数が減って少し寂しく感じるところに入れる方針で進めました。
まずは叩きを作成し、めえそらさんからご意見をいただきながら、その叩きを基に追加や修正を行ってもらう流れにしました。


最終ミックス調整~音源完成の話

オケのアレンジが一通り完了し、ラフミックスの段階でめえそらさんにご確認いただいた後(ここでもとても喜んでいただけて嬉しかったです🤗)、最終的なミックスを調整してオケ音源が完成しました。
今回、オケ音源(伴奏)にボーカル音声を混ぜる作業(ボーカルミックス)はそらさんが担当されたため、自分の大きな役目はここまでとなります。

その後、めえそらさんによるボーカル収録、ボーカルミックス、動画編集の作業が行われ、ついに2025年2月1日に作品が公開されました。
動画やボーカルミックス後の最終的な完成形は事前に受け取っておらず、投稿されてからのお楽しみだったので、当日はワクワクしながら待機していました。

動画を見て、MVとしてのクオリティの高さに驚きつつ、こんな素敵な一つの作品に自分が携われたことがとても嬉しく、本当に感動しました。。
創作をしている中でも一番楽しい瞬間の一つですね!✨


さいごに

今回、本当に楽しくアレンジさせていただき、この曲は自分にとってとても思い入れのあるものとなりました。
素敵な機会をいただいためえそらさんをはじめ、制作メンバーのかえるらさん、とりでのジョーさん、そして作品を聴いてくださった皆さまに心から感謝しています。
ありがとうございます!!

そして…これまではずっと一人で気ままに曲を作ることが多かったのですが、誰かと一緒に一つの作品を作る楽しさに気づいてしまいました😎
もし何か一緒にやろうよ!!という方がいらっしゃれば、ぜひお声がけください…!🙏

長々と書いてしまいましたが、ここまで読んで下さりありがとうございました!