149.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」
第25節「フジテレビ日曜9時 東映不思議コメディーシリーズ 前編」
1974年、東映テレビ部は企画者平山亨が担当し、石森章太郎原作の特撮ロボットコメディー『がんばれ!!ロボコン』(1974/10/4~1977/3/25 全118話)を東映テレビ・プロダクション(テレビプロ)にて制作します。
10月から日本教育テレビ(NET・現テレビ朝日)系金曜19時30分枠にて放映が始まると人気を博し、最高視聴率29.2%(第66話)を獲得するなど大ヒット、2年半全118話(124回)続く人気番組となりました。
1977年4月、NETがテレビ朝日(ANB)に社名が変わるタイミングで『がんばれ!!ロボコン』は終了し、金曜19時30分枠にて『ロボット110番』(1977/4/8~12/30 全37話)が始まります。
テレビプロ制作のこの作品は前作には及びませんが平均視聴率11.8%とまずまずの成績でした。
①フジテレビ系日曜9時『ロボット8ちゃん』(1981/10/4~1982/9/26 全52話)
1981年、広告代理店の読売広告社から東映テレビ部にフジテレビ日曜朝9時枠での子供番組制作の話が持ち込まれました。
フジテレビ前田和也と話し合い東京撮影所(東撮)内にある東映東京制作所(制作所)の植田泰治、植竹栄作がプロデューサーを担当。毎日放送『仮面ライダースーパー1』が終了した平山亨が企画として参加します。
1960年に東映入社した植田は、1965年に制作所に出向、1966年テレビ部に戻り企画者となり、平山と共に『キャプテンウルトラ』『ジャイアント・ロボ』を担当していました。
再び制作所に異動すると『キイハンター』や『プレイガール』などに就き『バーディ大作戦』で監督を務めた植田は、1979年の『ザ・スーパーガール』から制作所にてプロデューサーに戻ります。
ロボットのデザイン及び原作は石森章太郎にお願いし、脚本家の大和屋竺(やまとや あつし)と門下生たちがシリーズ構成にあたったロボットコメディー、フジテレビのチャンネル8から名付けられた『ロボット8ちゃん』の制作が始まりました。
制作スタッフは、監督小林義明、佐伯孚治、武田一成、高橋勝、岡本明久、冨田義治、内藤まこと、田中秀夫、撮影村上俊郎、高岩震、奥村正祐、林迪雄、利根川曻他、照明山本辰雄、大須賀国男、大森康次、上原福松、関口弥太郎、録音田中允、美術安井丸男、北郷久典、編集望月徹、水間正勝が担当。
キャストには、平山が望んだ榊原るみの他に団次郎や潮健児、敵役のバラバラマンにはアングラ劇団黒テントの斉藤晴彦、アクション指導には大野剣友会の岡田勝を起用します。
音楽は筒井広志、主題歌は小林亜星が作曲しいちひさしが編曲し、オープニング「ロボット8ちゃん」は石森章太郎が作詞、歌は猪股裕子、ヤング・フレッシュ、こおろぎ'73、エンディング「赤い夕陽のバラバラマン」は八手三郎が作詞、バラバラマンを演じた斉藤晴彦とこおろぎ'73が歌いました。
10月4日から放映がスタートしましたが、第1回の視聴率は2.8%と苦戦します。
その後、監督、キャストや主題歌を替えるなど様々なテコ入れ策を講じながら番組が持つ面白さが伝わったことで徐々に視聴率が上がって行きました。
その中で若手の脚本家浦沢義雄の不条理ギャグやシュールなコメディセンスが注目を浴びます。
2月の第21話で10.5%になると終わり近い第50話では16.8%と最高視聴率を記録しました。
結果、『ロボット8ちゃん』は1年間全52話、平均視聴率9.2%と成功裡に終わり、フジテレビ日曜9時枠ではこの路線が続くことになります。
②フジテレビ系日曜9時『バッテンロボ丸』(1982/10/3~1983/9/25 全51話)
後継番組『バッテンロボ丸』は、前作と同じ原作石森・企画前田と平山・プロデューサー植田、植竹に東映の星野行彦、構成の大和屋に浦沢義雄が加わり企画が進みました。
制作は制作所で、監督高橋勝、佐伯孚治、広田茂穂、岡本明久、武田一成、加藤盟、坂本太郎、朝比奈尚行、撮影高岩震、林迪雄、村上俊郎、利根川曻、照明山本辰雄、大須賀国男、関口弥太郎、上原福松、大森康次、録音上出栄二郎、太田克己、美術安井丸男、北郷久典が担当。
今作では宇宙からのロボットで頭の形や表情を変えるという設定などにより特撮監督として矢島信男と特撮研究所が参加します。
ロボットなどの造型はレインボー造型、アクション指導は前作同様大野剣友会の岡田勝が担当、ロボ丸は大野剣友会の高木政人が演じました。
前作に引き続きの榊原るみ、朝比奈尚行に加え、劇団東京ヴォードヴィルショーの佐渡稔(さわたり みのる)と市川勇が出演。バッテンロボ丸の声には戦隊ヒーローの敵役へドリアン女王の曽我町子を起用します。
音楽、主題歌作曲は風戸慎介、編曲いちひさし、オープニングテーマ「バッテンロボ丸」の作詞高田ひろお、歌は曽我町子、ヤング・フレッシュ、こおろぎ'73、エンディングテーマ「ぼくらのカリントニュータウン」は作詞冬杜花代子で山野さと子、ヤング・フレッシュ、こおろぎ'73が歌いました。
1983年3月、バンダイの子会社ポピーはバンダイに吸収されます。『バッテンロボ丸』玩具の発売元がポピーからバンダイに替わりました。
1983年3月13日の「東映まんがまつり」では、劇場版が公開され後にテレビでも第46話「お化けを飼う少女ユメコ」として放映されます。
前作終了時の好調を受け継いだ本作は第18話で最高視聴率18.3%、平均視聴率13.7%と好調に推移し、1年間全51話続きました。
第13話から、助監督だった坂本太郎が監督デビューします。この後坂本は数多くの東映特撮作品を監督しました。
③フジテレビ系日曜9時『ペットントン』(1983/10/2~1984/8/26 全46話)
1982年12月、スティーヴン・スピルバーグ監督の『E.T.』が日本公開され大ヒットします。
東映不思議コメディ―シリーズ第3弾のテーマはロボットではなく、宇宙から来たかわいい不思議ペットになりました。
前2作と同じ原作石森、企画は前田と平山に読売広告社の本名洋一、木村京太郎が加わり、プロデューサーは植田と東映の西村政行が担当。脚本は浦沢義雄が全話書きます。
制作所による制作は、監督坂本太郎、田中秀夫、広田茂穂、佐伯孚治、冨田義治、加藤盟、大井利夫、撮影林迪雄、利根川曻、大村日出男、照明関口弥太郎、上原福松、美術北郷久典、録音上出栄二郎、編集水間正勝が担当。
音楽は前作と同じ風戸慎介、オープニングテーマ「ペットントン」は「ザ・カーナビーツ」の アイ高野、エンディングテーマ「一度だけの魔法」は「おしん」の 小林綾子とヤング・フレッシュが歌い、両曲とも作詞森雪之丞、作曲網倉一也、編曲川上了が手がけます。
「ペットントン」は前作と同じく大野剣友会の高木政人。劇団東京ヴォードヴィルショー佐渡稔、市川勇に黒テント斎藤晴彦、お馴染みのメンバーに黒テントの福原一臣が出演しました。
12.4%で始まった視聴率は、1984年3月の第23回で20.5%の最高視聴率を記録し8月の第46話の18.5%まで続き、平均視聴率16%で終了します。
大ヒットした『ペットントン』。最終回の翌日には月曜ドラマランドにて『ペットントン スペシャル』(14.7%)が放映されました。
④フジテレビ系日曜9時『どきんちょ!ネムリン』(1984/9/2~1985/3/31 全31話)
続いての第4弾『どきんちょ!ネムリン』は、原作石森、企画フジテレビ前田、読売広告社木村、東映平山、脚本浦沢、プロデューサー東映の植田、西村というこれまでのスタッフに、作家狐狸庵先生遠藤周作の愛児遠藤龍之介(フジテレビ)が加わります。
今回の主人公である前文明の妖精の女王「ネムリン」は、中に人の入る着ぐるみではなくパペット人形でした。
制作は、監督田中秀夫、岡本明久、坂本太郎、大井利夫、加藤盟、佐伯孚治、大竹真二、撮影林迪雄、大村日出男、照明大須賀国男、上原福松、関口弥太郎、大森康次、美術北郷久典、安井丸男、録音上出栄二郎、川島一郎、編集水間正勝、樽本恵子、河合利江子が担当。
「ネムリン」人形の操作はスタジオ・ノーバ、声は室井深雪、造型協力はレインボー造型企画でキャストには前作に続き東啓子、福原一臣、奥村公延が出演します。
音楽藤本敦夫、オープニングテーマ「ぴんく、ピンク、PINK!」は作詞冬杜花代子、作曲本間勇輔、エンディングテーマ「睡眠エネルギー」は作詞佐藤ありす、作曲加瀬邦彦で両曲とも編曲松井忠重、山野さと子が歌いました。
第1話16.9%と高視聴率で始まった『どきんちょ!ネムリン』は、そのまま好調を維持し、第24話では最高視聴率18.2%を獲得、平均視聴率15.7%とヒットしますが、スポンサーの都合で第31話で終了します。
第28話、30話の脚本は寺田憲史、第29話は井上敏樹、第31話は総集編で監督の大竹真二が構成しました。
〇フジテレビ木曜19時30分『TVオバケてれもんじゃ』(1985/1/10~3/28 全11話)
『どきんちょ!ネムリン』放映中の1985年1月、東映不思議コメディーシリーズ番外編とも言える『TVオバケてれもんじゃ』がフジテレビ木曜19時30分から始まります。
この番組は原作石森、企画前田、木村、平山、プロデューサーフジテレビ清水賢治に植田、西村、プロデューサー補として北崎広実(東映)が加わり、脚本は浦沢をメインにバラエティの水谷龍二と監督の佐伯孚治、加藤盟が書きました。
制作は、監督加藤盟、田中秀夫、佐伯孚治、撮影林迪雄、池田健策、照明関口弥太郎、大森康次、美術安井丸男、録音川島一郎、編集只野信也が担当。
ただ従来の作品と異なり、とんねるずや高見山、クラッシュギャルズなど多彩なゲストによるバラエティ色が強く、ビデオで撮影されたため、技術島田健治、映像小川信明、色調整石垣強、VTR前岡良徹とビデオ合成班が加わっています。
TVオバケ「てれもん」は大野剣友会高木政人、声は龍田直樹、造型協力はレインボー造型企画で、キャストはパパ佐渡稔、ママ木ノ葉のこ、主人公のトンボ伊藤環に、屋台のラーメン屋市川勇、電気屋店主のザ・グレートデンキ斉藤晴彦とおなじみのメンバーも出演しました。
音楽は本間勇輔、オープニングテーマ「Nice Accident」、エンディングテーマ「チャンネルX」両曲とも作詞森雪之丞、作曲芹澤廣明、編曲川上了、榊原郁恵が歌います。
第1話5.6%で始まった番外編『TVオバケてれもんじゃ』は、平均視聴率5.7%、全11話で終了。後番組として斉藤由貴主演『スケバン刑事』が始まりました。
⑤フジテレビ系日曜9時『勝手に!カミタマン』(1985/4/7~1986/3/30 全51話)
東映不思議コメディーシリーズ第5弾『勝手に!カミタマン』も、原作石森、企画前田、木村、平山、プロデューサー遠藤、植田、西村、プロデューサー補北崎の布陣に、脚本を浦沢、寺田と監督の佐伯孚治、加藤盟が書きます。
制作は、監督田中秀夫、佐伯孚治、大井利夫、坂本太郎、冨田義治、近藤杉雄、撮影大村日出男、大町進、池田健策、黒須健雄、米原良次、利根川曻、林迪雄、村上俊郎、大沢信吾、照明上原福松、大須賀国男、美術北郷久典、木村光之、録音上出栄二郎、西田忠昭、編集水間正勝、中野博が担当。
「カミタマン」人形の操作は前作と同じスタジオ・ノーバ、声は田中真弓、造型協力はレインボー造型企画でキャストにはパパ石井愃一、ママ大橋恵里子、長男の小学生「ザ・ネモトマン」役に岩瀬威司が出演しました。
『TVオバケてれもんじゃ』の音楽を担当した本間勇輔が東映不思議コメディシリーズでも音楽と主題歌の作曲に起用されます。
作詞冬杜花代子、 編曲田中公平のオープニングテーマ「カッテにカミタマン」は田中真弓、エンディングテーマ「スーパーヒーローになりたいな」はザ・スーパーヒーローバンド(本間勇輔)が歌いました。
13.1%で始まった『勝手に!カミタマン』は、第42話で17.8%の最高視聴率を獲得、平均視聴率13.5%、1年間全51話続くヒット番組となります。
本シリーズ放映中の1985年10月、制作所が東撮第二企画製作部第二企画となったことで植田もそこに転属、翌1986年3月にはテレビ企画営業第一部の企画者も兼務しました。
⑥フジテレビ系日曜9時『もりもりぼっくん』(1986/4/6~1986/12/28 全39話)
東撮第二企画制作の第6弾では、不思議生物から再びロボットコメディー『もりもりぼっくん』に戻りました。この作品ではロボットだけでなく友達キャラとして動物キャラクターも登場します。
今作からフジテレビの企画が遠藤に替わり、読売広告社木村、東映平山、プロデューサー東映植田、西村、プロデューサー補北崎広美となりました。
また原作の石森が石ノ森章太郎に改名、脚本の浦沢に鳥山正晴が加わります。
制作は、監督小西通雄、坂本太郎、佐伯孚治、近藤杉雄、冨田義治、岡本明久、撮影村上俊郎、利根川曻、米原良次、大町進、大沢信吾、林迪雄、小野寺修、照明篠崎豊治、大須賀国男、上原福松、磯山忠雄、酒井福夫、関口弥太郎、稲葉好治、美術北郷久典、岡村匡一、録音上出栄二郎、岩田広一、編集中野博、西東清明、水間正勝、竹内利之が担当。
「ぼっくん」は大野剣友会竹神昌央、声は坂本千夏、造型協力はレインボー造型企画で、キャストにはパパ永井寛孝、ママ黒川明子、長男フミヤとして内藤政也が出演しました。
知覧博士役で劇団東京ヴォードヴィルショー市川勇、その妹アイアンおばさん役にワハハ本舗の柴田理恵が登場します。
音楽藤本敦夫、オープニングテーマ「ぼっくん!キミがいなきゃ」、エンディングテーマ「ジュリエットにさせて」(作詞冬杜花代子、作曲加藤和彦、 編曲矢野立美)は伊藤かずえが歌いました。
16%で始まった『もりもりぼっくん』は、第36話で17.7%の最高視聴率を獲得、平均視聴率13.3%、全39話続きます。
『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』(1985/11/7~1986/10/23 全42話)の企画も担当していた植田は今シリーズをもって東映不思議コメディーシリーズから離れました。
次シリーズからは監督の小林義明がプロデューサーに転向し、シリーズのテーマもロボットや不思議生物から少年探偵団に替わります。
トップ写真:『ペットントン』©石森プロ・東映