152.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」
第27節「テレビ朝日金曜19時30分 メタルヒーローシリーズ ①三大宇宙刑事」
日本教育テレビ(現・テレビ朝日)金曜19時30分枠では、開局以来、東映のドラマが数多く放映され、中でも1974年10月から始まった石森章太郎原作『がんばれ!!ロボコン』(1974年10月4日 - 1977年3月25日 全118話)は大ヒットしました。
以降、『ロボット110番』(1977年4月8日 - 12月30日 全37回)、『がんばれ! レッドビッキーズ』(1978年1月6日 - 12月29日 全48回)、『燃えろアタック』(1979年1月5日 - 1980年7月11日 全71回)、『それゆけ!レッドビッキーズ』(1980年8月29日 - 1982年3月28日 全77回)と石森章太郎原作の子供向け実写ドラマが続きます。
また、同局金曜19時枠でも、1976年4月の『マシンハヤブサ』(1976/4/2~9/17 全21話)から東映動画(現・東映アニメーション)作品が始まり、続く『キャンディキャンディ』(1976/10/1~1979/2/2 全115話)が大ヒット、2年4か月に渡り放映されました。
『キャンディキャンディ』終了後の1979年2月からは「東映魔女っ子シリーズ」第8作『花の子ルンルン』(1979/2/9~1980/2/8 全50話)、第9作『魔法少女ララベル』(1980/2/15~1981/2/27 全49話)と少女向けアニメ作品が続きます。
『魔法少女ララベル』で「東映魔女っ子シリーズ」は終了。続いて『キャンディキャンディ』路線の『ハロー!サンディベル』(1981年3月6日 - 1982年2月26日 全47話)に戻りました。
『ハロー!サンディベル』は1981年10月の第28話から放映時間帯が金曜19時30分枠に移動。この枠で放映中の『それゆけ!レッドビッキーズ』は日曜19時枠に移り、金曜19時枠ではシンエイ動画制作『ドラえもん』が始まります。
そして『ハロー!サンディベル』終了後の1982年3月、テレビ朝日金曜19時30分枠にて「仮面ライダーシリーズ」「スーパー戦隊シリーズ」に次ぐ第3の東映実写特撮作品「メタルヒーローシリーズ」がスタートしました。
①テレビ朝日金曜19時30分『宇宙刑事ギャバン』(1982年3月5日 - 1983年2月25日 全44話)
1981年9月、毎日放送との「仮面ライダーシリーズ」が第7作『仮面ライダースーパー1』(1980/10/7~1981/9/26 全48話)の終了で一旦休止し、東映スーパーヒーローは「スーパー戦隊シリーズ」のみとなります。
この間に東映テレビ部は、フジテレビ、読売広告社と組み『ロボット8ちゃん』(1981/10/4~1982/9/26 全52話)を開始、「東映不思議コメディーシリーズ」を立ち上げました。
そして一方、1981年に『太陽戦隊サンバルカン』(1981年2月7日 - 1982年1月30日 全50話)で「スーパー戦隊シリーズ」の基礎を確立した企画営業第二部次長の吉川進は、企画を担当していた戦隊の次作から離れ、仮面ライダーに替わる新たなヒーローによる新企画を目指します。
吉川は、石森章太郎原作とは別に、玩具会社ポピー(現・㈱バンダイ)の村上克司がデザインしたメタリックなコンバットスーツの東映オリジナル単体ヒーロー『宇宙刑事ギャバン』の企画に乗り出しました。
仏俳優のジャン・ギャバンにちなんで命名された『宇宙刑事ギャバン』の製作はテレビ朝日、東映、旭通信社。プロデューサーは吉川の他、テレビ朝日の碓氷夕焼(うすいゆうやけ)、『バトルフィーバーJ』で監督からプロデューサーに転進した折田至も第11話以降参加します。
吉川は、脚本を上原正三メインに高久進、松下幹夫、阿部和江、永井達郎、筒井ともみ、林強生に依頼、パイロット監督小林義明の他に奥中惇夫、田中秀夫、小笠原猛、服部和史を起用しました。
「スーパー戦隊シリーズ」を手掛ける 東映テレビ・プロダクション(テレビプロ)が制作にあたり、撮影瀬尾脩、いのくままさお、松村文雄、西山誠、照明嶋田宜代士、吉岡伝吉、国本正義、録音太田克己、編集菅野順吉、美術宮国登、装置東映美術センター、装飾大晃商会、美粧入江美粧、衣裳東京衣裳、悪役等キャラクターデザインは増尾隆之、赤坂徹郎、イラスト野口竜、キャラクター制作レインボー造型企画、アクション監督に金田治、横山稔(ジャパン・アクション・クラブ)、特撮監督矢島信男と特撮研究所、ビデオ合成東通ecgシステム、企画協力企画者104、音楽渡辺宙明と、吉川がこれまで組んできたおなじみのメンバーが担当します。
オープニングテーマ「宇宙刑事ギャバン」エンディングテーマ「星空のメッセージ」は作詞山川啓介、作曲渡辺宙明 、編曲馬飼野康二で串田アキラが力強く歌いました。
吉川は、ギャバンに変身する主役一乗寺烈役に、『バトルフィーバーJ』で曙四郎/バトルケニア、『電子戦隊デンジマン』では青梅大五郎/デンジブルー役を演じたジャパン・アクション・クラブ(JAC)所属の大葉健二を起用します。
ヒロインミミー役には叶和貴子が出演しました。
「変身」ポーズの間に敵になぜ襲われないのかという子供たちの素朴な疑問に対応するように、「蒸着!」という掛け声とともに0.05秒という一瞬のうちに電送されたコンバットスーツを装着、ギャバンに変身する革新的な設定とナレーションとスローモーションでの連続写真による変身後の解説で人気を集めます。
また、宇宙犯罪組織マク―が生み出した「魔空空間」というブラックホールのような特殊空間でギャバンが獣星人ダブルマンやベム怪獣、合体したダブルモンスターたちと戦ったことで子供たちは現実世界とは違うイメージの世界に心を踊らされました。
二桁超えの視聴率を目指しこれまでにない予算をかけて背水の陣で臨んだ『宇宙刑事ギャバン』は、第1話13.4%と、宇宙スケールのロボットのような近未来ヒーローは評判を呼びます。
その後徐々に視聴率を上げ、9月の第24話で最高視聴率18.6%を獲得、1年間44話続き平均視聴率14.9%と前作を越えるヒット作となりました。
宇宙刑事の設定は次作でも引き継がれ、メタリックなオリジナルヒーローは「東映メタルヒーロー」としてシリーズ化します。
②テレビ朝日金曜19時30分『宇宙刑事シャリバン』(1983年3月4日 - 1984年2月24日 全51話)
1983年3月から第2作『宇宙刑事シャリバン』が始まりました。
前作の好評を受け早くから宇宙刑事の継続が決定したことから、プロデューサー碓氷、吉川、折田、脚本メイン上原、高久に久保田圭司、湯山晃行、監督メイン小林、田中、小笠原に辻理、小西通雄、撮影瀬尾、松村、西山、照明吉岡に高橋弘、録音太田、編集伊吹勝雄、菅野、美術井上明、キャラクターデザイン野口、渡部昌彦、イラスト赤坂、装置東映美術センター、装飾大晃商会、キャラクター制作レインボー造型企画、アクション監督金田、特撮監督矢島と特撮研究所、ビデオ合成東通ecgシステム、企画協力企画者104、音楽渡辺と、今作は美粧サン・メイク、衣裳鷹志衣裳に替わった他はほぼ前作と同じスタッフが担当します。
主題歌もオープニングテーマ「宇宙刑事シャリバン」、エンディングテーマ「強さは愛だ」ともに作詞山川啓介、作曲・編曲渡辺宙明 で串田アキラが今作でも力強く歌いました。
シャリバンに変身する主役の伊賀電役にJACの渡洋史、ヒロインリリィ役は降矢由美子を起用します。
伊賀電は前作の第42話に初登場、最終第44話でシャリバンとして再登場しました。
今作でも大葉が銀河パトロール隊太陽系地区隊長一乗寺烈役として、叶もミミー役で準レギュラー出演します。
シャリバンは「赤射」蒸着でギャバンの50倍早い0.001秒で電送されたコンバットスーツに変身しました。
今作では宇宙犯罪組織マドーは幻夢界という一種のホワイトホールを作り出し、シャリバンはその空間でマドーの魔怪獣たちと戦います。
また、シャリバンの活動拠点となる超次元戦闘母艦グランドバースは人型巨大ロボット形態バトルバース・フォーメーションに変形、巨大ロボットも登場しました。
第1話18.2%と前作最終話の18.6%とほぼ同じ高視聴率でスタートした『宇宙刑事シャリバン』は、第2話で最高視聴率18.6%を記録、好調を維持し1年間51話続き、平均視聴率14.9%、主題歌レコードが40万枚売り上げるなど大ヒットしました。
③テレビ朝日金曜19時30分『宇宙刑事シャイダー』(1984年3月2日 - 1985年3月8日 全49話)
前2作のヒットに続く1984年3月、「宇宙刑事シリーズ」第3作、ハリウッドスターロイ・シャイダーから名づけられた『宇宙刑事シャイダー』がスタートします。
プロデューサーは前作と変わらず、脚本は上原が全話一人で書き上げました。メイン監督は特撮初の澤井信一郎が担当、他に田中、小西、辻、小林、小笠原に山田稔が監督します。
スタッフは撮影瀬尾、松村に加藤弘章、小泉貴一、照明吉岡、美術井上、宮国、録音太田、編集菅野、キャラクターデザイン野口、渡部に神田正宏、イラスト赤坂、装置東映美術センター、装飾大晃商会、美粧サン・メイク、衣裳鷹志衣裳、キャラクター制作レインボー造型企画、アクション監督金田、特撮監督矢島と特撮研究所、ビデオ合成東通ecgシステム、企画協力企画者104、音楽渡辺、オープニングテーマ「宇宙刑事シャイダー」、エンディングテーマ「ハロー!シャイダー」も作詞山川啓介 、 作曲・編曲渡辺宙明、 歌串田アキラ 、と今作もほぼ前作と同じスタッフが担当します。
第24話からプロデューサー補で日笠淳、第44話からアクション監督代行・補佐としてJACの竹田道弘、後に東映特撮で活躍するスタッフが参加しました。
シャイダーに変身する主役の沢村大役に「日本特撮の神様」円谷英二の孫円谷浩、ヒロインの宇宙刑事アニー役でJACのアクション俳優森永奈緒美を起用します。
今作では第1話に叶がミミー役で、最終話スペシャルにギャバンの大葉とシャリバンの渡が出演しました。
シャイダーは「焼結」というコードを発することで超次元戦闘母艦バビロス号よりプラズマ・ブルーエネルギーが放射され、身体にコンバットスーツが焼結します。
その速さはシャリバンと同じくギャバンの50倍早い0.001秒で変身しました。
大帝王クビライ率いる宇宙犯罪組織不思議界フーマは、不思議時空という異次元空間に漂う不思議宮殿を本拠に全銀河の征服を狙います。
シャイダーは、大帝王クビライの口から吐き出される卵が孵化し誕生する不思議獣たちと不思議時空で戦いました。
シャイダーとアニーが活動の拠点とする超次元戦闘母艦バビロス号は、母艦形態から巨大ロボ形態バトル・フォーメーションと巨大銃形態シューティング・フォーメーションへと変形しました。
「東映まんがまつり」でも、1984年7月14日公開で劇場版『宇宙刑事シャイダー』(脚本上原正三・ 監督田中秀夫)、1984年12月22日公開で劇場版『宇宙刑事シャイダー 追跡!しぎしぎ誘拐団』(脚本上原正三・ 監督田中秀夫)と2作公開されます。
第1話15.5%と前作最終話の14.8%を上回る高視聴率でスタートした『宇宙刑事シャイダー』は、好調を維持し1年間49話続き、第48話、最終話で最高視聴率16.4%を記録します。
平均視聴率は12.5%、最終話はスペシャルとして三大宇宙刑事が集合しました。
三大宇宙刑事が人気を博した「東映メタルヒーローシリーズ」はこの後、1999年1月まで続きます。
次回も引き続きこのシリーズの作品を紹介いたします。