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159.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」

第29節「京都撮影所テレビ時代劇③」

(2)1970年代に始まった東映テレビ時代劇人気シリーズ

⑫「高橋英樹主演時代劇シリーズ」

 日活アクション映画スター高橋英樹(1969年日活退社)は、1966年のNHK大河ドラマ竜馬がゆく』に武市半平太役で出演して以来、NHK鞍馬天狗』(1969/10/17~1970/10/2)やフジテレビ東宝制作時代劇『旗本退屈男』(1970/10/6~1971/3/30 全26話)や『おらんだ左近事件帖』(1971/10/12~1972/3/28 全25話)などの時代劇で活躍していました。
 1972年10月高橋英樹が初めて東映京都撮影所京撮)で主演するテレビ時代劇『隼人が来る』が始まります。

〇フジテレビ系木曜20時『隼人が来る』(1972/10/5~1973/3/29 全25話)

 浪人姿で相棒(左とん平)と旅をする旗本、秋月隼人を演じた髙橋は、各地の悪人を退治する痛快明朗時代劇で豪快な殺陣を披露しました。

『隼人が来る』
©東映

 企画はフジテレビ白川文造高橋英樹のマネージャー垣内健二東映渡辺洋一、京都撮影所のプロデューサー佐藤雅夫杉本直幸今川行雄が制作にあたります。脚本は結束信二宮川一郎飛鳥ひろし他、監督は田中徳三工藤栄一松尾正武他が担当しました。

 続いて高橋英樹は、1973年4月11日NET系水曜21時放映の京都撮影所制作「長谷川伸シリーズ」第28話『瞼の母』(山下耕作監督)の後、10月からフジテレビ系で放映の山本周五郎原作『ぶらり信兵衛 道場破り』に主演します。

〇フジテレビ系木曜21時『ぶらり信兵衛 道場破り』(1973/10/4~1974/9/26 全50話)

 京都テレビプロ制作のこのシリーズは、前作と異なり殺陣シーンの少ない人情ドラマで、高橋英樹の明るいキャラクターが人気を呼びました。

『ぶらり信兵衛 道場破り』
©東映

 企画は『隼人が来る』と同じく白川フジテレビ)、垣内高橋M)、渡辺東映)で、プロデューサーは渡辺大年フジテレビ)と田村嘉京都テレビプロ)、脚本は倉本聰土井行夫飛鳥ひろし他、監督は斎藤武市松尾正武井沢雅彦、音楽は渡辺岳夫が担当しました。
 主演の高橋英樹の他、浜木綿子武原英子大宮敏充(第1話 - 第21話)、藤原釜足(第27話 - 最終話)、渡辺篤史小島三児などがレギュラー出演します。

『ぶらり信兵衛 道場破り』
©東映

 『ぶらり信兵衛 道場破り』は、2クールの予定が人気を集め1年間全50話続きました。

〇フジテレビ系木曜21時『編笠十兵衛』(1974/10/3~1975/4/3 全26話)

 髙橋主演のフジテレビ次シリーズは、人情時代劇から一転して池波正太郎原作のハードボイルド時代劇編笠十兵衛』となります。

『編笠十兵衛』
©東映

 脚本は土橋成男飛鳥ひろし、監督は田中徳三松尾正武井沢雅彦斎藤武市他、音楽は渡辺岳夫が担当しました。
 赤穂浪士の討ち入りを助ける旗本月森十兵衛役の高橋英樹露口茂成田三樹夫藤浩子、大石内蔵助役中村竹弥、吉良上野介役伊藤雄之助などが出演します。

『編笠十兵衛』高橋英樹と藤浩子
©東映

 『編笠十兵衛』は、2クール26話で終了。フジテレビ白川の人事異動もあり高橋日本テレビに舞台を移しました。
 フジテレビのこの枠は東映から東宝制作加山雄三主演集団時代劇「江戸の旋風シリーズ」(1975/4/10~1980/8/28 5シリーズ全209話)に移ります。

〇日本テレビ系日曜21時『十手無用 -九丁堀事件帖-』(1975/10/5~1976/3/28 全26話)

 フジテレビから離れた高橋英樹は、日本テレビ日曜21時十手無用 -九丁堀事件帖-』に主演しました。

『十手無用 -九丁堀事件帖-』
©東映

 企画は梅谷茂日本テレビ)、垣内健二(高橋英樹マネージャー)、渡辺洋一(東映)、プロデューサーは小林進(日本テレビ)、田村嘉(京都テレビプロ)で京都テレビプロが制作します。
 脚本は土橋成男飛鳥ひろし他、監督は松尾正武斎藤武市田中徳三井沢雅彦他、音楽は渡辺岳夫と前作フジテレビ編笠十兵衛』とほぼ同じスタッフが担当しました。
 元同心榊夢之介役の高橋英樹の他レギュラー陣は桜木健一栗田ひろみ児島美ゆき丘さとみに特別出演で片岡千恵蔵も参加します。

『十手無用 -九丁堀事件帖-』
©東映

 『十手無用 -九丁堀事件帖-』は2クール26話続きました。
 この枠での次番組、ユニオン映画スタジオシップ制作萬屋錦之介主演『子連れ狼(第3部)』(1976/4/4~9/26 全26話)の終了後、高橋英樹主演の新シリーズが始まります。

〇日本テレビ系日曜21時『桃太郎侍』(1976/10/3~1981/9/27 全258話)

 1976年10月高橋英樹主演山手樹一郎原作『桃太郎侍』がスタートしました。

『桃太郎侍』
©東映

 企画は梅谷茂加藤教夫NTV)、垣内健二高橋M 51話まで)、渡辺洋一東映)、プロデューサーは加藤教夫加賀義二長富忠裕NTV)、小沢啓一郎橋本慶一上阪久和東映)、田村嘉京都テレビプロ)、脚本は野波静雄土井行夫結束信二和久田正明山本英明飛鳥ひろし他、監督は松尾正武田中徳三山下耕作他、音楽は木下忠治三波春夫が歌う主題歌「桃太郎侍の歌」(作詞:三波春夫、作曲:平尾昌晃、編曲:小谷充)は人気を集めます。
 出演者は、桃太郎役高橋英樹の他、野川由美子深江章喜植木等茶川一郎玉川スミ西川峰子藤岡琢也青木義朗山城新伍谷村昌彦などが出演しました。

『桃太郎侍』
©東映

 般若の面を被った桃太郎が登場、「桃から生まれた桃太郎」と名乗り、悪者に向かって「一つ、人の世 生き血を啜り」「二つ、不埒な悪行三昧」「三つ、醜い浮世の鬼を 退治てくれよう 桃太郎」と告げる口上とその後の豪快な立回りが人気を呼びます。

撮影で使用した般若の面の一つ

 『桃太郎侍』は1976年から延べ5年間全258話に及ぶ人気シリーズとして時代劇俳優高橋英樹の代表作となりました。

 終了後、日本テレビ系日曜21時の枠は国際放映制作小林旭主演『幻之介世直し帖』(1981/10/4~1982/3/21 全24話)が放映されます。
 半年後、この枠にてユニオン映画制作太秦映像制作協力の里見浩太朗主演『松平右近事件帳』(1982/3/28~1983/3/20 全51話)が始まり『新・松平右近』(1983/3/27~9/4 全22話)と続きました。

〇テレビ朝日系木曜20時「遠山の金さんシリーズ」(1982/4/8~1986/9/16 全198話)

 『桃太郎侍』終了から半年たった1982年4月高橋英樹テレビ朝日木曜20時遠山の金さん』(1982/4/8~1985/9/19 全156話)、火曜21時遠山の金さんⅡ』(1985/10/15~1986/9/16 全42話)で「5代目金さん」として活躍を始めます。 

 『遠山の金さんⅡ』が終わると高橋は、火曜21時枠にて京都テレビプロ制作現代劇『京都かるがも病院』(1986/10/7~1987/2/24 全20話)で医者を演じました。

〇テレビ朝日系木曜20時「三匹が斬る!シリーズ」(1987/10/22~1995/8/31 全137話)

 2クール20話で終了後の1987年10月、「遠山の金さんシリーズ」など長年時代劇を放映してきたテレビ朝日系木曜20時枠で始まった『三匹が斬る!』(1987/10/22~1988/3/31 全21話)に主演します。

『三匹が斬る!』
©東映

 制作は関口恭司テレビ朝日)、プロデューサー杉崎保テレビ朝日)、深沢道尚松平乗道亀岡正人東映)、脚本野上龍雄小川英胡桃哲塙五郎他、監督吉川一義宮越澄松尾正武田中徳三荒井岱志関本郁夫他、音楽は小林亜星が担当し、京都テレビプロが制作します。
 「殿様」矢坂平四郎役の高橋英樹に「千石」久慈慎之介役役所広司、「たこ」燕陣内(つばくろ じんない)役春風亭小朝の主役三人に杉田かおるがレギュラー出演しました。

『三匹が斬る!』
©東映

 初回11.9%の視聴率でしたが第17話で15.5%まで上昇し、平均視聴率12.6%2クール21話で好評裡に終了します。

 『三匹が斬る!』は、1995年8月31日第7シリーズ全137話まで続く人気シリーズとなりました。

 第1シリーズ 三匹が斬る!』(1987/10/22~1988/3/31 全21話
 第2シリーズ 続・三匹が斬る!』(1988/12/1~1989/5/11 全18話
 第3シリーズ続続・三匹が斬る!』(1990/1/4~1990/6/28 全19話
 第4シリーズまた又・三匹が斬る!』(1991/4/11~1991/10/24 全21話
 第5シリーズ新・三匹が斬る!』(1992/7/9~1993/2/25 全22話
 第6シリーズニュー・三匹が斬る!』(1993/12/23~1994/6/2 全17話
 第7シリーズ痛快・三匹が斬る!』(1995/4/6~1995/8/31 全19話

 髙橋英樹はその後もスペシャル大作など数多くの時代劇に主演、現代劇でも「西村京太郎トラベルミステリーシリーズ」の十津川警部役など2時間ドラマの主役として大活躍します。
 また、各局のバラエティ番組に出演し、その明朗なキャラクターがお茶の間の人気を呼びました。

 髙橋英樹は、東映京都撮影所にて1972年の『隼人が来る』(1972/10/5~1973/3/29 全25話)から始まり、『ぶらり信兵衛 道場破り』(1973/10/4~1974/9/26 全50話)、『編笠十兵衛』(1974/10/3~1975/4/3 全26話)、『十手無用 -九丁堀事件帖-』(1975/10/5~1976/3/28 全26話)、『桃太郎侍』(1976/10/3~1981/9/27 全258話)、「遠山の金さんシリーズ」(1982/4/8~1986/9/16 全198話)、「三匹が斬る!シリーズ」(1987/10/22~1995/8/31 全137話)とおよそ23年間7人の主役キャラクターを演じ全720話レギュラー時代劇主演した、まさにおなじみ東映テレビ時代劇代表するスターでした。 

トップ写真:『桃太郎侍』©東映