153.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」
第27節「メタルヒーローシリーズ②」
1982年3月、碓氷夕焼(テレビ朝日)、吉川進、折田至(東映)、三人のプロデューサーとメイン脚本上原正三で始めた『 宇宙刑事ギャバン』は大ヒット、プロデューサーが交代しながらも1999年1月『テツワン探偵ロボタック』の終了まで、全17作続く「メタルヒーローシリーズ」と呼ばれる東映オリジナル原作の長期シリーズとなりました。
今節は「三大宇宙刑事シリーズ」以降の「メタルヒーローシリーズ」の歴史をまとめて紹介いたします。
④テレビ朝日系金曜19時30分『巨獣特捜ジャスピオン』(1985年3月15日 - 1986年3月24日 全46話)
1985年3月、テレビ朝日系金曜19時30分放映の『宇宙刑事シャイダー』終了後、続いて「メタルヒーローシリーズ」第4作『巨獣特捜ジャスピオン』が始まりました。
プロデューサー陣、メイン脚本、主な制作スタッフに、音響効果大泉音映、装置東映美術センター、美粧サン・メイク、衣裳鷹志衣裳、装飾大晃商会、キャラクター制作レインボー造型企画、合成チャンネル16、ビデオ合成東通ecgシステム、企画協力企画者104、特撮研究所などの協力会社は替わらず、前作の途中からプロデューサー補として参加した日笠淳が引き続き担当します。
監督はメイン小林義明の他小笠原猛、小西通雄、辻理、東條昭平。おなじみ渡辺宙明の音楽で、オープニングテーマ「おれが正義だ!ジャスピオン」、エンディングテーマ「銀河狼(スペースウルフ)ジャスピオン」、両曲とも作詞山川啓介、作曲渡辺宙明 、編曲藤田大土、元「ザ・カーナビーツ」のアイ高野が歌いました。
『巨獣特捜ジャスピオン』は「宇宙刑事シリーズ」からの等身大ヒーローの基本フォーマットを受け継ぎつつも、ヒーローらしくないコミカルなキャラクター、変身時に掛け声を叫ばない、敵には巨大怪獣を配置するなど「三大宇宙刑事」との差別化も図ります。
主人公「ジャスピオン」役にはジャパン・アクション・クラブ(JAC)所属で、1983年8月6日東映系公開『伊賀野カバ丸』(鈴木則文監督)、1984年8月4日東映系公開『コータローまかりとおる!』(鈴木則文監督)に主演し高い人気を得たアクション俳優、黒崎輝を起用しました。
また、宇宙仙人エジン役でベテランの仲谷昇の他、ジャスピオンの仲間南原健一郎役に佐々木功、ブーメラン役に『宇宙刑事シャリバン』主演の渡洋史(わたりひろし)が出演します。
敵サタンゴーズの息子マッドギャラン役には『大戦隊ゴーグルファイブ』『科学戦隊ダイナマン』出演のJAC春田純一、女性幹部ギルザ役高畑淳子、ギルマーザ役賀川雪絵など特撮でおなじみのメンバーが出演しました。
『巨獣特捜ジャスピオン』は、初回12.4%で始まり、11月の第29話で最高視聴率15.3%を記録。1月から放映時間が月曜19時に変わります。
3月いっぱいまで続き全46話で終了。平均視聴率は枠移動前12.1%、移動後10.7%、通期では11.8%でした。
⑤テレビ朝日系月曜19時『時空戦士スピルバン』(1986年4月7日 - 1987年3月9日 全44話)
1986年4月から第5作『時空戦士スピルバン』が放映されます。
今作もプロデューサー陣は同じで、メイン脚本上原に小林、後に東映特撮で活躍する会川昇、滝沢一穂、市川靖、杉村升が参加しました。
監督はメイン辻理の他、小笠原、小西、小林に冨田義治、伊藤寿浩が加わり、雨宮慶太がキャラクターデザインのメインとなります。
また、協力会社の音響効果がフィズサウンドに、衣裳の鷹志衣裳が途中で東京衣裳に替わりました。
音楽はこれまでと同じ渡辺宙明でオープニングテーマ「時空戦士スピルバン」、エンディングテーマ「君の仲間だスピルバン」(第1 - 10話)は、作詞山川、作曲・編曲渡辺で水木一郎が歌います。第11話からは上原正三作詞で水木が歌う挿入歌「結晶だ!スピルバン」がエンディングテーマになりました。
「結晶」の掛け声でスピルバンに変身する主役城洋介役には「宇宙刑事シャリバン」を演じた渡洋史が再び起用されます。
JAC澄川真琴が演じるヒロインのダイアナは、シリーズで初めての女性ヒーローダイアナレディに変身しました。
ダイアナの姉でヘルバイラ とヘレンレディに変身するヘレン役として同じくJACの森永奈緒美が登場します。
他にも、敵ワーラー帝国の女王パンドラにおなじみの曽我町子、ギローチン皇帝にミッキー・カーチス、女性戦士リッキー役で「ボディビル界の百恵ちゃん」西脇美智子もレギュラー出演しました。
この作品放映中の6月、吉川はテレビ企画営業第二部長に就任します。
初回10.4%で始まった『時空戦士スピルバン』は、7月の第13話で最高視聴率16.6%を記録。1年間全44話続き、平均視聴率は前作とほぼ同じ11.2%でした。
⑥テレビ朝日系金曜19時『超人機メタルダー』(1987年3月16日 - 1988年1月17日 全39話)
1987年3月、第6作『超人機メタルダー』がスタートします。
この作品ではテレビ朝日プロデューサーが碓氷夕焼(1 - 4話)、小関明(1 - 25話)、宇都宮恭三(26話 -)と変わり、東映は吉川と折田、日笠がプロデューサーになりました。
脚本は高久進、監督は小笠原がメインとなり、協力会社では音響効果が大泉音映に戻ります。
音楽は渡辺から横山菁児に替わりました。作詞ジェームス三木、作曲三木たかし、編曲田中公平 で作ったオープニングテーマ「君の青春は輝いているか」は佐々木功、エンディングテーマ「タイムリミット」を水木一郎とこおろぎ'73が歌います。
チーフプロデューサーの吉川はかつて『人造人間キカイダー』(1972年7月8日 - 1973年5月5日 全43話)を担当していました。
キカイダーは、内蔵された「自省回路」や赤と青の非対称デザインなどメタルダーのキャラクター設定に大きな影響を与えています。
『超人機メタルダー』は、妹尾洸演じる「メタルヒーローシリーズ」初のアンドロイド剣流星が主役で、「怒る!」の掛け声とともにメタルダーへと「瞬転」します。
1987年7月18日公開の「東映まんがまつり」では劇場版『超人機メタルダー』(高久進脚本・冨田義治監督)が上映されました。
10月、第25話から放映時間が日曜9時30分に移ります。
初回9.5%で始まった『超人機メタルダー』は、11月の第31話で最高視聴率11.7%、10か月全39話、平均視聴率は枠移動前7.4%、移動後9.5%、通期で8.2%でした。
⑦テレビ朝日系日曜9時30分『世界忍者戦ジライヤ』(1988年1月24日 - 1989年1月22日 全50話)
1988年1月、「メタルヒーローシリーズ」第7作として、これまでの近未来SFと趣の違う忍者がテーマの『世界忍者戦ジライヤ』が登場します。
宇都宮、吉川、折田のプロデューサー陣から日笠が離れ「東映不思議コメディーシリーズ」に移りました。
脚本はメイン中原朗で始まりましたが高久進に替わり、辻理がメイン監督に起用されます。
この作品は忍者がテーマのため、武芸考証を戸隠流忍術34代目継承者で忍術道場武神館(ぶじんかん)創設者である初見良昭(はつみ まさあき)先生にお願いします。
初見先生は、東映動画制作『少年忍者風のフジ丸』(1964年6月7日 - 1965年8月31日 全65話)の「忍術千一夜」コーナーで「忍者おじさん」として解説に登場して以来、『直撃!地獄拳』(1974年8月10日公開 石井輝男監督)で忍法指導を行うなど東映作品に協力していました。
主役の磁雷矢に変身する山地闘破役に筒井巧が起用され、その養父戸隠流第三十四代宗家山地哲山役で初見先生もレギュラー出演します。筒井は後に師匠である初見先生の後を継いで二代目武神館館長に就任しました。
また、おなじみの曽我町子が妖忍表のクモ御前として登場します。
音楽は若草恵(わかくさけい)が初めて東映特撮を担当。オープニングテーマ「ジライヤ」、エンディングテーマ「SHI・NO・BI '88」両極とも作詞山川啓介、作曲鈴木キサブロー、編曲戸塚修で串田晃が歌いました。
初回10.9%で始まった『世界忍者戦ジライヤ』は、12月の第45話で最高視聴率12.8%となり、1年間全50話、平均視聴率は9.6%と前作を上回る成績を残します。
⑧テレビ朝日系日曜9時30分『機動刑事ジバン』(1989年1月29日 - 1990年1月28日 全52話)
1989年の第8作は『機動刑事ジバン』。ロボット刑事でした。
プロデューサーは宇都宮、吉川、折田で始まりましたが第38話で吉川が離れ、第39話から『仮面ライダーBLACK RX』が終了した堀長文がスライドします。「戦隊シリーズ」を監督していた堀は、吉川の下で『仮面ライダーBLACK』及び続編の『RX』のプロデューサーに転進していました。
今作では杉村升(のぼる)が初のメインライター、小西通雄も初めてパイロット監督となります。
協力会社では装置の東映美術センターに紀和美建が加わりました。
また、今作から雨宮慶太がSFXアドバイザー&キャラクターデザインとしてクレジットされます。
音楽は渡辺宙明が急遽担当し、オープニングテーマ「機動刑事ジバン」、エンディングテーマ「未来(あした)予報はいつも晴れ」。両曲とも作詞山川啓介、作曲鈴木キサブロー、編曲和泉一弥で串田晃が歌いました。
「ジバン」に変身する田村直人役には日下翔平、人気子役の間下このみもレギュラー出演します。
4月、テレビ朝日の日曜朝の番組改編にともない、第10話から放映時間が日曜8時に移りました。
1989年7月15日公開「東映まんがまつり」にて劇場版『機動刑事ジバン』(杉村升脚本・小西通雄監督)が上映されました。
初回10.0%で始まった『機動刑事ジバン』は、12月の第46話で最高視聴率12.6%を記録します。
1年間全52話続き、平均視聴率は枠移動前9.7%、移動後8.9%、通期で9.1%でした。
『機動刑事ジバン』終了後、「メタルヒーローシリーズ」は堀長文がチーフプロデューサーに就任し複数ヒーローとなります。