75. 第4章「行け行け東映・積極経営推進」
第11節「テレビ映画の飛躍 東撮後編」
⑦ 子供向け教育物からファミリー物へ
1958年、翌年のNET開局に向けて、旧・東映テレビ・プロダクションが設立され、東京撮影所(東撮)では『捜査本部』、NET開局記念『日本歴史シリーズ 源義経』に続いて、子供向け教育物テレビ映画、NET系『コロちゃんの冒険』(1959/04/01~1959/06/17)が制作されました。
主人公の三平少年とコロと名づけられた子熊との心温まる友情物語で、三平の父・平作役で加藤嘉が出演しています。
NETは教育放送枠での放送認可であったため、開局にあたり、歴史シリーズと共に東映教育映画のノウハウを生かした子供向け教育物が作られました。
続いて、NETで放送枠は異なりますが同じく子供向けに『わんぱく四銃士』(1959/06/23~1959/09/22)が制作されます。東京近郊のある農村の中学校の4人の仲良しグループのわんぱくな活躍を描いたコメディータッチの作品で、トニー谷や岸井明、内海突破などのコメディアンも出演していました。
新生東映テレビ・プロになってからは、1962年、野良犬ロックと少年少女が様々な事件を解決していく子供向けファミリー物、NET系『ロック物語』(1962/06/07~1963/07/08)が第4部まで続き、1年を越えるシリーズとなります。第1部と第2部は千葉の漁村が舞台で十朱久雄や宮園純子などが出演、第3部と第4部は曜日と時間帯が変わり、町を舞台に登場人物も新たになって伊豆肇や高島新太郎などが出演しました。
子供向けファミリー物は、その後のマンガ原作の特撮SFファミリー物『丸出だめ夫』『忍者ハットリくん』、そして『がんばれ‼ロボコン』などにつながって行きます。
⑦ スポーツアクション物・スポーツ青春学園物の系譜
1954年、東映は、東撮(東京撮影所)娯楽版映画第2作目としてスポーツアクション物、小林恒夫監督波島進主演の柔道映画『少年姿三四郎』(二部作)を製作します。そして、翌1955年に波島進主演石原均監督『飛燕空手打ち』(三部作)、伊賀山正徳監督『力闘空手打ち』(三部作)、1956年には高倉健主演デビュー作津田不二夫監督『電光空手打ち』『流星空手打ち』と空手映画を続けて公開しました。(㉕第3章「躍進、躍進、大東映 われらが東映」第5節「大衆娯楽主義 東映娯楽版東京撮影所編」参照)
東撮娯楽版映画はこの後、柔道や空手を主題にしたスポーツアクション物から大人向けセミドキュメンタリー刑事物『警視庁物語』シリーズや子供向け探偵活劇物『少年探偵団』シリーズなどに代わっていきます。
旧東映テレビ・プロが設立されると、テレビ映画は娯楽版を引き継ぎ、東撮現代劇では大人向けセミドキュメンタリー刑事物『捜査本部』や子供向け特撮ヒーロー物『七色仮面』などが作られます。
1964年2月、東映京都テレビ・プロダクションが誕生、時代劇テレビ映画が京都で本格的に制作されるようになると、これまで東撮で作られていたNET系『猿飛佐助』『紅孔雀』のような子供向け時代劇ヒーロー物に代わって、スポーツアクション物、後に『柔道一直線』にて車周作として活躍する高松英郎主演の大人向け柔道物、NET系『風来物語』(1964/11/28~1965/05/22)が制作されました。
1965年には、大人に向けてダイナミックな必殺技や様々な武術が登場する中山昭二主演NET系『空手三四郎』(1965/09/03~1966/02/25)と、マンガ家寺田ヒロオ原作の子供向け特撮柔道物、NET系『くらやみ五段』(1965/09/07~1966/03/01)が放送されます。後者は、映画『柔道一代』で主役の柔道家を演じた千葉真一が主演、千葉のアクションと柔道シーンでの特撮合成が人気を呼びました。ちなみに子役で小林幸子もレギュラー出演しています。
これまではスポーツと言っても、柔道や、空手などの格闘技系アクションスポーツばかりでしたが、1965年、東宝・テアトルプロ・NTVが制作した夏木陽介主演のラグビー青春学園物『青春とはなんだ』、翌1966年の竜雷太主演のサッカー青春学園物『これが青春だ』とスポーツ青春学園物のヒットもあり、1967年、東映もバレーボール青春学園物、大下哲也主演のNET系『青空に叫ぼう』(1967/07/05~1968/03/27)を制作します。
また、1968年、この年メキシコオリンピックが開催されることもあり、オリンピックを目指す高校女子水泳部員の青春を描く学園物、小林幸子主演NET系『青い太陽』(1968/04/03~1968/09/25)を作りました。
そして1969年、『月光仮面』から続く特撮ヒーロー物枠、TBS系日曜19時からのタケダアワー、早々と打ち切られた『妖術武芸帳』の後を継いで、梶原一騎原作桜木健一主演の特撮スポーツアクション青春学園物であり特撮スポコン物とも言われる『柔道一直線』(1969/06/22~1971/04/04)が始まります。様々な登場キャラクターたちが繰り出す必殺技が少年たちの間で大きな話題を呼び大ヒットしました。
この作品は、他社でほぼ決まっていた放映権を、当時テレビ企画営業部長だった渡辺亮徳が梶原を直接口説いて手に入れ、平山亨プロデューサーが特撮のメッカ、東映東京制作所で作ったものでした。。
東京オリンピック無差別級決勝で神永昭夫がアントン・ヘーシンクに破れ、メキシコオリンピックでは柔道が競技種目から外れたことなどもあり、当時、かつての柔道人気は低迷していましたが、この作品を見た多くの小学生が町道場に入門して柔道を習うようになり、人気が復活します。
1968年に始まったNTV系他社アニメ梶原一騎原作『巨人の星』(1968/3/30~1971/9/18)、1969年のTBS系梶原一騎原作『柔道一直線』(1969/06/22~1971/04/04)、NTV系東映動画梶原一騎原作『タイガーマスク』(1969/10・2~1971/9/30)、それに続くTBS系他社制作神保史郎原作『サインはV』(1969/10/5~1970/8/16)、NET系他社アニメ浦賀千恵子作『アタックNo.1』(1969/12/7~1971/11/28)、1970年、CX系他社アニメ梶原一騎原作『あしたのジョー』(1970/4/1~1971/9/29)、CX系他社制作細野みち子・津田幸夫作『金メダルへのターン』(1970/7/6~1971/9/27)など、当時は実写、アニメとも梶原一騎原作を中心とするスポ根物が一大ブームとなっていました。
『柔道一直線』で一躍子供たちのヒーローとなった桜木健一は、ヒロイン吉沢京子と共に成長し、続けて梶原一騎原作の青春学園純愛物劇画『朝日の恋人』のタイトルを変えたテレビ映画、平山亨がプロデューサーのNET系『太陽の恋人』(1971/07/22~10/14)に主演します。この作品での吉沢の役名天地真理は渡辺プロの新人歌手齋藤眞理の芸名となりました。
この後、桜木健一は、東撮伝統の刑事に挑み、平山亨プロデュースのTBS系青春刑事物『刑事くん』(1971/09/06~1976/11/29)に主演して大ヒット、青春スターとして増々人気を高め、5年に渡り放送が続きます。
東映ではその他に、1971年、NET系中山仁主演石橋正次出演青春学園剣道スポコン物『打ち込め青春』(1971/01/07~04/01)、1973年にはスポーツアクションとは少し違いますが、平山亨が担当するNET系相撲青春物、金子吉延主演『どっこい大作』(1973/01/08~1974/03/25)が作られました。後者は、北海道の中学を卒業後、上京し、相撲で培った根性を武器に様々な試練を乗り越え成長していく青年の話で、オープニングのSLと日本国旗の前で「どっこい、どっこい」と相撲の「てっぽう」をする主人公の姿が印象的で大ヒットしました。
これ以降、テレビ映画では子供向け、大人向け共に、しばらくスポーツアクション物は制作されませんでしたが、映画では1974年に京撮で千葉真一主演『激突!殺人拳』、続いて東撮の『直撃!地獄拳』が大ヒットし、空手アクション映画ブームが興りました。
東映の実写スポーツ物では、空手、柔道といった日本の格闘技系個人スポーツアクション物のヒットが多く、球技などの団体スポーツはあまり得意ではありませんでした。
トップ画像『柔道一直線』 ©梶原一騎・東映