122.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」
第9節「プロデューサー黒澤満 東映ニューアクション ④あぶない刑事と長渕剛」
8.舘ひろし、柴田恭兵、仲村トオル、浅野温子『あぶない刑事』誕生
『ビー・バップ・ハイスクール』の大ヒットで始まった1986年。セントラル・アーツからもう一つの大ヒットシリーズが誕生します。
〇 NTV『あぶない刑事』(1986/10/5~1987/9/27)
1986年10月7日、日曜夜9時から日本テレビ(NTV)系で『あぶない刑事』(1986/10/5~1987/9/27)が始まりました。
『あぶない刑事』は、横浜を舞台に、神奈川県警港警察署捜査課の刑事コンビ、舘ひろし演じるタカこと「ダンディー鷹山」鷹山敏樹と柴田恭兵のユージこと「セクシー大下」大下勇次が大活躍するアクション刑事ドラマで、レギュラーメンバーとして浅野温子がカオルこと真山 薫、仲村トオルはトオルこと「プリティ町田」町田透役を演じています。
第1話でカオルがタカとユージの二人を「ア・ブ・ナ・イ・デ・カ」と称しました。
セントラルアーツが製作、主に柏原寛司、大川俊道、田部俊行などが脚本を書き、アクションは高瀬将嗣の高瀬道場や『ア・ホーマンス』の二家本 辰己等が担当、長谷部安春、村川透、一倉治雄、成田裕介他の監督でにっかつ撮影所にて撮影されました。
回を重ねるごとに視聴率も上がり、2クールの予定が1年間51話まで続きます。終盤には20%を超え、最高視聴率は22.9%まで上昇、21.5%で終了しました。
〇 劇場版『あぶない刑事』 (1987/12/12)
この人気を受け、東映で映画化が決まり、1987年9月に製作発表が行われます。
テレビシリーズの第1回を演出した長谷部が監督、脚本は柏原、大川が書き、撮影には日活の名手姫田真佐久を起用、技闘は高瀬将嗣(高瀬道場)が担当しました。
東映 と NTVが共同製作し、セントラル・アーツが製作協力したこの作品は、東映洋画宣伝室が宣伝を担当。キャッチコピーは「取り扱い注意。」と「ヤバイくらいマブイやつら。」が使われます。
劇場版『あぶない刑事』は、12月に東映洋画配給でジャッキー・チェン主演『七福星』(ハン・キンポー監督)と同時公開され、興行収入(興収)26億円、配収15億円、1988年年度日本映画配収第4位と大ヒットします。
〇 NTV『あきれた刑事』(1987/10/21~1988/3/23)
一方、『あぶない刑事』シリーズが終了したNTVでは、水曜夜8時の枠でセントラル・アーツ製作の時任三郎、永島敏行W主演『あきれた刑事』(1987/10/21~1988/3/23)が始まります。
この作品は、2クールで終わる予定だった『あぶない刑事』枠の後番組として企画されていましたが、番組が延長したため、別枠で放映されました。
〇 劇場版第2作『またまたあぶない刑事』 (1988/7/2)
1988年4月、東映と日本テレビは劇場版第2作『またまたあぶない刑事』の製作を発表します。
この作品は、テレビの監督を担当している一倉治雄の映画監督デビュー作となりました。
7月2日、『またまたあぶない刑事』は、東映洋画配給にて古村比呂主演『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・』(榎戸耕史監督)と同時公開されます。
結果は前作ほどの成績には至りませんでしたが、興収18億円、配収10.5億円(1988年邦画配収第10位)と、またまた大ヒットしました。
〇 NTV『もっとあぶない刑事』 (1988/10/7~1989/3/31)
映画大ヒット後の10月、『あぶない刑事』がNTV金曜夜8時枠にて『もっとあぶない刑事』(1988/10/7~1989/3/31)として復活します。
前シリーズと同じメインキャストで始まった新シリーズは、前作の好調を受け21.2%という高視聴率でスタートを切りました。
そのまま好調に推移し、第6話では26.4%というテレビシリーズ最高視聴率を叩き出します。
そして全25話の平均視聴率20.4%を記録する大ヒットシリーズとなりました。
〇 劇場版第3作『もっともあぶない刑事』 (1989/4/22)
このヒットを受け、東映とNTVは劇場版第3作『もっともあぶない刑事』の製作し、1989年4月の公開を決めます。
この映画では、シリーズの始まりから担当してきた柏原寛司の脚本に、前シリーズ『あぶない刑事』を担当した村川透を監督として起用しました。
4月に東映洋画配給で全国公開すると、興収12億円・配収7億円のヒットとなります。
『あぶない刑事』シリーズはこの作品以降、しばらく休止期間に入りました。
7年後、『あぶない刑事リターンズ』 (1996/9/14)で復活。
その2年後に『あぶない刑事フォーエヴァー TVスペシャル'98』(NTV:1998/8/28)を放映し、続けて『あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE』 (1998/9/12)を公開します。
そこから7年間のブランクを経た2005年、『まだまだあぶない刑事』 (2005/10/22)を上映、再び10年間休憩した2016年に公開した『さらばあぶない刑事』 (2016/1/30)が興行収入16.1億円の大ヒットとなりました。
そして、今年2024年5月24日、再びタカとユージが帰ってきます。タイトルは『帰ってきた あぶない刑事』。ぜひご覧ください。
『あぶない刑事』シリーズ一覧表
『あぶない刑事』(NTV:1986/10/5~1987/9/27)
製作著作 ㈱セントラル・アーツ
『あぶない刑事』(東映:1987/12/12)
製作協力 ㈱セントラル・アーツ
興収26億円・配収15億円(1988年邦画配収第4位)
『またまたあぶない刑事』 (東映:1988/7/2)
製作協力 ㈱セントラル・アーツ
興収18億円・配収10.5億円(1988年邦画配収第10位)
『もっとあぶない刑事』 (NTV:1988/10/7~1989/3/31)
製作著作 ㈱セントラル・アーツ
『もっともあぶない刑事』 (東映:1989/4/22)
製作協力 ㈱セントラル・アーツ ㈱キティ・フィルム
興収12億円・配収7億円
『あぶない刑事リターンズ』 (東映:1996/9/14)
制作協力 ㈱セントラル・アーツ
興収9.1億円・配収5億円
『あぶない刑事フォーエヴァー TVスペシャル'98』(NTV:1998/8/28)
製作著作 ㈱セントラル・アーツ
『あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE』 (東映:1998/9/12)
制作協力 ㈱セントラル・アーツ
興収8.8億円・配収4.5億円
『まだまだあぶない刑事』 (東映:2005/10/22)
製作プロダクション セントラル・アーツ
興収8.1億円
『さらばあぶない刑事』 (東映:2016/1/30)
製作プロダクション セントラル・アーツ
興収16.1億円
『帰ってきた あぶない刑事』2024年5月24日公開予定
〇 NTV『勝手にしやがれヘイ!ブラザー』(1989/10/13~1990/3/23)
3月末に終了した『もっとあぶない刑事』のNTV金曜8時枠にて、10月から柴田恭兵、仲村トオル主演『勝手にしやがれヘイ!ブラザー』(1989/10/13~1990/3/23)が始まります。
柴田と仲村は、横浜を舞台にしたこの作品でフリージャーナリストと大学生の異母兄弟役を演じました。
セントラル・アーツ製作のこのシリーズは『あぶない刑事』シリーズのスタッフで作られた番外編とも言えます。
最高視聴率15.7%、全22話の世帯平均視聴率は12.2%でした。
〇 柴田恭兵主演映画『べっぴんの町』(1989/10/14)
セントラル・アーツは、『勝手にしやがれヘイ!ブラザー』の柴田恭兵を主演に軒上泊原作『べっぴんの町』を映画化します。
この作品は震災前の神戸を舞台にしたハードボイルドミステリーで、柏原寛司の脚本を原隆仁が監督しました。
9.長渕剛主演映画『オルゴール』大ヒット
『乾杯』などの大ヒット曲で有名なミュージシャン長渕剛は、TBS系『家族ゲーム』(1983/8/26 ~ 1983/9/30)などに主演し、俳優としても高い人気がありました。
〇 長渕剛初主演映画『オルゴール』(1989/3/11)
1988年、TBS『とんぼ』(1988/10/7~11/25)に主演しヤクザ役を演じた長渕は、このドラマの脚本家黒土三男とともにヤクザ映画『オルゴール』を考えました。
そして東映とユイ音楽工房の共同製作、セントラルアーツが製作協力し東映東京撮影所(東撮)にて長渕初主演映画の撮影が始まります。
黒土が脚本及び初監督したこの作品は、1989年3月、東映洋画の配給で全国でロードショー公開されました。
フタを開けると予想を大きく上回る大ヒット、配収14億円、1989年邦画配収第3位となります。
〇 長渕剛主演映画第2弾『ウォータームーン』(1989/12/23)
この大ヒットで東映とユイ音楽工房は、長渕主演映画第2弾の製作を決定、セントラル・アーツが製作協力し、長渕に原案を任せました。
長渕のオフィス レンも製作に加わります。
長渕が修行僧を演じたこの映画は、脚本丸山昇一、監督工藤栄一、撮影仙元誠三と『ヨコハマBJブルース』チームが担当、相手役には松坂慶子を起用、東撮で撮影されました。
長渕の作品への思い入れが強く働き、撮影が延びギリギリで完成します。
東映洋画の配給で12月に公開されると、配収4億円の結果でした。
長渕剛はこの後、1991年フジテレビ『しゃぼん玉』(1991/10/10~12/19)、1993年TBS『RUN』(1993/10/15~12/24)、1997年にはTBS『とんぼ』の続編フジテレビ『英二ふたたび』(1997/1/24)に主演します。
そして、1999年5月、東映、フジテレビ、オフィスレン、東映ビデオ共同製作の『英二』(黒土三男脚本、監督)を原案し、主演。セントラル・アーツはこの作品に製作協力しました。配収は2.5億円でした。
黒澤満率いるセントラルアーツは、1990年代に入ると東映ビデオオリジナル映画(Vシネマ)を中心に数多くの作品を製作して行きます。
松田優作、舘ひろし、柴田恭兵、仲村トオル。東映ニューアクションを代表するスターたちは黒澤満のセントラル・アーツが生み出したニューヒーローでした。