83. 第4章「行け行け東映・積極経営推進」
第15節「京都撮影所(京撮)テレビ映画再始動 中編」
⑤ 京撮子供向けキャラクターテレビ時代劇
1966年4月、『銭形平次』の放映が始まるおよそ一月前、京都テレビプロ制作子供向けキャラクターテレビ現代劇映画、藤子不二雄原作『忍者ハットリくん』(1966/4/7~9/28)の放送が開始されます。
この作品は以前、77. 第4章第12節⑦京都テレビプロの子供向けキャラクター現代劇(https://note.com/toei70th/n/n3e334dd3dc94)にてご紹介いたしました。
しかし、京撮の子供向け現代劇へのチャレンジはここで終わり、続篇の『忍者ハットリくん+忍者怪獣ジッポウ』の制作は、東京撮影所(東撮)に移行します。
そして、満映マキノ光雄と満鉄、満洲日日新聞にいた関西テレビ芝田研三副社長との満洲時代から続く友情から始まり、マキノの後を継いだ岡田茂との関係から生まれた『赤影』の大成功によって、阪急東宝グループの関西テレビからより強い信頼を得ることができ、長きにわたり良き関係が続きます。
1967年4月、以前平山亨について書きました、79. 第4章第13節④京撮子供向け特撮キャラクターテレビ時代劇『仮面の忍者赤影』参上(https://note.com/toei70th/n/n4e0a2d531ab6)にてご紹介の『仮面の忍者 赤影』(1967/4/5~1968/3/27)が、初取引の関西テレビ(KTV)系にて始まりました。
この子供向け特撮時代劇では、 第1クール金目教編、第2クール卍党編と、悪の首領甲賀幻妖斎(天津敏)が、それぞれ霞谷七人衆、うつぼ忍群七人衆と子分たちを率いて天下を狙っており、彼ら悪の一党の前に、正義の味方、飛騨の赤影(坂口祐三郎)、白影(牧冬吉)、青影(金子吉延)が立ちはだかります。
第3クール根来編では根来十三忍を率いる根来暗闇寺頭領暗闇鬼堂(原健策)が天下を狙う夕里弾正(汐路章)と手を組み、怪忍獣を使って赤影たちに挑みました。第4クール魔風編では魔風十三忍頭領魔風雷丸(汐路章)が魔風怪忍獣で戦います。
破天荒な敵が次々と現れる『仮面の忍者赤影』は子供たちの心をつかんで大ヒット。全国で長きにわたり何度もリピート放送され、広い層で愛されました。
放送終了した後も人気は高く、1年後の1969年7月には、東映まんがまつりにて名作アニメ『空飛ぶゆうれい船』の併映で3D映画『飛びだす冒険映画 赤影』が上映され子供たちの人気を呼びました。
しかし、次の子供向け時代劇として、脚本家伊上勝が発案し平山が企画、1969年3月から始まったTBS系タケダアワー枠佐々木功主演『妖術武芸帳』(1969/3/16~6/8)は、平均視聴率が13.7%とタケダアワーとしては物足りない数字だったため1クールで打ち切られました。
「そも妖術とは心の技」。前番組の怪奇大作戦が大ヒットしたこともあり、妖術をテーマにしながらも怪奇現象を解明する話に傾き、子供ごころに何か無理筋な感じがして痛快さが足りなかったように思います。婆羅門の妖術使い、原健策の毘沙道人が不気味で期待が膨らんでいただけに残念でした。「おそるべし、おそるべし。」
この枠の後番組、東京制作所で制作した『柔道一直線』や1971年のMBS系『仮面ライダー』が大ヒットし、『妖術武芸帳』の失敗から平山の子供向け番組は東京に集中します。
この後、京撮では、1965年に設立された東映京都制作所(後東映太秦映像(株))にて、1972年10月、TBS系ブラザー劇場枠桜木健一主演『熱血猿飛佐助』(1972/10/9~1973/4/9)が制作されました。
この作品は、平山亨プロデュース作品『柔道一直線』でさわやか青春スターとして人気が爆発した桜木健一を主演に、平山が企画し大ヒットしたTBS系ブラザー劇場枠『刑事くん(第1部)』(1971/9/6~1972/10/2)の後番組です。
平山は、NET系『人造人間キカイダー』(1972/7/8~1973/5/5)、NET系『どっこい大作』(1973/1/8~1974/3/25)、CX系『ロボット刑事』(1973/4/5~9/27)、TBS系『刑事くん(第2部)』(1973/4/16~1974/5/6)と多忙を極めていたこともあり、『熱血猿飛佐助』には参加していません。
この作品も人気はありましたが、大ヒット人気番組『刑事くん(第2部)』が後に控えていることもあり、2クールで終了しました。
1973年10月、東映京都制作所は、宣弘社製作のTBS系タケダアワー枠荻島真一主演『隠密剣士』(1973/10/7~12/23)を受注制作します。
しかし、特撮を多用したいTBSの要望もあって、1クールで制作終了、2クール目は『隠密剣士突っ走れ!』というタイトルに変わり、東京の国際放映に制作が代わりました。
これを最後に、京撮での子供向けキャラクターテレビ時代劇は消滅し、子供向けテレビ映画は東京での特撮現代劇のみとなります。それによって、時代劇は大人が見るもの、特に年配の方が見るもの、過激なシーンも増え子供が見てはいけないものとなっていきました。少し前に特撮物に京撮が協力し関西ロケで時代劇シーンが登場することもありましたが、子供の世界での実写時代劇不在は、現在に至るまで続いております。
時代劇の復活には子供に興味を持ってもらえる作品を辛抱強く作り続けることが必要です。
⑥ ナショナル劇場『水戸黄門』『大岡越前』スタート
1969年8月、「明るいナショナル」でおなじみの松下電器(現パナソニックグループ)が単独でスポンサーするTBS系月曜20時ナショナル劇場枠で『水戸黄門(第1部)』(1969/8/4~1970/3/9)が始まります。
松下電器広報課長の逸見稔(へんみみのる)は、ナショナル劇場で担当した森繁久彌主演『七人の孫』が大ヒット、時代劇をホームドラマとして描くことを目指し、森繁主演で『水戸黄門』を企画、宣広社時代『隠密剣士』で大ヒットを飛ばし、電通子会社の製作プロダクションC.A.Lに移籍した西村俊一をプロデューサーとして参加させ、制作は岡田茂に頼み、京撮の東映京都制作所が請け負いました。
TBSの反対を押し切り、強引に制作に踏み切った逸見は、森繁の突然の降板というピンチを、俳優座の名優東野英治郎を起用しこれまでにない庶民性の高い黄門像を生み出すことで逆転します。
黄門さん(水戸光圀)役東野、助さん(佐々木助三郎)役杉良太郎、格さん(渥美格之進)役横内正が諸国を漫遊し、毎回その地の悪を懲らしめるおなじみのシリーズは、全国の名所や伝統工芸品を巧みに盛り込み、日本人の心のふるさとに触れ、大ヒットしました。
松下電器の社名変更にともない、2008年10月13日第39部からナショナル劇場はパナソニック ドラマシアターという名称に代わり、黄門役を始め助さん格さんなどの主要キャストを変えながら、『水戸黄門』は2011年12月12日の第43部まで、翌週19日の最終回スペシャルを入れて、1227話、42年間も続きます。
視聴率では東野英治郎三主演の第9部第27話が43.7%と驚異的な数字を残し、全1227回の平均視聴率は22.2%、日本のテレビ史に残る国民的作品となりました。
黄門人気で1976年12月には当時の黄門キャストに豪華ゲストを加え映画化もされます。
第43部終了後、2015年にTBS系で地上波スペシャル、2017年、2019年とBS-TBSにて武田鉄矢主演でシリーズが再開されています。
歴代黄門役
第1部 - 第13部:東野英治郎 1969/8/4 ~1983/4/11
第14部 - 第21部:西村晃 1983/10/31~1992/11/9
第22部 - 第28部:佐野浅夫 1993/5/17 ~2000/3/6
第29部 - 第30部:石坂浩二 2001/4/2 ~2002/7/1
第31部 - 第38部:里見浩太朗 2002/10/14~2008/6/30
ここまでナショナル劇場枠
第39部 - 第43部:里見浩太朗 2008/10/13~2011/12/12
最終回スペシャル:里見浩太朗 2011/12/19
スペシャル :里見浩太朗 2015//6/29
BS-TBS版 :武田鉄矢 2017/10/4 ~2019/8/11
歴代助さん役
第1部 - 第2部 :杉良太郎 1969/8/4 ~1971/5/10
第3部 - 第17部 :里見浩太朗 1971/11/29~1988/2/22
第18部~第28部 :あおい輝彦 1988/9/12 ~2000/11/20
第29部~第31部 :岸本裕二 2001/4/2 ~2003/3/24
第32部~第41部 :原田龍二 2003/7/28 ~2010/6/28
第42部~第43部 :東幹久 2010/10/11~2011/12/12
最終回スペシャル:東幹久 2011/12/19
スペシャル :原田龍二 2015//6/29
BS-TBS版 :財木琢磨 2017/10/4~2019/8/11
歴代格さん役
第1部 - 第8部 :横内正 1969/8/4 ~1978/1/30
第9部 - 第13部 :大和田伸也 1978/8/7 ~1983/4/11
第14部~第28部 :伊吹吾朗 1983/10/31~2000/11/20
第29部~第31部 :山田純大 2001/4/2 ~2003/3/24
第32部~第41部 :合田雅吏 2003/7/28 ~2010/6/28
第42部~第43部 :的場浩司 2010/10/11~2011/12/12
最終回スペシャル:的場浩司 2011/12/19
スペシャル :合田雅吏 2015//6/29
BS-TBS版 :荒井敦史 2017/10/4~2019/8/11
1970年3月16日、大ヒットの『水戸黄門(第1部)』が終了した次のクールから、ナショナル劇場第2弾として『大岡越前(第1部)』(1970/3/16~9/21)が続いて始まりました。
東野と同じ俳優座の加藤剛が主役の大岡忠相を演じ、妻の雪絵役宇都宮雅代、小石川養生所の榊原伊織役竹脇無我、徳川吉宗役山口崇、同心村上源次郎役大坂志郎、父の大岡忠高には御大片岡千恵蔵が配され、『水戸黄門』同様大ヒット、長きにわたりシリーズ化します。
1978年第5部第1話で最高視聴率の31.6%を記録した『大岡越前』は、1999年3月15日に第15部が終了するまで29年間402話続き、2006年3月20日には、ナショナル劇場50周年記念特別企画の一つとして最終回2時間スペシャルが放映され、加藤剛は403回にわたって主役大岡越前を務めました。
2013年からはNHK BSプレミアムにて東山紀之が主演し、大岡越前を演じています。C.A.L製作のこのシリーズは2022年の第6シリーズまで続く人気時代劇となっています。
次回は、『赤影』で信頼関係を築いた関西テレビとの大人向け作品『大奥』、そして、時代劇の定番NET系『遠山の金さん』などをご紹介いたします。