162.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」
第29節「京都撮影所テレビ時代劇⑥」
(2)1970年代に始まった東映テレビ時代劇人気シリーズ
1978年1月、今も大人気の新たな時代劇スターが登場します。
⑰松平健主演「暴れん坊将軍シリーズ」
1970年、上京した鈴木末七は宝映テレビプロダクションに入団、松本二郎の芸名を松平健に改名し1972年12月放映の読売テレビ制作『マドモアゼル通り』(1972/12/03 ~ 1973/05/27 全25話)でデビューしました。
1974年に勝新太郎の勝プロダクションに入社し勝の付け人となり、フジテレビ開局20周年記念番組『座頭市物語』(1974/10/03~1975/04/17 全26話)で勝が監督した第23話に出演します。
そして1976年4月、フジテレビの昼ドラ、ライオン奥様劇場『人間の条件』(1976/04/19 ~ 1976/07/02 全55話)にて初主演後、1977年の大河ドラマ『花神』(1977/01/02~12/25 全52話)第11話から奇兵隊の参謀時山直八役でレギュラー出演しました。
1978年1月7日、テレビ朝日系土曜20時から松平健主演東映京都撮影所(京撮)制作『吉宗評判記 暴れん坊将軍』(1978/1/7~1982/5/1 全207話)が始まります。
テレビ朝日の土曜20時枠は、かつて1967年『素浪人 月影兵庫 第2シリーズ』(1967/1/7~1968/12/28 全104話)、『素浪人 花山大吉』(1969/1/4~1970/12/26 全104話)と近衛十四郎主演の東映京都テレビ・プロダクション(京都テレビプロ)制作人気時代劇シリーズがあり、続く大友柳太朗主演『さむらい飛脚』(1971/1/9~4/3 全13話)で終了しました。
5年後の1976年10月から村野武範主演『五街道まっしぐら!』(1976/10/16~12/25 全11話)『駆けろ!八百八町』(1977/1/8~2/26 全10話)、松方弘樹主演『人形佐七捕物帳』(1977/4/9~12/24 全34話)、と京撮制作のテレビ時代劇が再び続きます。
しかし、裏番組のTBS系ザ・ドリフターズ『8時だよ!全員集合』とNTV系『全日本プロレス中継』、フジテレビ系萩本欣一司会『欽ちゃんのドンとやってみよう!』がそれぞれ絶大な人気を集めており視聴率的には苦戦、これまでとは違う新たな起爆剤が求められていました。
新番組のプロデューサーは テレビ朝日・小沢英輔、東映・斉藤頼照、京撮・宮川輝水と渡辺操、脚本小川英、杉村のぼる、田上雄、結束信二他、監督荒井岱志、黒田義之、井沢雅彦他、音楽は菊池俊輔が担当します。
主役の徳川吉宗、その仮の姿徳田新之助に勝プロの新人松平健を抜擢、吉宗の御側御用取次役有島一郎、軍学者山下幸内役浜畑賢吉(第30話まで)、江戸南町奉行大岡忠相役横内正、町火消「め組の頭」辰五郎役北島三郎、辰五郎女房おさい役春川ますみ、将軍家御庭番総支配薮田助八役宮内洋とその部下おその役夏樹陽子、め組の居候力士役龍虎などがレギュラー出演しました。
オープニング「暴れん坊将軍のテーマ」は菊池作曲、エンディング『炎の男』は原譲二というペンネームで北島三郎が作詞作曲、池多孝春が編曲し 北島自らが熱唱します。
将軍吉宗が貧乏旗本の三男坊徳田新之助に身をやつし、江戸の町に出て大チャンバラで悪党たちを退治する荒唐無稽なストーリーが受け、当初9%台と低かった視聴率も徐々に上昇、1年後には15%を超える人気番組となり、新たな時代劇スター松平健が誕生しました。
「愚か者め、余の顔を見忘れたか!」と言われた悪党は「上様を名乗る不埒な奴(曲者)じゃ。出会え出会え。こ奴を斬れ、斬り捨てい!」とラスタチ(番組最後の大立ち回り)が始まり、「成敗!」などで一件落着する「暴れん坊将軍シリーズ」は、家族そろって安心して見れる番組、テレビ朝日の看板番組の一つとして21世紀まで長きにわたり人々に愛されています。
松平健主演「暴れん坊将軍シリーズ」
吉宗評判記 暴れん坊将軍
放送期間 1978/1/7 ~ 1982/5/1 全207話暴れん坊将軍II お由利の方(Ⅳから円浄院):中村玉緒 御庭番:荒木しげる・朝加真由美
放送期間 1983/3/5 ~ 1987/3/7 全188話+SP3話 〇スペシャル90分 1985/1/5 〇スペシャル90分 1985/10/5 〇スペシャル90分 1987/1/3暴れん坊将軍III 御側御用取次:船越英二 2代目おさい:浅茅陽子 お庭番:三ツ木清隆(第55話まで)五代高之(第56話から)・高島礼子(第77話から) お葉:伊藤つかさ
放送期間 1988/1/9 ~ 1990/9/29 全123話+SP6話 〇スペシャル120分 1988/4/2 〇スペシャル120分 1989/2/4 〇スペシャル120分 1989/4/8 〇スペシャル120分 1989/10/7 〇500回記念スペシャル120分 1990/2/3 〇スペシャル120分 1990/4/7暴れん坊将軍IV め組小頭:渡辺篤史
放送期間 1991年4月6日 ~ 1992年9月26日 全70話+SP4話 〇スペシャル120分 1991/4/6 〇スペシャル120分 1991/10/5 〇スペシャル120分 1991/12/28 〇スペシャル120分 1992/4/4暴れん坊将軍V め組小頭:小野ヤスシ
放送期間 1993/4/3 ~ 1994/3/26 全42話+SP2話 〇スペシャル120分 1993/4/3 〇スペシャル120分 1993/10/9暴れん坊将軍VI 3代目おさい:坂口良子 め組小頭:三遊亭楽太郎(6代目三遊亭円楽)
放送期間 1994/10/8 ~ 1996/1/20 全50話+SP1話 〇スペシャル120分 1994/10/8暴れん坊将軍VII おぶん:生稲晃子
放送期間 1996/7/13 ~ 1997/1/25 全18話暴れん坊将軍VIII 大岡忠相2代目:田村亮 御側御用取次:高島忠夫 め組頭:山本譲二 江戸町火消肝煎:北島三郎 御庭番:大森貴人・大竹一重
放送期間 1997/7/12 ~ 1998/3/7 全22話暴れん坊将軍(通称:IX) 御側御用取次:名古屋章(第16話から) 御庭番:東風平千香 放送期間 1998/11/7 ~ 1999/9/30 全38話 1999年4月第16話から木曜19時時代劇枠に移動
暴れん坊将軍(通称:X) 大岡忠相姪:松下恵 御庭番:山口香緒里
放送期間 2000/3/30 ~ 2000/9/14 全25話+SP1話 〇暴れん坊将軍 800回新春スペシャル120分 2001/1/11暴れん坊将軍(通称:XI) め組頭:松村雄基 御庭番:松永香織
放送期間 2001/7/5 ~ 2001/12/17 全19話 2001年10月第10話から月曜19時枠に移動暴れん坊将軍(通称:XII)
放送期間 2002/7/8 ~ 2002/9/9 全10話+SP1話 〇暴れん坊将軍 最終回スペシャル120分 2003/4/7
〇暴れん坊将軍 春のスペシャル 御側御用取次:神山繁 御庭番:篠塚勝・村井美樹
2004/3/29
〇テレビ朝日開局50周年記念番組 時代劇スペシャル ドラマスペシャル 暴れん坊将軍
2008/12/29
「暴れん坊将軍シリーズ」 全832話
松平健は、1990年代から『暴れん坊将軍』主演の他にスペシャル時代劇を中心に活躍。レギュラー時代劇では2004年10月、テレビ朝日開局45周年記念企画『忠臣蔵』(2004/10/18~12/13 全9話)、2007年1月、テレビ朝日火曜19時『遠山の金さん』(2007/1/16~3/20 全9話)に主演しました。
「暴れん坊将軍」で一躍人気時代劇スターとなった松平健は、その後テレビドラマだけでなく舞台やバラエティー番組に進出します。
2004年には舞台で人気の「マツケンサンバ」が大ブレイクし、年末の『第55回NHK紅白歌合戦』及び『第46回日本レコード大賞』に出演し国民的スターとなりました。
2021年、「マツケンサンバ」が再ブレイクし『第72回NHK紅白歌合戦』に再出演します。
「マツケンサンバ」は現在も若者を中心に大人気を集めており、12月25日には 「マツケンサンバⅡ-芸能生活50周年記念盤-」が発売される予定で、老若男女問わず人気を有する松平健は、NHK連続テレビ小説『おむすび』に主人公の祖父役でレギュラー出演するなど今も大活躍しています。
2025年1月4日土曜日21時、松平健主演テレビ朝日ドラマプレミアム『新・暴れん坊将軍』(三池崇史監督)の放映が決定しました!
皆様ぜひ久しぶりの「松平暴れん坊将軍」をご覧ください!!
⑱「千葉真一&ジャパン・アクションクラブ(JAC)時代劇シリーズ」
1978年10月、この年1月に公開し大ヒットした時代劇映画『柳生一族の陰謀』(深作欣二監督)のテレビシリーズが、柳生十兵衛三厳役を演じた千葉真一を主役に関西テレビ・東映共同製作でフジテレビ系火曜22時枠にて始まりました。
〇千葉真一主演「柳生十兵衛シリーズ」
この『柳生一族の陰謀』から京撮制作「千葉真一&JACテレビ時代劇シリーズ」がスタートします。
企画は、関西テレビ・伊藤敏彦と東映・翁長孝雄、プロデューサーは関西テレビ・岩崎義に東映・松平乗道、杉本直幸 (1 - 17, 19) 、牧口雄二、奈村協 (18, 20 - 39)、脚本は野上龍雄、志村正浩、山田隆之、中村努他、監督は第1回深作欣二の後、松尾昭典、池広一夫、鷹森立一、黒田義之、牧口雄二、工藤栄一、志村正浩、音楽は津島利章が担当しました。
柳生十兵衛役の千葉真一、父宗矩役は山村聡、妹茜役志穂美悦子、阿国役多岐川裕美、裏柳生には千葉の弟矢吹二朗の他高橋健二や春田純一などJACの面々に加え京撮の福本清三などがハードなアクションを展開、映画と同じく烏丸文麿役で成田三樹夫が出演します。
この番組は特に関西で高視聴率を獲得し全39話続き、柳生十兵衛は千葉の十八番となりました。
「裏柳生口伝に曰く、戦えば必ず勝つ。此れ兵法の第一義なり。人としての情けを断ちて、神に逢うては神を斬り、仏に逢うては仏を斬り、然る後、初めて極意を得ん。斯くの如くんば、行く手を阻む者、悪鬼羅刹の化身なりとも、豈に遅れを取る可けんや。」
関西テレビ製作のこの枠では、松竹制作天知茂主演『雲霧仁左衛門』(1979/7/3~9/25 全13話)、東撮の東映テレビ・プロダクション制作六代目市川染五郎主演『騎馬奉行』(1979/10/2~1980/3/25 全26話)の後、千葉主演でJACのメンバーが活躍する京撮制作『服部半蔵 影の軍団』が登場します。
〇千葉真一主演「影の軍団シリーズ」
1980年2月、東映は『影の軍団 服部半蔵』(工藤栄一監督)を公開しました。
この映画は『柳生一族の陰謀』同様、映画公開後関西テレビにてテレビシリーズとして放映し、当初千葉真一が両方の主演として企画された作品でした。
しかし、工藤監督との方向性の違いで千葉が降板したため、劇場版は渡瀬恒彦が主演することになりますが、フジテレビ火曜22時のテレビシリーズは予定通り千葉主演で進められます。
企画は関西テレビ・巻幡展男 、東映・翁長孝雄、プロデューサー関西テレビ・岩崎義、東映・松平乘道、牧口雄二、奈村協、脚本は山田隆之、中里峰行、野上龍雄、石川孝人、志村正浩他、監督は黒田義之、工藤栄一、松尾昭典、牧口雄二他、音楽は渡辺茂樹が担当します。
三代目服部半蔵・神田の湯屋「雉の湯」の主人・半さん役千葉真一、保科正之役山村聡、紀州頼宜役成田三樹夫、酒井忠清役金子信雄、髪結いおりん役樹木希林、半蔵の部下の瓢六役高岡健二、お霧役長谷直美、大八役火野正平、喜平次役JAC春田純一、甲賀組お甲役三林京子、水口鬼三太役菅貫太郎などがレギュラー出演しました。
主題歌は「フォークの神様」岡林信康を起用、作詞・作曲した「Gの祈り」を自ら歌います。
『影の軍団 服部半蔵』は大ヒット、この枠の後番組、国際放映制作小林旭主演時代劇『旅がらす事件帖』(1980/10/7~1981/3/31 全26話)終了後、『影の軍団Ⅱ』とシリーズ化しました。
1980年10月、テレビ朝日系火曜21時枠にて千葉真一が柳生十兵衛役で主演する『柳生あばれ旅』が放映されます。
プロデューサーはテレビ朝日・片岡政義、東映・佐伯明、松平乘道、牧口雄二、清水敬三、脚本小川英、古内一成、 中村勝行、志村正浩、下飯坂菊馬他、監督松尾昭典、太田昭和、牧口雄二他、音楽は津島利章が担当しました。
いなばきみこ作詞の主題歌「ウォーキング オン」はやしきたかじんが作曲し歌います。
柳生十兵衛役千葉真一、弟の又十郎役勝野洋、父宗矩は山村聡、くノ一お紋役片平なぎさ、又十郎配下に桜木健一、十兵衛配下の裏柳生役で黒崎誠輝(黒崎輝)、根来拳法の使い手又平役で真田広之などが出演しました。
1981年6月、千葉真一は柳生十兵衛として角川と東映共同製作の映画『魔界転生』(深作欣二監督)に主演します。
この映画は大ヒットし千葉はその後、関西テレビ『影の軍団Ⅱ』(1981/10/6~1982/3/30 全26話)に影の軍団を率いる伊賀忍者頭領柘植新八役、続いて『影の軍団III』(1982/4/6~9/28 全26話)に頭領多羅尾半蔵役で主演しました。
そしてテレビ朝日火曜21時『柳生あばれ旅』の続編『柳生十兵衛あばれ旅』(1982/10/19~1983/4/26 全26話)が始まります。
今シリーズは2クール26話で終了し、この枠の後継番組は歌番組となり時代劇では無くなりました。
関西テレビの千葉真一主演「影の軍団シリーズ」は、1985年4月十五代目服部半蔵『影の軍団IV』(1985/4/2~10/1 全27話)、10月十五代目服部半蔵『影の軍団 幕末編』(1985/10/7~12/30 全13話)の5シリーズで終了します。
「柳生十兵衛シリーズ」
1.関西テレビ・フジテレビ系火曜22時『柳生一族の陰謀』
放送期間 1978/10/03 ~ 1979/06/26 全39話
2.テレビ朝日系火曜21時『柳生あばれ旅』
放送期間 1980/10/14 ~ 1981/04/07 全26話
3.テレビ朝日系火曜21時『柳生十兵衛あばれ旅』
放送期間 1982/10/19~1983/4/26 全26話
関西テレビ・フジテレビ系火曜22時「影の軍団シリーズ」
1.『服部半蔵 影の軍団』三代目服部半蔵
放送期間 1980/04/01~9/30 全27話
2.『影の軍団II』柘植新八
放送期間 1981/10/6~1982/3/30 全26話
3.『影の軍団III』多羅尾半蔵
放送期間 1982/4/6~9/28 全26話
4.『影の軍団IV』十五代目服部半蔵
放送期間 1985/4/2~10/1 全27話
5.「影の軍団 幕末編』十五代目服部半蔵
放送期間 1985/10/7~12/30 全13話
千葉真一とJACは、映画、テレビで1980年代の東映を支えました。
トップ写真:東映時代劇YouTube『吉宗評判記 暴れん坊将軍』©東映