161.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」
第29節「京都撮影所テレビ時代劇⑤」
(2)1970年代に始まった東映テレビ時代劇人気シリーズ
東映京都撮影所に所縁の深い阪東妻三郎の三男、田村正和もこの撮影所でテレビ時代劇の主役を演じ、人気を博しました。
⑮フジテレビ系火曜22時田村正和主演『眠狂四郎』(1972/10/3~1973/3/27 全26話)
JR嵯峨嵐山駅近くの家で生まれた田村正和は、1961年9月公開の松竹『永遠の人』(木下恵介監督)で映画デビューしました。
その後成城大学に通いながら松竹映画やNHKなどのテレビ出演を続け、1965年3月公開松竹配給の青春映画『われら劣等生』(佐藤雄三監督)で初主演します。
4月、大学を卒業すると本格的に俳優活動に取り組み、青春スターとして松竹映画に主演しました。
その年、フリーとなり大映、日活、東宝など各社の映画や様々なテレビドラマに出演します。
そして、1972年4月からNET(現:テレビ朝日)系木曜22時にて放映の東映京都テレビ・プロダクション(京都テレビプロ)制作、片岡千恵蔵主演『世なおし奉行』(1972/4/6~9/28 全26話)にて早瀬主水役を演じました。
東映京都撮影所(京撮)に初めて出演した田村は、続いて関西テレビと京都撮影所制作の『眠狂四郎』(1972/10/3~1973/3/27 全26話)に主演します。
関西テレビ野添泰男と東映京撮の松平乘道、杉本直幸がプロデューサー、脚本は高岩肇、池田一朗、石松愛弘他、監督は井上昭、田中徳三、倉田準二他、音楽は渡辺岳夫が担当しました。
眠狂四郎・田村の相手役には山本陽子、野川由美子が起用されます。
フジテレビ系火曜22時で放映され、柴田錬三郎のエロチシズム小説を原作にした『眠狂四郎』は、当時京撮で盛んに撮影されていたポルノ映画に出演する女優を起用した「放送コードギリギリのお色気演出」が話題となり、狂四郎を演じた田村のクールな演技と円月殺法や帯解き殺法が人気を呼びました。
この後田村は、テレビを中心に時代劇・現代劇を問わず色々な会社の様々な作品に主演し大スターとなります。
東映では、東京撮影所(東撮)にて1973年12月公開『女囚さそり 701号怨み節 』( 長谷部安春監督)や時代劇に出演し、1975年10月、京都テレビプロ制作、関西テレビ・フジテレビ系水曜22時『運命峠』(1974/10/2~1975/2/26 全21話) に主演しました。
その後京撮にて時代劇や現代劇、そして1979年10月公開『日本の黒幕』(中島貞夫監督)に出演した田村は、1983年6月、フジテレビ時代劇スぺシャル『お毒味役主丞 乾いて候』、1984年1月『乾いて候 お毒見役必殺剣』に主演します。好評を博し、8月から木曜22時にて『乾いて候』(1984/8/23~9/27 全6話)とシリーズ化ました。
田村は、TBS系金曜テレビドラマ、『夏に恋する女たち』(1983/8/5~9/30 全9話)、「うちの子にかぎって…」シリーズ(1984/8/17~1987/4/1 全20話+SP2話)、『パパはニュースキャスター』(1987/1/9~3/27 全12話)、『男たちによろしく』(1987/4/10~7/10 全13話)などに続き、フジテレビのトレンディドラマ『ニューヨーク恋物語』(1988/10/13~12/22 全11話)に主演し、若者たちを中心に絶大な人気を得ます。
その後もTBSやフジテレビのテレビドラマに主演し人気を博した田村は、フジテレビの刑事ドラマ「古畑任三郎」シリーズ(1994/4/13~2008/6/14 4シリーズ全36話+SP6話+総集編1話 計43話)で国民的スターとなりました。
田村は、人気が爆発した後も京撮でテレビ朝日の時代劇を主としたスペシャルドラマに主演します。
田村正和時代劇スペシャル『眠狂四郎』
1989/6/22 Ⅰ.「恋しぐれ円月殺法!将軍家、若君乱心の謎を斬る!」
1993/9/30 Ⅱ.「江戸城に渦巻く陰謀!母よ、妻よ、女たちよ、円月殺法、御照覧あれ!!」
1996/9/30 Ⅲ.「今日あって、明日なき命を生きる者」
1998/12/28 Ⅳ.「雪の夜に私を殺して!狂四郎を愛し続けた女」
テレビ朝日ドラマスペシャル
2008/12/14 『忠臣蔵 音無しの剣』 - 主演・結城慶之助役
2010/2/20 『樅ノ木は残った』 - 主演・原田甲斐役
2010/12/25 『忠臣蔵〜その男、大石内蔵助』 - 主演・大石内蔵助役
2012/12/15 『松本清張没後20年 ドラマスペシャル 十万分の一の偶然』(現代劇)- 主演・山内正平役
2013/2/9 『上意討ち 拝領妻始末』 - 主演・笹原伊三郎役
2015/2/7 『復讐法廷』(現代劇) - 主演・中原誠司役
そして、時代劇を愛した田村が最後に出演を選んだ作品は「眠狂四郎」でした。
2018/2/17 『眠狂四郎 The Final』
2021年4月3日、77歳の田村正和は二枚目人生に終わりを告げます。
⑯「里見浩太朗主演時代劇シリーズ」
1956年第3期東映ニューフェイスとして東映に入社した佐野邦俊(現・里見浩太朗)は、京撮に配属され時代劇の若手スターとして売り出されました。
1957年5月に公開された『上方園芸 底抜け捕物帖』(松村昌治監督)に鏡小五郎の芸名で映画初出演の後、富士川一夫と改名し7月の『誉の陣太鼓』(井沢雅彦監督)に出演。10月の『天狗街道』(小沢茂弘監督)にて里見浩太郎で本格デビューします。
1958年12月『金獅子紋ゆくところ 黄金蜘蛛』(伊賀山正光監督)で主演&歌手デビューしました。
中村錦之助、大川橋蔵に継ぐ次世代スターとして期待された里見は、二人の先輩の例に倣いまずは子供向け時代劇に数多く主演、その後美空ひばりの相手役などに起用されアイドル人気を高めて行きます。
第二東映では『桃太郎侍 江戸の修羅王』(深田金之助監督)などにも主演しました。
集団時代劇の嚆矢となった1963年『十七人の忍者』(長谷川安人監督)に主演し、名作『十三人の刺客』(工藤栄一監督)での演技は高く評価されます。
1963年にはNET系日曜22時『日本映画名作ドラマ 貸間あり』でテレビドラマに初出演しました。以降、『忍びの者』『銭形平次』などの京撮テレビ時代劇や他社テレビドラマに出演を重ねます。
1969年1月、毎日放送で放映された松竹制作のテレビ時代劇『はやと』(1969/1/1~3/26 全13話)でテレビ初主演しました。
1960年代後半、京撮が時代劇映画から任俠映画へシフトチェンジすると、任俠映画に出演するも1969年の『日本暗殺秘録』(中島貞夫監督)を最後に東映を離れフリーとなり、日活映画などに主演します。
翌1970年「浩太朗」に改名した里見は活動の中心をテレビに移しました。
1971年8月からは、東映東京撮影所の東映テレビ・プロダクション制作の人気刑事ドラマ『特別機動捜査隊』に高倉主任として第512話から1974年3月の646話まで随時主演します。
そして、1971年11月、TBS系ナショナル劇場『水戸黄門 第3部』から杉良太郎に代わって2代目佐々木助三郎役を担当すると人気を得て、1988年2月の第17部終了まで足かけ16年半、457回にわたり「助さん」を演じました。
また、1974年からは東京12チャンネルの人気時代劇、三船プロ制作『大江戸捜査網』にて十文字小弥太役杉良太郎に代わり「伝法寺隼人」役で主演しました。
3月の第3シリーズ第27話より1979年9月第305話まで活躍し、時代劇俳優としてますます人気が高まります。
〇テレビ朝日系木曜20時『長七郎天下ご免!』(1979/10/25~1982/3/25 全113話)
1979年10月、テレビ朝日木曜20時枠杉良太郎主演『遠山の金さん』の後継番組として里見浩太朗主演、村上元三原作『長七郎天下ご免!』が始まりました。
プロデューサーはテレビ朝日・小澤英輔、京都テレビプロ・田村嘉(第1話~第27話、第29話)から杉井進(第27話~第113話)、東映・斎藤侑(第1話~第35話)、上阪久和(第1話~第26話)、渡辺操(第27話~第68話)、伊駒伊織(第44話~第113話)、脚本は土橋成男、飛鳥ひろし、今村文人他、監督河野寿一、荒井岱志、松尾正武他、音楽は菊池俊輔が担当します。
松平長七郎・里見浩太朗の相手役には酒井和歌子(第1話~第30話)、丘みつ子(第31話~第113話)、南町同心・岸部シロー、一心太助・大和田獏、長七郎の世話をする仕出し屋吾兵衛・高品格、大久保彦左衛門・伴淳三郎が出演しました。
悪人を前にした決め台詞は「天、不正を成せばそれを断つ。悪に上下の隔てはない。天下ご免!松平長七郎!」、そして「止むを得ん、生涯勝手(天下御免)の長七郎、天に代わって貴様達を斬る!」の台詞の後、里見の二刀流が冴えわたります。
人気を博した『長七郎天下ご免!』はおよそ2年半113話続き、松平長七郎役は里見の十八番となりました。
〇日本テレビ系日曜21時『松平右近事件帳』(1982/3/28~1983/3/20 全51話)・『新・松平右近』(1983/4/3~9/4 全22話)
テレビ朝日系『長七郎天下ご免!』終了後、里見主演の日本テレビ系日曜21時『松平右近事件帳』がスタートします。
『松平右近事件帳』は、日本テレビが筆頭株主のユニオン映画(現・タクミ商事子会社)と芸能事務所六本木オフィスが共同制作、東映太秦映像が制作協力し京撮で撮影されました。
企画は日本テレビ・香取雍史と大久保晃、プロデューサーはユニオン映画・松岡明、東映太秦映像・今井正夫、六本木オフィス・伊原詢太郎、脚本は国弘威雄、下飯坂菊馬、大工原正泰他、監督山内鉄也、太田昭和、大洲斎他、音楽は菊池俊輔が担当します。
松平右近役里見に、相手役水沢アキ、佐藤友美(第1話~第26話)、かたせ梨乃(第27話~第51話)、松山英太郎、渡辺篤史、佐野浅夫などがレギュラー出演しました。
『松平右近事件帳』は人気を呼び1年間51話の後、続編『新・松平右近』が1983年9月まで全22話続きます。
〇日本テレビ系火曜20時『長七郎江戸日記』(1983/10/18~1986/12/23 全118話+SP7話)・第2シリーズ(1988/1/5~1989/9/26 全62話+SP6話)・第3シリーズ(1990/10/15~1991/9/24 全38話+SP2話)
『新・松平右近』終了後、里見は以前テレビ朝日で放映し人気を博した村上元三作「松平長七郎」役で日本テレビ火曜20時『長七郎江戸日記』に主演しました。
企画は日本テレビ・須永元、ユニオン映画・増井正武(第1話~第78話、第84話、第86話、第89話)、松岡明(第79話~第83話、第85話、第87話~第88話、第90話~第118話)、プロデューサーはユニオン映画・松岡明(第1話~第78話、第84話、第86話、第89話)、菊池昭康(第90話~第118話)、六本木オフィス・伊原詢太郎、東映太秦映像・今井正夫、脚本小川英、杉村のぼる、尾西兼一他、監督松尾昭典、黒田義之、倉田準二他、音楽は菊池俊輔が担当します。
松平長七郎・里見浩太朗に、相手役野川由美子とその従業員午吉役高品格、長七郎配下の元盗人辰三郎役火野正平、忠臣三宅宅兵衛役下川辰平などがレギュラー出演しました。
里見主演『長七郎江戸日記』は再び好評を博し、3年と2か月全118話+SP7話続きました。
1年後、第2シリーズ(1988/1/5~1989/9/26 全62話+SP6話)、次番組里見主演『八百八町夢日記』の後、第3シリーズ(1990/10/15~1991/9/24 全38話+SP2話)と続き、「松平長七郎」は里見の当たり役となります。
〇日本テレビ系火曜20時『八百八町夢日記 』(1989/10/10~1990/10/2 全34話+SP4話)・第2シリーズ(1991/10/8~1992/9/15 全34話+SP2話)
『長七郎江戸日記』第2シリーズの後、里見浩太朗主演『八百八町夢日記』が始まりました。
企画は日本テレビ・須永元、ユニオン映画・松岡明、プロデューサーはユニオン映画・内堀雄三、東映太秦映像・今井正夫、脚本小川英、胡桃哲、中野顕彰他、監督齋藤光正、山下耕作、原田雄一他、音楽は川村栄二が担当します。
北町奉行榊原忠之(榊夢之介)・里見浩太朗に、相手役中原理恵とその従業員で元盗賊平吉役森川正太、榊原配下の同心八田真四郎役船越栄一郎、内与力観音寺伝蔵役長門裕之、鼠小僧役風間杜夫などがレギュラー出演しました。
里見主演『八百八町夢日記 』も好評を博し、1年間全34話+SP4話で終了します。
その枠での次番組『長七郎江戸日記』第3シリーズの後、1991年10月から『八百八町夢日記 』第2シリーズが始まり、1992年9月まで約1年間全34話+SP2話続きました。
〇日本テレビ系火曜20時『半七捕物帳』(1992/10/13~1993/3/2 全19話)
日本テレビ系火曜20時『八百八町夢日記』第2シリーズの後継番組として里見主演岡本綺堂原作『半七捕物帳』が始まります。
企画は日本テレビ・岡部英紀、ユニオン映画・菊池昭康、プロデューサーはユニオン映画・加納譲治、東映太秦映像・今井正夫、プロデューサー補として日本テレビ・大澤雅彦が参加。脚本鈴木生朗、和久田正明、ちゃき克彰他、監督小澤啓一、関本郁夫、齋藤光正他、音楽は大谷和夫が担当しました。
三河町の半七・里見浩太朗に、相手役片平なぎさ、庄太役西山浩司、志村小十郎役松村雄基、小山恭介役堤大二郎、鳥越の長次役山城新伍、白河楽翁(松平定信)役丹波哲郎などがレギュラー出演します。
『半七捕物帳』は2クール19話で終了、後番組は里見主演『闇を斬る!大江戸犯科帳』が続きました。
〇日本テレビ系火曜20時『闇を斬る!大江戸犯科帳』(1993/3/9~12/29 全22話)
1993年3月から始まった里見主演『闇を斬る!大江戸犯科帳』は、プロデューサー日本テレビ・岡部英紀、ユニオン映画・菊池昭康(第1話 - 第4話)、大藤博司、東映太秦映像・今井正夫、脚本小川英、中野顕彰、胡桃哲他、監督金鐘守、小野田嘉幹、井上泰治、齋藤光正他、音楽は川村栄二が担当します。
大目付一色由良之助・里見浩太朗に、相手役岡まゆみ、密偵六助役火野正平(1話~14話)密偵伝六役鈴木ヒロミツ(14話~22話) 、北町奉行小笠原能登守泰久役西郷輝彦などがレギュラー出演しました。
『闇を斬る!大江戸犯科帳』は2クール全22話で終了します。この作品で日本テレビでの里見浩太朗主演時代劇シリーズも終わりました。
〇TBS系月曜20時ナショナル劇場『江戸を斬るVII』(1987/1/26~8/17 全30話)『江戸を斬るVIII』(1994/1/31~7/25 全26話)
里見浩太朗は、日本テレビ火曜20時での主演時代劇シリーズ『長七郎江戸日記』(1983/10/18~1986/12/23)が終了し、第2シリーズ(1988/1/5~1989/9/26)が始まる間、C.A.L.が制作するTBS系月曜20時ナショナル劇場『江戸を斬るVII』でこれまでの西郷輝彦に代わり主役遠山金四郎を演じます。
そして、『闇を斬る!大江戸犯科帳』の終了後、再び『江戸を斬るVIII』(1994/1/31~7/25)に主演しました。
〇テレビ朝日系木曜19時『痛快!三匹のご隠居』(1999/10/31~12/16 全9話)
『江戸を斬るVIII』終了後、しばらくの間主演シリーズ作品からは遠ざかっていた里見は、5年後の1999年10月、テレビ朝日系木曜19時の時代劇枠にて6年ぶりの主演作『痛快!三匹のご隠居』に出演します。
企画はテレビ朝日・川田方寿、東映・杉崎保、プロデューサーテレビ朝日・陶山敬、東映・橋本新一、亀岡正人、脚本は野上龍雄、塙五郎、高田宏治他、監督齋藤光正、原田雄一、上杉尚祺、石川一郎、音楽は小六禮次郎が担当します。
旅の途中で悪人を退治して行く三人のご隠居として、浪人関屋勘兵衛役里見浩太朗、元忍者雲隠れの玄夢役谷啓、戦国時代の高名な武将乾三四郎役丹波哲郎が出演しました。
『痛快!三匹のご隠居』は、1クール全9話で終了します。
そして2002年10月、里見浩太朗の代表シリーズの一つとなる作品『水戸黄門 第31部』が始まりました。
〇TBS系月曜20時『水戸黄門』第31部~第43部(2002/10/14~2011/12/12 全9話)
里見浩太朗は、東映で数多くの時代劇のヒットシリーズとともに、数多くの長時間時代劇スペシャルに主演を重ねています。
まさに東映時代劇を代表する大スターでした。
また別の機会に長時間時代劇スペシャルについてご紹介いたします。