150.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」
第26節「フジテレビ日曜9時 東映不思議コメディーシリーズ 中編」
1985年10月、東映東京制作所(制作所)が東映東京撮影所(東撮)に吸収され、東撮第二企画製作部第二企画となりました。
東映不思議コメディーシリーズ第1弾から制作所プロデューサ―だった植田泰治も転属し、担当の第5弾『勝手に!カミタマン』(1985/4/7~1986/3/30 全51話)とともに11月から始まるフジテレビ木曜19時30分枠の南野陽子主演『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』(1985/11/7~1986/10/23 全42話)にも参画します。
この作品は『テレビオバケてれもんじゃ』(1985/1/10~3/28 全11話)の後、4月から斉藤由貴主演でヒットした、制作所の子会社東映映像制作『スケバン刑事』(1985/4/11~10/31 全25話)の第2シリーズでした。
1986年1月、東映不思議コメディーシリーズで「ロボ丸」「ペットントン」「てれもん」などのスーツアクターとして活躍してきた大野剣友会高木政人が、『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』の撮影に向かうためバイクを運転中に自動車と接触、24歳の若さで逝去します。高木は師匠の岡田勝と共に東映不思議コメディ―シリーズを支えた中心スタッフの一人で、この作品でも主人公南野陽子のスタントシーンで吹き替えを行っていました。
3月にテレビ企画営業第一部企画者兼東撮第二企画製作部第二企画スタッフ課長に就任した植田は、第6弾『もりもりぼっくん』(1986/4/6~1986/12/28 全39話)の終了とともに東映不思議コメディーシリーズから離れます。
1987年2月11日、劇場版『スケバン刑事』(橋本以蔵、土屋斗紀雄脚本・田中秀夫監督)が公開されました。
この作品を担当した植田は、4月に東撮開発事業部も兼務します。その後、8月公開『名門!多古西応援団 』(橋本以蔵監督)や12月公開『はいからさんが通る 』(佐藤雅道監督)などの映画企画に取り組んで行きました。
⑦フジテレビ系日曜9時『おもいっきり探偵団 覇悪怒組』(1987/1/11~12/2 全50話)
1987年1月、東映不思議コメディーシリーズ第7弾『おもいっきり探偵団 覇悪怒組』(原作石ノ森章太郎 )が始まります。
この作品では、監督の小林義明がチーフプロデューサーとなり、プロデューサー補だった北崎広実がプロデューサーに昇進、西村政行とともに担当します。
企画は遠藤龍之介・石原隆(フジテレビ)、木村京太郎(読売広告社)、平山亨(東映)が担当、シリーズのテーマをこれまでのロボットや不思議生物から少年探偵団に替え、脚本はメインに江連卓、浦沢義雄はサブとなり、大原清秀、掛札昌裕、中島信昭、辻野正人が書きました。
制作は引き続き東撮第二企画製作部。メイン監督佐伯孚治他、坂本太郎、岡本明久、村山新治、近藤杉雄、辻野正人、撮影林迪雄、利根川曻、大沢信吾、大町進、小野寺修、照明山口利雄、磯山忠雄、小林芳雄、稲葉好治、美術北郷久典、録音川田保、相川比登志、編集水間正勝、音楽は本間勇輔が担当します。
オープニングテーマ「摩天楼のヒーロー」は作詞と歌を大野方栄 、作曲・コーラスアレンジが有澤孝紀 で、エンディングテーマ「少年色のメルヘン」は作詞冬杜花代子、作曲が上田知華 、橋本潮が歌い、両曲とも矢野立美が編曲しました。
主人公はリーダーの黒に銀、青、黄、赤の帽子をかぶる5人の小学5年生。秋野太作が担任の落合先生と怪人摩天郎の声を演じます。シリーズでおなじみの奥村公延、東(あずま)啓子、WAHAHA本舗の柴田理恵も出演しました。
怪人摩天郎にはジャパンアクションクラブ(JAC)の春田純一を起用、大野剣友会の岡田勝がアクションアドバイザーとして取り組みます。
プロデューサーが植田から小林に替わり、路線を変更した東映不思議コメディーシリーズ第7弾『おもいっきり探偵団 覇悪怒組』は、前作の人気を引き継ぎ15.2%という高視聴率をそのまま維持、第49話で最高19.6%を獲得するなど平均15.8%を記録、1年間50話続く大ヒットシリーズとなりました。
⑧フジテレビ系日曜9時『じゃあまん探偵団 魔隣組』(1988/1/10~12/25 全50話)
1988年1月、ヒットした前作の後継番組として同じく少年探偵団をテーマにした第8弾『じゃあまん探偵団 魔隣組』が始まります。
企画はフジ石原、読広木村、東映平山が担当、プロデューサー小林、西村に、東映の1982年大卒採用再開時に入社した日笠淳が加わり、大原清秀をメインに浦沢義雄、掛札昌裕、辻野正人、中嶋信昭が脚本を仕上げました。
東撮第二企画製作部が制作。監督はメイン佐伯孚治に村山新治、坂本太郎、小西通雄、辻野正人、前嶋守男、撮影利根川曻、林迪雄、小野寺修、大沢信吾、照明大須賀国男、稲葉好治、磯山忠雄、山口利雄、小林芳雄、増川弘邦、石川末八、関口弥太郎、上原福松、美術北郷久典、録音相川比登志、郡弘迪、笠原秀樹、曽我薫、小島透、編集水間正勝、音楽は本間勇輔を起用します。
オープニングテーマ「クエスチョンの冒険」、エンディングテーマ「憧れミステリー」は作詞森田由美、作曲松本俊明、編曲京田誠一が作りWaffleが歌いました。
主人公じゃあまん探偵団「魔隣組」は前作と同じ5人の小学5年生で、推理小説家「シャーロックおじさん」役渡辺篤史とともにレッドアクションクラブの前田浩演じる大怪盗ジゴマを追いかけます。
他にシリーズでおなじみの朝比奈尚行、東啓子にWAHAHA本舗の柴田理恵も出演、大野剣友会の岡田勝がアクションアドバイザーを務めました。
14.5%で始まった今作も、第20話で最高視聴率19.6%を獲得と大ヒット。1年間全50話続き平均視聴率14.5%を記録します。
1989年1月1日には『探偵団スペシャル 魔隣組対覇悪怒組 (ジゴマvs魔天郎)』(大原清秀脚本・佐伯孚治監督)が放映されました。
東映不思議コメディーシリーズで「少年探偵団」をテーマにした作品はこのシリーズで終了。次作品からは実写版「魔女っ子」とも言える「美少女シリーズ」が始まります。
また、この作品を最後に数多くの子供向け名作を企画してきた平山亨が嘱託定年を迎え東映を退職しました。
平山は、入社時に京都撮影所に配属され助監督として13年間娯楽時代劇を経験した後、本社テレビ部に異動、そこでテレビプロデューサーとして「仮面ライダーシリーズ」「スーパー戦隊シリーズ」「東映不思議コメディーシリーズ」を立ち上げた他、『仮面の忍者赤影』『キャプテンウルトラ』『ジャイアントロボ』『河童の三平 妖怪大作戦』『柔道一直線』『刑事くん』『超人バロム・1』『変身忍者 嵐』『人造人間キカイダー』『どっこい大作』『がんばれ‼ロボコン』『がんばれ!レッドビッキーズ』『燃えろアタック』などテレビ史に残る名作の数々を企画しました。
平山が残した特撮シリーズは現在も続き、長きにわたり東映を支えています。
2013年7月31日84歳で逝去した平山亨は、まさに「東映特撮の父」でした。
トップ写真:『探偵団スペシャル 魔隣組対覇悪怒組 (ジゴマvs魔天郎)』©石森プロ・東映