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孤独の正体
私は一人でいることが好きな方だ。
小学生くらいの時は、家族旅行で1週間くらい家族といると疲れていた(親だって疲れていたはずなのだが)。「ちょっと一人の時間がほしいの!」とホテルの中を歩いたり、街を散策しに出かけたりしていた。
さて、28才の私がフランスにきたらどうだったか。
渡仏して、すぐに会える友人が劇的に減った(当然ね)。振り返ると、フランスに滞在したうちの8〜9ヶ月はストライキやロックダウンという理由でまともに出かけることすらできなかった。数少ない知り合いにも会いたくても会いに行けない時間が長かった。
私の住む街であるMeudonは、パートナーの地元。彼にとっては友人の繋がりもあるこの土地で、外出禁止令が解かれた後は、地元のバーに飲みに行くことが増えた。私もついて飲みに行くことはあったけど、男がたまった飲みの場は、正直スポーツかギャンブルか、たまに仕事や政治の話(+フランス語)……で、なんかしっくりこない。だから、数回行った後は行きたい時だけ行って、あとはもういいかなと思えてきた。
本来はシンプルに、それで済む事柄のはずなのだけど。
その後に爆誕したのは、飲みに行かないと決めた時の自分に生まれる「強烈な孤独感」だった。
決めたの自分じゃん!と、自分に突っ込んでしまう。数日や1週間とかではない、たった数時間のことなのに。
孤独を耐えきれない時の自分は想像力がものすごく働いて「相方は地元で心を通わせられる友人と、水入らずの時間を過ごしている。なのに私はアパートで彼の帰りを待っている」……という図式を描いては、気持ちよく送り出したいのに送り出した後にすっごく悲しくなって、だからといって夜の街に繰り出すこともできない自分(そんなこと日本でもしないのに笑)の不自由さにも腹立たしくなった。
ああ、エゴと戦っている!っていう醜い自分との葛藤がありました。この瞬間に初めて、私は相手に精神的に依存していることにも気づいた。
そして、なるほど、孤独感ってこう生まれるのかとも実感した。一人でいることに対してというよりは、他の人は充実した楽しいひと時を送っているこの瞬間に、私はひとりぼっちなんだわ、という人との比較と想像力が孤独を生んでいるのだと知った。
そこには、もっと自分よりも長い時間の、深い孤独を抱えながら生きている人は想像できていない。私ってかわいそう、とちょっと自分を主人公に祭り上げちゃっている状態だということをもう片方の自我で分析していた。
孤独って、勝手なものだ。こんな感情にいちいち振り回されたくなーい!と思った。
最初から全く抱かないようにするというのはむずかしかったから、まずはこの孤独を静かに抱きしめようという決断に至りました。セヤナ〜さみしいよね〜と。
そして、それを相方にも伝えました。「わかってるの、自分勝手なのは重々承知です。しかし、こんな感情を抱いてしまうのよ……知っておいてくださいませ」と。伝えるだけで、気ってなかなか済むものです。
それでもやっぱり、たまに辛くなる。
そして面白いぐらい、感情がアウトオブコントロールになることがあって、ある夜は相方の大切にしている酒を飲み干すという暴挙に走ったこともあった(我ながら可愛らしい)。
この制御困難な感じは正直、十代以来で……ああ、まだこんなにも自制心が働かない状態が自分の中にあるんだなと、結構笑えました。
・・・
相方が飲みに行く時のことを挙げたのは一つの例だけど、これからきっといろんな時に、自分が異国にいるんだということをもっと実感するんだろう。
「実家に帰らせていただきます!!」
ということが、私は簡単にできないじゃんと最近ふと思った。
何か、たまらない出来事が起きる→家を出たくなる→日本に帰りたくなる→いや、まず飛行機のチケットを取らねば→できるだけ格安のもので……→なるほど、最速で2、3日後か、となるわけだろう。そして高いのでそんな簡単にそもそも帰れない。
チケットが取れて、飛行機の上についた時には、高ぶった感情も、時間とともにすでに癒てることでしょう。
ああ、現地の友達を作らねば。とある日、本気でそう思いました。
これまでは家族と仕事(そして、母国にいる大切な友人)があればひとまずいいだろうと思ってたけど、絶対的自分の人間関係の大切さを知った。
そして、こんな些細なことで自分の心が度々揺らいでしまうほど、私の中身ってまだ余裕があるんだなとも思った。
孤独を抱きしめると、ものが生まれる。創造できる。最近は、心が揺れるときは何かを作るようになって、落ち着く方法を見つけました。自分の中に帰る場所はあるというか。
私にとってのフランス一年目はそんなことを感じた時間でもあり、学びがありました。
落ち込むこともあるけれど、私、この町が好きです、というキキの言葉が染みる11月です。
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