トイレにいくよ
高校1年生の息子は、トイレにいくとき必ず大きな声で
「トイレにいってくるね~!」
と告げる。
家族が別のことに集中していたりして、応えないと何べんでも大声で云う。
「わかったわかった、行ってきなよ。」
と苦笑まじりに誰かが反応するまで、云い続ける。
そして
「だって、応えてくれたっていいじゃん。」
と、長いトイレタイムのあとブツクサ文句を言うのだ。
幼児は、抱っこに満足し、いつでも甘えられる状況にあると、安心してひとりで遊ぶようになる。どんどん離れても大丈夫になってゆく。しかし、一定時間遊ぶと、ふと思い出したように必ず親の姿をさがす。
ちゃんと、自分を見ていてくれているかを確認するのだ。
そうして親の姿を確認できると、またしばらく夢中で遊ぶ。幼児は、親が見ていてくれていることを意識しながら遊んでいるのだ。
だから、親は決して断りもなく子どもの視界から消えてはいけない。
ふりかえったときに親の姿が見えないと、不安をおぼえ、また親から離れられなくなるからだ。
そうはいっても、親だってトイレには行きたいし用事も済ませたい。
そこで、子どもに
「トイレにいってくるね。」
と、いなくなる理由を、家の中であっても説明する必要があるのだ。
はじめは嫌がる子どもも、すぐに戻ってくる約束をし、キチンと親がそれを守ることを繰り返すうちに、了承してくれるようになる。そして、そういった小さなちいさな約束とそれを守ることが、親子の大きな信頼を積み上げていくことになるのだ。
きっと、その成長過程で息子は考えたのだろう。
そうか、自分がトイレに行くときも家族に知らせておかなくては、と。
今日もまた、息子のトイレのお知らせが家のなかにこだまする。