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だいすきよ
娘が幼いころ、就寝時には絵本を読んでいた。
ずいぶんとたくさんの絵本を読んだが、今、残っているのはお気に入りのものだけ。
そのなかの一冊に
ハンスウィルヘルム 「ずーっとずっと大好きだよ」
がある。
有名な絵本なので、知っている人も多いと思うが、少しだけ。
男の子が生まれたときから一緒に育った犬のエルフィ。
毎日楽しく成長していくなかで、男の子はエルフィが大好きだよといつも伝えていた。もちろん他の家族もエルフィが好きだったが、口にはしていなかった。
犬は、人の7倍のはやさで年をとるという。
先に老いたエルフィが亡くなったとき、家族は悲しみにくれ嘆き続けた。でも、一番仲の良かった男の子は、悲しいけれど、すでに前を向いていた。
そう、彼はエルフィに毎日「大好き」を伝えていたので、エルフィがその気持ちを受け止めて逝ったことを知っていたからだった。
3才の娘が、保育園に送った妻との別れ際に、そしてお迎え行ったとき、ぼくの外出時や寝るときに、
「だいすきよ」
と言葉を添えるようになったのは、あの晩、この絵本を読んでからだった。
娘がくれたことばの素晴らしさに、妻とぼくは感動し、すぐ真似をした。
そうして、娘がはじめた「だいすきよ」は家族の言葉となり、毎日何回でもお互いの心をつたえられるようになった。
娘が大学生、息子が高校生になった今でも、「だいすきよ」は家族のまんなかにある。