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【対談】オックスフォード大学の言語学者「チョ・ジウン」さんー#4. オックスフォードでの経験について

オックスフォード式「勉強感覚」の育て方 頭のよさは10歳までに決まる』の著者「チョ・ジウン」さんと、Xで有名な、教育関連のインフルエンサーであるknockoutさんと行った対談の第2弾です。

対談は、5回に分けて掲載します。
※書籍及び著者のご紹介は以下の#1の記事をご確認ください。
※前回の記事は記事名をクリックすると確認できます。

#1. 10歳までの『勉強感覚』の育て方は? 
#2. おうち英語はなぜ良い?
#3. 未来の教育、そしてアジア
#4. オックスフォードでの経験について←今回はココ
#5. 皆さんへのメッセージ【12月17日(火)公開予定】
参加者:チョ・ジウンさん、knockoutさん、トド英語 朴

※対談は主に韓国語で行われましたが、チョ・ジウンさんの専門分野の説明は英語が多く、英語でも専門用語を記載しています。

それでは「#4. オックスフォードでの経験について」をご覧ください!


ー 「韓国はPISAのような試験では着実に上位の成績を収めるが、大学レベルに到達したとたん、学生の学業成就度は停滞する」と書かれてありました。オックスフォード大学には韓国の学生も入学していると思います。ジウンさんもこのようにお感じになりますでしょうか?また、学生が卒業した後も他国の出身者とくらべて成長が遅い傾向にあると考えますか?(K)

 
これは少し難しい質問ですね。理由としては、オックスフォードで私が韓国の学生について十分に語れるほど、多くの学生に接する機会がなかったからです。ただ、韓国に限らず、アジア出身の学生とヨーロッパやイギリスの学生との違いとして、アジアの学生は入試で全力疾走してきたため、大学では休憩が必要な学生が多い印象を受けます。

 一方、イギリスの学生はこれから走る準備が整っている子が多い印象です。考えてみると、人生というマラソンの観点からすると、どちらの学生もこれから走り続けなければならないわけですが、アジアの学生の場合、もう走り切ったような印象を与えることがあるのは否めませんね。

 また、先行学習をしてきたからといって、必ずしも絶対的に有利というわけではない現象が起こるところも面白いですね。例えばフランス語を勉強する際、ゼロから始める子と先行学習してきた子たちを比較すると、最初は実力に差があるのは確かですが、1〜2年経つと、意外にも同じくらいのレベルに達していることがよくあります。これは面白い現象だなと思います。なぜかというと、先行学習してきた子は学習を進めるうちに疲れてしまう一方、ゼロから始めた子はその間休んでいたため、体力的に余裕があるからです。そのタイミングで頑張り始めると、結果的に同じくらいのレベルに到達するわけです。ですので、これはかなりユニバーサルな現象とも言えるかもしれません。先行学習をしてきた子がそのまま先行学習をやり続けるわけではなく、途中で必ず「休むフェーズ」が訪れるのではないでしょうか。そうすることで、最終的にバランスが取れるのだと思います。

ー 私の子どもはイギリスで受験をしましたが、イギリスの場合、受験がある中でもスポーツなどのアクティビティを止めずに、最後まで続けられるところに驚きました。それに関して、イギリスの保護者さんたちは焦りを感じることがあるのでしょうか?(K)

 私も昔、学校に通っていた時、高校3年生の時には美術も音楽も体育もなく、勉強だけをしていました。ただ、ここで「勉強」とは何かを区分けすることが重要だと思います。勉強には、頭を使ってするものもありますが、それだけではなく、頭だけでなく体全体で学ぶことも勉強に含まれると考えています。例えば、アートやスポーツ、趣味活動などは、単に知識を得るだけではなく、体験を通じて「生きる力」を学ぶことに繋がります。このように考えると、入試でアートやスポーツを排除してしまうのは、分析的な勉強に偏りすぎた考え方だと思います。

 ただ、だからと言って、イギリスの子どもたちが入試のストレスから完全に解放されているわけではありません。もちろん、彼らも勉強しながらストレスを感じることはあります。しかし、イギリスの学校では、アートやスポーツ、音楽といったエキストラカリキュラムが最後まで続けられる環境が整っています。
 
 その理由として、勉強に対するアプローチが異なるからだと感じます。イギリスでは、勉強が単なる分析的な学びの一部に過ぎないと考え、勉強は長期的な視野で捉えています。私たちの人生は入試を経て大学に行って終わりではありません。そのため、10代という人格形成が重要な時期に、勉強のために他の活動を犠牲にさせるのは韓国などの教育文化に見られますが、イギリスでは勉強や学習の一部として捉えられています。個人的には、そのような考え方が良いと思っています。その結果、イギリスでは、子どもたちが10代のうちに勉強でストレスを感じる保護者が比較的少ない傾向にあると思います。

 結局、分析的(analytical)な勉強は勉強のほんの一部に過ぎません。生活の中では、体を使って感覚で学ぶことの方が多いのです。その中で、頭だけを使った勉強に一途になりすぎている風潮は、非常に残念だと思っています。

ー 勉強も趣味も人生の一部としてバランスをとりながら学んでいるイギリスの学生たちは、大学生や社会人になって以降、成長が著しいと感じますか?(K)

 これに関する明確な実験はありませんが、私の個人的な経験に基づいた見解としてお話しします。韓国の学生たちは、どこか大人しい印象を受けることが多いです。「大人しい」とは、分析的な勉強に偏った生活をしているという意味です。韓国の学生たちは、勉強の方法が比較的一方向的であり、大学生の段階でも、イギリスの学生に比べると、他者とのコミュニケーションや、会話の内容が異なるように感じます。

 一方、イギリスの方がもっとオープンな世界観を持つ傾向があって、より自分の未来に対する視点が深いように感じます。

ー ノーベル賞受賞者の核心的な力量は「創造力」であり、その創造性が発揮されるためには、他の人とコミュニケーションをとり、協業する力が必要であると書かれていました。オックスフォード大学では、そのような学生を確保するためにどのような審査を行っているのでしょうか?(K)

 インタビューの場だけでは、その学生が協業できるかどうかを見極めるのは難しいです。そのため、オックスフォード大学では、もちろん他の大学でもそうですが、過去の経歴よりも、これから成し遂げられる潜在能力を重視する傾向があります。高校で一生懸命入試に向けて勉強してきた学生が必ずしも大きな成果を上げてきたわけではないので、それを基に判断するのではなく、この学生の勉強感覚や、潜在的な能力、また本当の情熱(genuine passion)があるか、そして最後まで根気よく成し遂げられるかどうかを、さまざまな方法で把握しようとしています。

 そのため、本をたくさん読んだことをアピールし、いろんな理論について知っていると言うのも一つのアプローチですが、それよりも、数は少なくても、それについて深く掘り下げて話せることがより評価されます。

 また、似たようなお話ですが、多くのことを成し遂げたよりも、数少ないことを成し遂げたとしても、その理由をしっかり説明できることの方が重要だと思います。

 協業に関しては、オックスフォード大学でも本当に大切にされています。韓国では学生同士がライバル関係になることが多いようですが、ここでは1位と2位を競うライバル関係よりも、友達として協力し合う関係になることが多いのを見たとき、私はとても嬉しく感じました。

・・・・・・・・・⑤に続く・・・・・・・・・


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