沖縄・与那国島の自然の恵みを活かした新食感の“あざみ麺”誕生秘話。株式会社城建・入稲福了さんインタビュー
一度食べたら感動する、つるつる、もちもち食感の不思議な麺・あざみ麺。その特徴は、与那国島で“栽培された、”イリオモテアザミ”を使うこと。
今回は、その「あざみ麺」を開発した、株式会社城建(じょうけん)の代表取締役社長・入稲福了(いりいなふく さとる)さんにお話をうかがってきました!
――こちら城建さんは、本業は建築・設計などを行う会社ですよね・・・!?(社内を見渡して見ても)全く“あざみ麺”感がないのですが、こちらのお仕事とあざみ麺の開発が、どのように繋がっているのでしょうか?
入稲福さん(以下、入稲福):10年ほど前から、仕事の関係で生まれ故郷である与那国島を訪れる機会が増えました。その中で、高齢の両親が農業から離れ、田畑が「休耕農地」化していることに頭を悩ませていました。
そんなとき、30年ほど前に、妻のおじに当たる方が話していた「あざみは最高だよー」という言葉をふと思い出したのです。
あざみはその効能・効果から、島の人達は昔から根っこを煎じて飲んだり、きんぴらごぼうのように料理して食べたりと、“医食同源(※)”の素材として普段使いされてきました。
ーーお仕事で訪れた故郷・与那国島の現状と、その与那国に自生するあざみに目をつけて、このあざみを使ったプロジェクトが始まっていくわけですね。元々は島に自生している植物ですが、商品に使われているあざみは栽培されているとか?
入稲福:あざみは元々海岸に自生していて、昔の人は「浜ごぼう」とも呼んでいました。しかし、海の砂を想像してもらうとわかる通り、土に栄養が無いために、根が太くならないのです。
そこで、試行錯誤し畑での栽培をしているのですが、土作り・栽培方法で特に気を遣ったのが、化学肥料や農薬等は使わない、あるいは、使っても極力少なくする、ということです。
ーー普段は那覇でお仕事をされていると思うのですが、与那国のあざみ畑はどなたか島の方が管理されているのですか?
入稲福:いいえ、管理は私が1人で行っています。月に1度、4〜5日ほど与那国へ行き、畑の管理を行います。そのほとんどは除草作業です。畑全体は6000㎡あり、そのうち現在は2000㎡に作付けしてあり、この除草作業をすべて手作業で行っています。というのも、あざみ自体には害虫はつかないのですが、雑草が生えると、どうしても虫がついてしまうので、丁寧に手作業で除草し、あざみの品質を管理しています。
ーーこの広さを手作業で…!それは時間がかかりますね…。それでも毎日の手入れが必要なく育てられるあざみ。地元の方もやってみたい!と思っている方も多いのではないですか?
入稲福:初めたばかりの頃は、島中に自生するあざみをわざわざ畑で栽培するなんて変わっている、と笑われることも多かったです。それでも、徐々にあざみ栽培の理解者も増えてきて楽しさを感じられるようになりました。それでも、あざみはとげが鋭いので扱いが大変で…。自分もやろう!という方はなかなか見つからないですね。後継者の育成が課題です。
ーーさて、そんな試行錯誤の中、栽培されたあざみですが、どのように商品化されていったのでしょうか?
入稲福:当初はあざみの根だけを収穫することを考えていたのですが、島で「長命草」を手掛けていた方に、葉・茎も収穫してお茶の原料として使えるとアドバイスを貰い、島内で洗浄〜乾燥、本島で焙煎・加工し、今から7年程前に「西薊茶(あざみちゃ)」が完成しました。
ーー与那国で既にひとつの大きなビジネスとして成り立っていた「長命草」をヒントに、まずはお茶の商品化・販売から開始したのですね。そこから次の商品が“麺”だったのはなぜですか?
入稲福:これも長命草にヒントを得たのがきっかけです。長命草は、お茶のほか、長命草入りのちんすこうなどのお菓子が販売され、その中で乾麺のラインナップもあり、あざみの活用方法として次に思いついたのが麺でした。
とはいっても、ツテがあるわけでもなく、飛び込みで何箇所か製麺所を回ったのですが上手くいかず、那覇の商工会議所に相談したことで、現在の製麺所に出会うことが出来ました。与那原の個人でされている製麺所で、元々は福岡でうどんを作っていた職人さんです。その方が、「あざみを使うならば、製造方法は任せてほしい」ということで一任したところ、完成したのが現在のもっちもち、ツルツル食感のあざみ麺なのです。
ーー元々はうどんの職人さんが作っているのですね!それも関係しているのかもしれないですが、かんすい不使用で、あのつるつる・もちもちはほんとうに感動します。言える範囲で結構なので、あの食感の秘密を教えて頂けますか…!?
入稲福:ひとつ言えるとしたら、あざみの根っこを麺に練り込んでいるのですが、これがデンプン質なので、食感に影響していると思います。
ーー“うどん職人”と“あざみの根っこ”が出会ったことで、あの感動食感を生み出していたのですね!材料としては、イリオモテアザミと、小麦粉と、塩のみ、なんですよね?
入稲福:塩も与那国産のものを使っています。こういった素材を育むこの環境に感謝ですね。
ーーこうして誕生したあざみ麺ですが、販売までには、またご苦労もあったようですね。
入稲福:これまでの島の産業を見ていて、1次産業(生産)、2次産業(加工)までは出来ても、3次産業(販売・サービス)までを包括的に担う、いわゆる6次化産業にまで成長させないと、ビジネスの継続は難しいと考えていました。そこで、与那国島内の飲食店を営業して周り、「与那国でしか食べられない麺」ということで観光客の方に向けたメニューを開発してもらったり、公的な補助金を活用したインターネット通販を開始したりするなど、本土の方を意識した販路開拓に取り組みました。
ーーその努力も実り、今ではすっかり与那国を代表する特産品になっているのではないでしょうか?
入稲福:どうですかね(笑)。ただ、地元食材として、与那国島の学校給食では年に数回、あざみ麺のざるそば風が提供され、地産地消が進んでいます。
ーー給食であざみ麺が食べられるなんて羨ましい・・・!ざるそば風は私も好きなのですが、入稲福さんがおすすめする食べ方があれば教えて下さい。
入稲福:キムチまぜそばが美味しいですよ。茹でたあざみ麺の上にキムチをのせるだけでとっても簡単です。
ーーそれでは、最後に、まだあざみ麺を召し上がったことがない方へなにかメッセージがあればお願います!
入稲福:健康になりたければぜひあざみ麺を食べてみてください!!
ーーアイディアと行動力に溢れ、まさに健康的な入稲福さんのメッセージ、とっても説得力がありますね!貴重なお話、ありがとうございました!
〜番外編〜あざみ麺を食べに行こう♪
インタビューの中で、沖縄本島内でもあざみ麺をいただける飲食店をいくつか紹介して頂きました。
1.ラーメンランド開南店(那覇市桶川)
那覇市の「のうれんプラザ」内のラーメンランドでは、既存のメニューの麺をあざみ麺に変更して提供していただけます。しかし、店主のおすすめは、メニューにはない「あんかけ麺」。具沢山のとろっとろあんに、もちもちあざみ麺が絡みつき絶品です!ただし、あざみ麺の提供は裏メニューなので、お店の方に「誰から聞いたの?」と言われたら「入稲福さんのインタビュー記事を読んで来ました!」と言えば、おそらく出してもらえると思います(笑)。
2.カジュアル洋食 ア・ドゥマン(那覇市首里)
那覇市首里にあるア・ドゥマンでは、週替りのランチコースで、あざみ麺のパスタセット1300円(税込)か、ディナーメニューの単品メニューで、あざみ麺のパスタ850円(税込)を楽しむことができます。駐車場が限られているので、車で来店時には要確認を。
3.カフェレスト エバーロイヤル(豊見城市与根)
豊見城市のエバーロイヤルでは、あざみ麺の焼きそばなどが味わえます!他のメニューも豊富なので、家族や友人と行きやすそうですね。
その他、那覇市の「小料理 かなや」でもコース料理の最後にあざみ麺が提供されています。また、「JAファーマーズ東浜店」では、西薊茶(あざみちゃ)をお買い求め頂けます。
あざみ麺が気になった方は、まず飲食店でそのおいしさを確かめてから、TODOQで麺を購入するもの良いかもしれないですね。とにかくアレンジが無限大なので、あれこれ試してみて楽しんでみてくださいね!