ネタバレ全開!シン・ゴジラの謎を解く
この記事は、かれこれ7年も前に下書きしたものだ。
その後、シンゴジラの前日譚2次創作小説を書くことを思いつき、ネタバレになるこの考察記事をお蔵入りさせてしまった。が、小説を書くことへの関心がそれ以上高まることはなく、また記事も結局、公開のタイミングを逸していた。
というわけで、今回「ゴジラ-1.0」公開にあわせてどさくさ紛れの公開となったわけである。
公開から7年が経ちすでに数多くの考察が世に出ていることから、それほどの新規性はないとは思う。しかし、以下の目次にある①牧五郎の行方、②人型の謎、③牧五郎とゴジラの怒りについては、当時発表していれば、かなり革新的な考察だったはずと自負している。
また④については、本日かなりの加筆を行ったことを付け加えておきたい。
では、早速いつもの口上からはじめよう。
見た目は中年童貞、精神(こころ)は園児。迷探偵トドナン君の考察!楽しんでいってやー!!!
謎① 牧五郎博士はどこに消えたのか?
映画の冒頭で、東京湾を漂流中の無人ボートが見つかる。そこにはいくつかの遺品と思しき品と、揃えられた靴がおいてあった。
海上保安庁職員がこの漂流船を調査している最中、突然、船の真下から水蒸気の噴出が始まり巨大不明生物の胎動が始まる、、、というのが冒頭のシーンだ。
そして、恐らく漂流船に最後に乗っていた人物であり、ゴジラの正体を知る牧五郎博士が消息不明のまま物語は終結する。
牧博士は、いったいどこに姿を隠したのか。ゴジラの襲撃をどこかで見守っていたのだろうか。
そんな疑問が観客の脳裏によぎったはずだ。
結論から書こう。
「牧五郎は死んでいる。より正確に言えば、ゴジラに取り込まれている。あるいは、ゴジラと融合した」
ゴジラは、元々、牧五郎博士が発見した放射線性物質をエサとするバクテリアのような海洋生物だったことが、作中でも示唆されていた。
劇中のゴジラは、それだけではなく、他の生物の遺伝子を取り込むことで、自己の進化を進める生物だったのではないか。
その証拠がいくつか存在する。
まず、第一にその形態だ。
ポスターを観て欲しい。これまでの歴代ゴジラは、もっぱらティラノサウルスのような顔をベースに、人間的な意思を持った表情をしていた。
しかし、このシン・ゴジラはまるで顔が異なっていた。歯の多さを除けば、その顔は、まさにヘビだ。目には表情、感情を読み取れる要素はなく、体に比して極端に小さい、丸い眼球がそこにあるだけであった。
また、レーザーを吐き出すときに下顎が割れるという衝撃的なシーンが登場したが、この下顎が左右に割れるという骨格は、ヘビ類の特徴である。
要するにゴジラ(第四形態)の頭部はヘビの特徴を備えているのだ。
これだけではない。
ゴジラは、自衛隊からの攻撃を受けたとき、あるいは自らが攻撃のために口をあけたとき目を閉じた。
これは、サメの特徴である。
第3形態がラブカという深海性のサメの一種に極めて近いことも証左として挙げられるだろう。あの乱杭歯は、ミツクリザメを彷彿とさせるところもある。
また、人類の8倍もの遺伝子を持つ、というのもこの説の裏づけになっているかもしれない。要するに、それほど多くの生物の遺伝子を取り込んでいる、ということだ。
蛇足であるが、現実世界の科学の視点からすれば、作中にあった「人間の8倍の遺伝子情報を持つ、地球上でもっとも進化した存在」というセリフは正確ではない。遺伝子情報が染色体数とすれば、アメリカザリガニでさえヒトの約4倍。地球上でもっとも染色体数の多い生物はチョウの一種で、その数はヒトの8倍以上である。また、遺伝子情報をゲノムとするならば、ハイギョの中にはヒトの35倍のゲノムを持つものも存在する。
本題に戻ろう。
牧博士は、おそらくゴジラの元となった生物、放射性廃棄物を栄養としていた古代の生物が、他の生物の遺伝子を取り込むことで進化していることに気がついたに違いない。
もしかすると牧博士自身が、研究室で様々な生物をこの謎の生物に取り込ませていた可能性すらある。海底にいた生物が、サメの遺伝子はともかく、陸生のヘビの遺伝子を持っていたというのは明らかに人為的な操作によるものではないか。
牧博士は、人間に対して、放射性物質に対して、いくつもの複雑な感情を持っていた。
一つは、妻を殺すことになった放射性物質、それを作り出した人類への激しい憎悪。
そしてもう一つは、妻を失うことになったからこそ、その原因となった放射性物質を無害化したいという正義感。
さらに、この生物を自国の利益のために利用しようとする連中への憎悪。
これらの相反する感情が博士の中で渦巻き、どうしようもないレベルに到達したとき、牧博士は、決断した。
東京湾にその生物を放つことを。
そして、その生物に、ヒトの、自分の遺伝子を取り込ませるという決断を。
その生物を東京湾のあの場所に放ったあと、そこに飛び込んだのか、自分にその生物を取り込んだあとあの場所に身を投げたのかはわからない。しかし、あの場所で牧五郎は、その生物と融合してゴジラを産み出したのだ。
どうなるかは、神のみぞ知る、、、神すら分からないかもしれない。しかし、好きにする。結果は、なるようにしかならない。
それが「私は好きにした。お前たちも好きにしろ」という一言であったのではないだろうか。
その生物は、放射性物質を撒き散らしながら、人類を蹂躙するに違いない。一方で、その体内には、放射性物質を無害化するメカニズムも存在していた。このメカニズムに気がつき、解明すれば、それは人類にとっての最大の福音にもなりうる。
この大いなる矛盾こそが、牧博士の葛藤そのものなのだろう。
このように考えれば、続いての謎の答えもおのずと明らかになるはずだ。
謎② 尻尾から生み出された人型はなんだったのか?
ゴジラは、凍結しきる直前に尻尾から人型の形態を産み出そうとしていた。
前述のように、ゴジラが、取り込んだ生物の遺伝子を使い、その環境や状況に最適な形状を構成することが出来たとするならば、ゴジラはやはり人の遺伝子を持っていたということになる。
あの人型は、十中八九、牧五郎の遺伝子を発露した形態であったのだろう。
人類のように小型化し、増殖すれば、その驚異はむしろあの第四形態以上だったかもしれない。
謎③ ゴジラの怒り、牧五郎の怒りの謎
作中、ゴジラは怒り狂っている。突然現れ、東京のど真ん中に向かい、日本の中枢を破壊し尽くす。炎を吐き、東京を火の海にするシーンは、私が個人的にもっとも好きなシーンでもある。
ゴジラが自然災害や、街に紛れ込んだ害獣の類いであるならば、こうはならなかったはずだ。
これは、牧五郎の激しい怒りが、ゴジラに引き継がれた結果に違いない。
先にも書いたが、牧五郎の怒りは日本(政府)と、放射能に向けられている。その原因は、もちろん彼の妻を失ったことだ。
放射能で亡くなったことが作中で示唆されているが、それが事故などによるものであれば、その怒りが日本に向かうことはなかっただろう。
作品の時間が2016年で、現実の世界を舞台としているとすれば、牧五郎博士の妻は2011年の福島第一原発の「(政府による)人災」により命を落としたのではないか。
だからこそ、牧五郎博士は怒り狂った訳だ。
ところで、牧五郎の「怒り」は、なぜ遺伝子を与えただけの「ゴジラ」に引き継がれたのだろうか。ファンタジーとしては、「魂」を引き継いだといった解釈で十分なのだろうが、なんとなく釈然としない気分になる方もおられるだろう。なにせ、「記憶や学習は遺伝しない」というのは、学校でも習う科学的常識だからだ。
だが実は近年の研究により、少なくとも線虫やプラナリアの記憶や学習は、RNAを通じて遺伝することが判ってきている。もちろん、遺伝するのは「710年、平城京」「1192年、鎌倉幕府」といった複雑な情報ではなく、「光の中での餌の見つけ方」といった単純なものだが、それでも記憶が遺伝するというのは画期的な発見といえるだろう。
蛇足ついでに話しておくと、記憶はいわゆる脳だけに貯められる訳ではないと私は確信している。そもそも脳は神経の塊であり、全身の神経は脳に繋がっている、というよりも脳の先端が神経なのだ。だから記憶は頭部だけに貯められるのではなく、全身に貯められていると考える方がむしろ自然なのではないか。
ごく稀ではあるが、臓器移植により好みや性格が変わったり、臓器提供者の記憶が引き継がれるという話がある。信憑性についてはかなり怪しいという説もあるものの、もしかするとそれはオカルトな妄想などではなく、臓器部分の神経に貯められた記憶による作用なのかもしれない。
話をもとに戻そう。
そんなわけで、ゴジラには実際に牧五郎の激しい怒りが「遺伝」したのだと考えられるのだ。
謎④ あの長い尻尾はなんだったのか?
シンゴジラの尻尾は、とにかく長い。
先に述べたように、頭の形状、目つき、顎の形態などを見れば、シンゴジラは蛇の遺伝子を取り込んでいるのだと解釈するのが自然だろう。
したがって、あの長い尻尾もまた、ヘビの遺伝子の発露のはずだ。
実はメイキング映像には、シンゴジラが、上半身を起立させながら、脚ではなくヘビのように身体で蛇行しながら進む姿が一瞬ではあるが納められている。
上半身?を直立させたまま移動できるのは、キングコブラに特有の性質であることから、もしかすると、シンゴジラが取り込んだヘビとは、キングコブラだったのかもしれない。
ところで、メタ的にいえば、シンゴジラのモチーフは、日本を代表する悪の蛇、ヤマタノオロチだったといわれている。
ゴジラに血液凝固剤を飲ませ、眠らせて退治する作戦の名前はヤシオリ作戦だったが、ヤマタノオロチを眠らせるためにスサノオノミコトが飲ませた酒の名前は、八塩折之酒(ヤシオリのさけ)であったことは、多くの考察で指摘されている通りである。
かなり古い作品の考察となってしまったが、この記事が読者皆様のゴジラ、シンゴジラへの興味を少しでも掻き立てるものになっていれば、幸いである。
その他の考察は、こちら!
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