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【起業戦略】第13講 競合と市場性
前回は2C(コンシューマー、個人消費者向けビジネス)におけるMUSTとWANTについて話をした。
買う目的がある以上は、絶対に満たさなければいけない条件、機能があるってことだったね。
さて、今回は競合と市場性について話をしておきたい。
競合っていうのは、「似た製品」「似た製品を売る会社」に限らない。
むしろ競合かどうかというのは、「同じ目的」「同じ財布」を取り合うかで判断する。
時々「競合はありません!唯一無二なんです」「全く新しい市場を作り出します」という起業家がいるけど、それは、そこに市場が存在していないということと同じだ。
もちろん、不可能ではないけど、その道は大抵の場合、とてつもなく厳しいことの覚悟は必要になるよ。
例を挙げる。
「鼻の穴を広げる道具」で起業することを考えてみて。
競合は?
いないよね。
でも、そういう市場も存在していない。
つまり「鼻の穴を広げる」という目的で支出している人はいない。
そうすると、「鼻の穴を広げる」ことに価値を見いだして、お金を払うという行動を起こすよう潜在顧客を啓蒙するところからのスタートになる。
それ、途方もない道のりでしょ。
競合がいないというのは、むしろ市場が存在していない、市場が超黎明期ってこと。よく言う「キャズムを乗り越えられるかどうか」以前の問題の場合も多い。
それに挑むのは、ロマンだろうけど地獄のような道のりだということは覚悟しておかないといけない。少なくとも
「競合ゼロ!楽々収益化だぜ!」
とはならないことだけは、理解しておいて欲しい。「スタートアップで体力がないから、競合がいないところを狙う」というのは、むしろ大悪手のことが多い。
実際、世の中のどの市場を見ても(ある程度の規模がある市場を想定してるよ)、ある企業が独占しているなんて状態は起きていないよね。独禁法が効果を発揮しているのは、もちろんだけど、そもそも、一社が独占できるなんてことはあり得ないんだ。
それは2Cでも2Bでも変わらない。
市場を独占できているとすれば、それは市場が極端に小さいとか、限定されているみたいな話で、スケールするビジネスにはなりえない。市場自体も不安定なんじゃないかな。
「この街で唯一のアイスクリーム屋」は、この街のアイスクリーム市場を独占できているといえるかもしれないけど、隣街に店舗を拡大したら独占状態は維持できないだろう。
だから、市場を独占する!みたいな発想は、新規事業企画に不要だし、競合がいる!先行企業がある!みたいなことも別に気にすることじゃあない。
むしろ、ベンチャー、スタートアップはセカンド、サードペンギンの方が、ファーストペンギンより多くの場合、うまくいく。
競合がいるなら、あとは競合よりも上手く戦ったり、勝てるところで勝てばいいんだから。
むしろ、自分達をどう位置付けたら「セカンドペンギン」になるのかを考えた方がいいくらいだ。
「セカンドペンギン」ということは、「ファーストペンギン」が創ってくれた「財布」「予算」「支出」「市場性」みたいなものを取りに行けるってことだからね。
その上で、新しい機能とかで新規性を打ち出せたら最高くらいに考えておけばいいんじゃないかな。
さて、競合と来たら、気になるのは差別化だよね。ということで、次回は差別化について話そうと思います。