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一般労働者の所定内給与増加率が2%を超えたことに注目したい~2023年5月の毎月勤労統計(速報)

 本日(7日)、毎月勤労統計調査の5月速報値が公表されました。日経は相変わらず実質賃金がマイナスだ~と書き続けています。私は、一般労働者の所定内給与(記事では基本給と呼んでいる)の前年同月比比増加率が久しぶりに2%を超えたことに注目したいと思います。

そもそも、一般労働者とパートタイム労働者の違いは

 毎月勤労統計では、賃金などの実績値を一般労働者、パートタイム労働者別に示しています。両者を総合したものが就業形態計です。
 上記の記事では、「正社員など一般労働者」と書いていますが、一般かパートかの区分は労働時間の長さです。いわゆるフルタイムで働いている人が一般労働者であり、短時間で働いている人がパートタイム労働者です。フルタイムだけど派遣で働いている人もいますし、正社員だけど短時間勤務を選択している人もいますよね。一般労働者=正規、パートタイム労働者=非正規、とは限らないことには注意が必要です。

就業形態計の賃金上昇率はパートタイム比率の変化の影響を受ける

 5月の速報値において、一般労働者の所定内給与の前年同月比増加率は2.2%、パートタイム労働者の所定内給与の前年同月比増加率は3.4%。これに対し、就業形態計の所定内給与の前年同月比増加率は1.8%。「一般、パート、それぞれの伸び率より低いのなぜ」と、私も非常勤先の経済統計の講義で質問されたことがあります。この原因はパートタイム比率の上昇です。
 5月速報値で一般労働者の所定内給与は32万3676円、パートタイム労働者のそれは9万8494円です。労働時間の差などを反映し、パートタイム労働者の所定内給与は一般労働者の3分の1程度になります。就業形態計の所定内給与は、パートタイム労働者の割合を用いた、一般とパートの所定内給与の加重平均になり、パート比率の上昇で賃金上昇が小さめに見えるのです(なお、この点は上記の記事のthinkコメントでも指摘されています)。

一般労働者の所定内給与増加率の2%超えは1997年6月以来

 前述の通り、5月の速報値で一般労働者の所定内給与は2.2%増加しました。実は、年平均で一般労働者の所定内給与が2%以上増えたのは1994年が最後です。1994年は1月から10月まで所定内給与は2%以上の増加率でしたが、11月から2%割れ。その後、1996年2月、同年5月、1997年6月に2%超えを果たしたものの、その後はずっと下回っていました。久しぶりの2%超えが今後定着していくか、見守りたいと思います。

パート労働者の所定内給与は時間当たりに注目

 一方、5月のパートタイム労働者の所定内給与増加率は3.4%と一般労働者を大きく上回りました。上記の新聞記事もそう書いています。しかし、これには注意が必要です。
 というのも、パートタイム労働者の所定内給与は、所定内労働時間の変化の影響を受けやすいためです(下図)。仮に時給が同じでも、前年より所定内労働時間が長めのパートタイム労働者が増えると、所定内給与は増えてしまうのです。
 だから、パート労働者の所定内給与は時給で見るのが適切です。
 改めて上図をみると、パートタイム労働者の所定内給与(時間当たり)は、一般労働者の所定内給与の伸びに近くなっています。パートタイム労働者は、人手不足などの環境変化が時給に反映されやすいため、一般労働者の所定内給与が低迷した時も上昇していました。その勢いが一般労働者にいよいよ波及してきたと期待したいところですが、パートの時給の伸びが失速しないかどうかも、引き続き注視していきたいと思います。

#日経COMEMO #NIKKEI

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