パートタイム労働者の時給上昇率が再び拡大~2023年10月の毎月勤労統計
昨日(9日)、毎月勤労統計調査の10月速報値が公表されました。日経夕刊は実質賃金が19ヵ月連続で前年同月比マイナスになっていることを報じています。また、名目賃金の上昇率についても触れられてますが、パートタイム労働者は時給に注目して欲しいですね。
本稿では、一般労働者の所定内給与とパートの所定内時給など名目賃金の内訳を観察していきたいと思います。
一般労働者の所定内給与上昇率、2%に届かず
2023年10月の毎月勤労統計調査では、フルタイムで働いている一般労働者の所定内給与の前年同月比上昇率は1.7%でした。9月の速報では「2ヵ月ぶりに2%に乗せた」と喜んだのですが、9月確報では1.6%へ上昇率が縮小してしまいました(涙)。結果として2023年7月に2%に乗せて以来、2%に届かない状況が続いています。パートタイム労働者の時間当たり所定内給与(時給)上昇率は前年同月比3.8%と前月(3.3%)から上昇しました。なお、労働時間の減少幅が縮小したため(9月:マイナス1.6%→10月:マイナス0.5%)、パートの所定内給与は伸びが拡大(9月:1.7%→10月:3.2%)しています。
就業形態計の賃金上昇率は
注目度が高い就業形態計の現金給与総額の上昇率は、10月は1.5%。9月の0.6%(ただし、速報時は1.2%)から拡大しました。一般労働者が9月の1.2%(速報時は1.6%)から10月は1.6%へ、パートタイム労働者も9月の1.6%(速報時は1.9%)から10月は3.2%へ伸びが拡大しました。パートタイム労働者の上昇率拡大は労働時間減少率の縮小も寄与しています。なお、パートタイム労働者比率が前年同月に比べて上昇しているため、就業形態計の現金給与総額の上昇率は、一般、パートタイムそれぞれの伸び率を引き続き下回っています。
一般労働者の賃金上昇率、10月は拡大
一般労働者に限定する形で、現金給与総額、定期給与、所定内給与の動向も観察してみましょう。10月までの状況は下図の通りです。
定期給与は、所定内給与に残業代を加えたものです。所定内給与上昇率を上回る月が多かったですが、今年に入って両者の差はほぼなくなってきてましたが、10月は所定内給与が1.7%、決まって支給する給与が1.6%でした。
現金給与総額は、定期給与に特別給与(ボーナス)を加えたものです。6月から9月にかけて現金給与総額の上昇率は2.9%→1.8%→1.2%→1.2%と推移し、10月は1.6%と上昇しました。ただし、9月は速報時点では1.6%で、先月のnoteで「反転上昇」と書いてました。確報での下方修正も注意してみておきたいですね。
共通事業所ベースの一般労働者の所定内給与の伸びは2%台
最後に、前年同月も当月も調査対象となった事業所(共通事業所)のみを集計した結果も確認してみましょう。毎月勤労統計は全数調査ではないので、前年同月と当月の調査対象の違い(サンプル替え)の影響をどうしても受けてしまいます。共通事業所に注目することで、その影響を取り除くのが狙いです(ただし、サンプル数が少なくなるという問題はありますが)。
下図の青い線が全サンプルを用いて算出している一般労働者の所定内給与上昇率、オレンジ色が共通事業所に限ったものです。オレンジ色の線の方がぶれずにじわじわと上昇率を高めている姿がわかります。2023年10月の上昇率は2.0%と、9月に続いて2%台を維持しました。
ちなみに、共通事業所ベースでの一般労働者の2023年10月の現金給与総額は2.5%上昇。全サンプルを用いた1.6%上昇より0.9ポイント高くなっています。さらに共通事業所ベースでの就業形態計の2023年10月の現金給与総額は2.6%上昇。全サンプルを用いた1.5%上昇より1.1ポイント高いです。
共通事業所ベースのデータをみる限り、賃金上昇率の実勢はもう少し高いかもしれないですね。今後の推移に期待したいと思います。