手紙

 貴方への手紙を書くのは初めてですね。そもそも私は手紙を書くこと自体得意ではないのと、手紙での想いの伝達をあまり好んでいないので、貴方も少々驚いていることだと思います。今日手紙を書いたのは、特に理由などは無くて、「ただ貴方に言葉を届けたかったから」、「手紙を書きたかったから」、「あなたは手紙を書いていてくれたから」といったところでしょうか。

 近頃はいかがお過ごしですか?旅はしていますか?私は貴方の旅先での写真を見るのがとても好きです。今まで伝えたことはきっと無かっただろうけど、こっそりと楽しみにしているのです。アーティステックな写真から、ノスタルジーを感じる写真、ラブリーな写真、夢のように浮かんだ写真まで。「そんな写真を撮った覚えはないんだけどな」とあなたは言うでしょうが、私の目にはそう映ったので仕方がありません。

 私はいつか貴方とお酒を酌み交わしたいのです。きっと面白く楽しいひとときが過ごせると思うのです。これは勘だけど、そんな気がするのです。まだ飲めるような歳ではお互いありませんが、来年には叶えたいです。これは私の小さな夢です。しかし、誘い方が分からない。きっと貴方は「普通に誘えばいいじゃん」なんて言うでしょうが、それがなによりも難しいのでございます。私はあなたに嫌われたくないのです。なんて自意識過剰なんでしょう。「変なの」なんて思うことでしょうが、不器用なもので。許してください。



 これよりも前の文章はちょうど一年も前に書き終えたものです。一年もの間、この手紙を眠らせてしまっていました。申し訳がない。億劫になってしまったのです。なによりこの拙い文章があなたのもとに届いていてしまうのが、恥ずかしくなってしまったのです。やはり言葉は直接音で伝えたいものです。残ってしまうものは恥ずかしくていけない。下手なことは書けませんし、うっかり想いを伝えてしまえば、もうそれは取り返しがつきません。音として存在する言葉でも変わらないことですが、目の前で散ってしまうものと何度も振り返ることができる描かれたものとでは、それはもう大きな違いです。

 もうお互いお酒も飲める歳になりましたね。
 会って言葉を交わしたいです。ただそれだけでいいのです。
 夏に会いましょう。


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