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【読書記録】失敗の科学

参考になった本についてまとめる。個人的な抜粋と感想です。


マシュー・サイドさんが書かれた失敗を科学した本です。
要するに
「成長型マインドセットを持ち、失敗を前提とした仮説検証を成功するまで繰り返すしかない」
以上。って感じです。

前半(1~5章)は失敗の事例とその要因について考察し、失敗に対するアンチパターンを紹介してくれます。物語になっているのでサクサクと読めます。

後半(6章と終章)は前半を踏まえながら、成長のためには失敗を活用する以外の選択肢がないこと、それを実現するためのいくつかの仕組みについて教えてくれます。

第1章:失敗のマネジメント

予期せぬ失敗が発生した時の人間の反応がわかる事例をあげ、「完璧な集中」が逆に事故を引き起こす可能性や、全ての決定や状況が「仮説」に過ぎないという観点での失敗のマネジメント方法について書かれている。
医療業界と航空業界の失敗への取り組み方を比較し、失敗を受け入れ、それから学ぶためのマインドセットを養うことの重要性を強調している。

クローズド・ループ:
失敗や欠陥にかかわる情報が放置されたり曲解されたりして、進歩につながらない現象や状態。

科学は通説に異議を唱え、さまざまな仮説を検証して、進歩を遂げてき
た。・・・科学理論には誤りがあったり不完全であったりすることが多いと認識している。

『科学の進め方』とは、まさに『失敗から学ぶこと』そのものである、という主張に非常に共感しました。博士課程に進んで良かったと思うことの一つは、失敗を前提とした仮説検証の手法や考え方を学べたことです。特に自分の所属していたラボは、仮説が外れることを歓迎している雰囲気でした。一方で、会社で働いていて感じるのは、失敗に対する受容性が低い人が多いということです。文化の違いってのを身をもって感じています。

第2章:人はウソを隠すのではなく信じ込む

人がどのようにして自分の誤った信念や認識を正当化し、それらに固執するか。具体的には、人々が努力や熱心な取り組みによって自らの判断能力を鈍らせる傾向、および過去の出来事や体験を事後的にどのように編集し、解釈するかに焦点を当てている。人間がウソを意図的に隠すよりも、不正確な情報や誤った信念を無意識に信じ込んでしまう心理的傾向について書かれている。

自分の判断は賢明だったとひたすら信じ、それに反する事実を突き付けられると自己弁護に走る。認知的不協和の影響で目の前が見えず、最も失敗から学ぶことができていないのは、最も失うものが多いトップの人間なのだ。

批判的なものの見方を忘れると、自分が見つけたいものしか見つからない。自分がほしいものだけを探し、それを見つけて確証だととらえ、持論を脅かすものからは目をそむける。このやり方なら、誤った仮説にも都合のいい証拠をなんなく集めることができる。

外発的な動機(評価や賞罰など)だけではなく、内発的な動機(バイアスや自尊心など)も立場があると大きくなるのは容易に想像できますね。周りにもいるような・・・。なので、個人ではなく組織で対応しないとですね。

第3章:「単純化の罠」から脱出せよ

複雑な問題に対するアプローチとしての「単純化」の危険性について書かれている。「物語」や単純な解釈はひたすら考え抜けば最適解を得られるという誤解と失敗への恐怖も相まって検証を避ける。章の中で、複雑な問題に対してより多角的かつ深い理解を持つためのアプローチの一つとして、RCTが提案されている。

累積淘汰(累積的選択):
適応の積み重ねのメカニズム。進化生物学者リチャード・ドーキンス「盲目の時計職人」
頭を使って考えた仮説を検証しつつ、実践で失敗や選択を繰り返して学びながら、戦略の方向性を見極める。
「信念を貫く勇気」と「進んで自分を試して成長し続けようとする謙虚さ」

これですね。心に刻みたいと思います。

第4章:難問はまず切り刻め

複雑で難しい問題に対処するアプローチとして、それらをより小さく、扱いやすい部分に分割する方法について書かれている。大きな問題を一度に解決しようとする代わりに、それをより小さなステップやセグメントに分けることの利点をあげ、小さな成功を積み重ねることで最終的な大きな目標に到達する方法についても論じている。

マージナル・ゲイン:
小さな改善の積み重ね。あらゆる小さな失敗を経験し、その都度新たな戦略を練り、厳密に検証するというプロセスを繰り返し、大きな成功に辿り着く。

マージナル・ゲインで例として大食いの小林さんが出てきて驚きました。フードファイターも試行錯誤なんですね。

第5章:「犯人探し」バイアス

失敗や問題が発生した際の人々の「犯人探し」の傾向について書かれている。人々が失敗の原因を外部に求めがちであること、誰かを非難することで物事を過度に単純化し、自己を守ろうとする心理的プロセスに焦点を当てている。組織内での非難の文化を乗り越え、より建設的な学習と成長のためのアプローチとしてシステマティックな分析が必要であると主張している。

根本的な帰属の誤り:
一番単純で一番直感的な結論を出す傾向。

真の無知とは、知識の欠如ではない。学習の拒絶である。

一生懸命説明した後、プロジェクトメンバーに「わたし頭悪いからわからないです。」って言われた時の絶望感を思い出しました。『無知』な人と仕事はやりにくいですね。プライベートだとそういうタイプは結構好きなんですが・・・笑。

第6章:究極の成果をもたらすマインドセット

能力は固定されているものではなく、努力と学習を通じて発展させることができるという考え方(固定型マインドセット vs 成長型マインセット)について説明している。人々は挑戦に対してより前向きな姿勢を持ち、失敗を経験と見なし、失敗からの学習と成長を促進することができるマインドセットについて論じられている。

固定型マインドセット:
生まれつき才能や知性に恵まれた人が成功すると考え、失敗を「自分に才能がない証拠」と受け止める。
成長型マインドセット:
知性も才能も努力によって伸びると考え、失敗を「自分の力を伸ばす上で欠かせないもの」と自然に受け止める。

この章では、他にもGRIT(やり抜く力)、「合理的な」あきらめ、機会志向(機会があればどんどんチャレンジする)など新出単語が目白押しで知的欲求がかなり満たされました。

終章:失敗と人類の進化

失敗が人類の進化と成長において果たす重要な役割について書かれている。失敗は、単なる逆境や厄介な障害としてではなく、革新や発見の触媒となってきた。失敗から得られる教訓が個人や組織の発展にどのように貢献するかについて論じている。

無謬(むびゅう)主義:
自分たちの思想に間違いはないという考え

マージナル・ゲイン、リーン・スタートアップ、RCT、事前検死・・・。状況に応じて活用し、成長型マインドセットを持ち続ければ、どこまでも可能性が広がる進化のプロセスを力強く歩んでいけるだろう。

定期的に、以下の質問に答えていただきたいです。

  • あなたは判断を間違えることはありますか?

  • 自分が間違った方向に進んでいることを知る手段はありますか?

  • 客観的なデータを参照して、自分の判断の是非を問う機会はありますか?

自信を持って全てに「はい」と答えることはできるでしょうか?
意識しておかないと成長の歯車が回っていない状態に陥っているかもしれません。

失敗は成功のもと。
この言葉の意味を丁寧に教えてくれる本でした。

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