レポ58:三池港灯台(2020/8/15)
世界文化遺産の構成資産である福岡県大牟田市の三池港。熊本県荒尾市との県境にあり、かつての炭鉱の町の前面には有明海を臨む港湾が広がり、その山の頂上付近には長らく港を見守る灯台が鎮座していました。
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年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台病の記者が灯台訪問の魅力などをお伝えする『全国の灯台巡礼レポ』。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う地元の方々にも参考にして頂ければ幸いです。
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◼️レポ58:三池港灯台(2020/8/15)
福岡県最南端の大牟田(おおむた)市。この町は隣接する熊本県荒尾(あらお)市との結びつきが極めて強い。その理由には、三池(みいけ)炭鉱および三池港の存在が大きく影響しており、これらは『明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業』として2015年に世界文化遺産に登録されています。
その構成資産である三池港は、福岡県に2港ある「重要港湾」の一つに指定されています。そのため、重要港湾指定とともにその整備として建てられたのが、今回訪問する三池港灯台です。
三池港灯台を訪問したのは、明け方の頃。灯台が設置されているのは三池港のある福岡県大牟田市ではなく、ほんの数百m熊本県に入ったところにある「四山(よつやま)神社」の境内にある「四ツ山公園」です。
四ツ山公園には自動車でも灯台のすぐそばまで登ることが可能なのですが、今回は山のふもとの駐車場に置いて歩いて登ることにします。遠く東の空が白んできました。
頂上の「四山神社」まではものの15分ほどで到着します。登る途中の街並みがマジックアワーに彩られ非常に美しいです。
「四山神社」の中を通り抜けると、すぐに公園があり、ほどなくして灯台が見えてきます。紺青色の空と大きく立派な灯光が映えます。
公園ということだけあって、周囲は遊歩道のようにもなっており灯台を色んなアングルから眺めることができます。そんなこんなで、夜空もすっかり明けてきて、三池港灯台の全容が見えてきました。塔高15mの立派な灯台です。
灯火標高66mの灯台は初点灯が1951年(昭和26年)12月ですので、港湾法制定に伴い三池港が「重要港湾」に指定された時に産声を上げたと思われます。1908年(明治41年)に三池炭鉱の石炭積出港として開港された三池港の近代産業化を陰ながら支えてきた歴史ある灯台です。
そんな灯台のある山頂では、晴れた日には眼前に長崎県の雲仙岳がお目見えします。また、有明海東部は「荒尾干潟」と呼ばれる日本有数の干潟地域(ラムサール条約登録地)が広がっており、見晴らしも良く、朝の散歩に訪れる人たちも多かったです。春には公園内の桜も美しいのだとか。
ちなみに来るときに来た道は裏参道だったようで、山の南側の表参道には立派な鳥居がありました。チョコンと三池港灯台も頭を出していますね。
その表参道から境内への道中には300段の階段があり、ここを登るのもなかなかヘビーです。
三池港からは随分と距離が遠く、四ツ山自体が三池港の南部に位置しています。それもそのはずで、三池港は有明海に面していますので、出入りする船舶は基本的に港の南部側を行き来するのです。
三池港灯台はその往来する船舶の玄関灯ですから、港の中心というより入口付近の南部に位置している、という訳ですね。そのため灯台は熊本県側寄りに設置されている、というのも灯台ならではのエピソードで面白いですね。
なお、「四山神社」は肥後藩主の加藤清正(かとうきよまさ)によって再建された歴史を持ち、虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)が降臨したとされる古墳に創建された由緒ある神社です。灯台と併せて参拝されてもいいかもしれません。
村上 記
年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台を訪れる魅力などをお伝えするプロジェクト。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う方々の想いを大事にしていきたいです。