レポ69:関埼灯台(2020/11/1)※一般公開
太平洋と瀬戸内海を分かつ豊予(ほうよ)海峡を見守る関埼灯台。「海と灯台ウィーク」の一般公開日に、大分県最古の明治期灯台を訪れました。
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年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台病の記者が灯台訪問の魅力などをお伝えする『全国の灯台巡礼レポ』。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、自身の原風景を護りたいと願う地元の方々にも参考にして頂ければ幸いです。
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◼️レポ69:関埼灯台(2020/11/1)※一般公開
11月1日は「灯台記念日」です。
日本初の洋式灯台である観音埼灯台の起工日がこの日であったことから制定されています。
毎年、灯台記念日には海上保安庁による灯台特別一般公開が行われ、普段入れない灯台内部に入れます。
2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響でイベント開催自体が中止・縮小もありましたが、一部の灯台で一般公開されました。
そこで今回は大分県佐賀関半島にある関埼灯台の一般公開イベントに参加することにしました。
関埼灯台には「関崎海星館」の裏手から歩いて辿り着くことができます(別ルートとして、少し離れた場所から山道を通るルートもあります)。
海星館には1918年から2009年まで関埼灯台で使用されていた第4等フレネルレンズが展示されています。このレンズは1870年にイギリスで製造され、29km先まで光を届けることができていたとのこと(電球が2つあるのは切れた時に自動交換するためだそうです)。
海星館から裏手の庭園に出ると、瀬戸内海と太平洋を分かつ豊予(ほうよ)海峡が一望できます。
豊予海峡は「速吸瀬戸(はやすいのせと)」とも呼ばれる急潮流地域で、昔から航海の難所でした。さらに明治後期の日露戦争等を背景に関埼灯台が設置されました(関埼に続き、姫島、水ノ子島灯台が建設)。
そんな航海の難所を明治の頃より見守り続けているのが関埼灯台です。建設当時は道路など全く整備されていなかったため、眼下の海岸から資材を全て人力で担ぎ上げての大工事でした。
2020年は11月1日から8日までの間を「海と灯台ウィーク」と称し、様々な灯台関連イベントを開催しています。
参考:「海と灯台ウィーク」
関埼灯台の一般公開もその一環ですし、今回は関崎海星館と関埼灯台を訪問することで記念バッジを入手することができます。
関埼灯台は大分県では最古の洋式灯台です。
初点灯は明治34年(1901年)7月20日。明治期灯台の中でも少数派の鉄造りです。
早速灯台内部に入ってみます。
まず目についたのは年季の入った書棚。中には海上保安庁の周年史や灯台の記念史などが蔵書されています。とても興味深い。
かつての関埼灯台の銘板でしょうか。とても達筆で美しい書体です。脇には航路標識事務所の看板も展示されています。
点灯当初は灯台管理のための職員が灯台前の広場にある事務所と宿舎で生活していましたが、昭和45年(1970年)に関埼・姫島・安岐埼を統合し佐賀関航路標識事務所が発足(関埼灯台は無人化)。
佐賀関航路標識事務所も平成5年(1993年)に、別府の大分航路標識事務所に集約管理されることとなりました。
今回、特に興味深かったのが「燈臺参観心得」という板です。昔から灯台参観事業というのはあったんですね。
かすれて読みづらいですが、要するに「この時間帯、こんな人なら灯台の参観をしても良いよ」ということが書かれていました。一番左に「燈臺局」という名称が書いているので、海上保安部の職員さんは「明治の時のものではないかな」と仰っていました。
反対側の入り口付近には輝くフレネルレンズや、これまた年季の入った棚が置かれていました。外壁はや主要部分は鉄造りですが、内装は木造でとても素敵な雰囲気のインテリアでした。
しかし、かつては現在のように灯台へのルートが確立されておらず、灯台職員の子どもは約5kmの山道を2時間かけて佐賀関の学校に通うなど、非常に過酷な生活環境だったとおのこと。
灯器のある2Fに上がるには急な階段となっており、ロープや手すりを掴んで昇らなければ危険です。
2Fに上がるとちょっとしたスペースがあり外に出ることができます。鉄造りの外装飾と鉄柵がまた相性が良いです。
2Fから覗き込んだ灯器部。2009年にLED灯器へと変更されました。
ちょうど海上保安部のヘリがサービスで来訪してきました。子どもたちはハシャいでいます。
せっかくなので、灯器も見学させて頂くことに。
思っていたより大きな高光度LED灯器です。
円筒レンズとLEDを組み合わせたもので、長時間発光することが可能です。
今回、2ヶ所のスタンプラリーで記念バッジも入手できました。
由緒ある明治期灯台の内部を見学する機会は中々ありませんので、今回のような一般公開の際には是非とも灯台まで足を運んでみてください。
毎年、11月1日ごろに灯台一般公開イベントを最寄りの海上保安部が企画するでしょうから、要チェックです。
村上 記
年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台を訪れる魅力などをお伝えするプロジェクト。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う方々の想いを大事にしていきたいです。