レポ51:大王埼灯台(2020/1/4)
船頭たちに唄い継がれるほどの航海の難所である三重県志摩(しま)半島の大王崎(だいおうざき)。地元民が建設を待望した白亜の灯台を訪れました。
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年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台病の記者が灯台訪問の魅力などをお伝えする『全国の灯台巡礼レポ』。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う地元の方々にも参考にして頂ければ幸いです。
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◼️レポ51:大王埼灯台(2020/1/4)
三重県の志摩(しま)半島は日本有数のリアス式海岸地帯です。東の突端にある大王崎(だいおうざき)は、「伊勢の神崎(かんざき)、国崎の鎧(よろい)、波切(なきり)大王なけりゃよい」と唄われるほどの航海の難所です。
「波切」という地名の由来も、大きな岩が波を切るようにということからきており、暗礁・岩礁が多く古来より船頭たちに恐れられていました。
大王崎は熊野灘と遠州灘を分かつ境域でもあります。切り立った急峻な断崖に日の出が照らされる姿は、日の出スポットとして人気。
年明け早々から岩場に咲き誇る水仙が灯台によく映えます。海岸段丘の景勝地としても有名で、周辺は伊勢志摩国立公園に指定されています。
大王崎は昔ながらの古き良き憧憬の面影を残す港町で、明治・大正時代から小野竹橋(おの ちっきょう)など著名な画家が訪れて筆をとっていました。
昭和になって大王埼(だいおうさき)灯台が点灯してからは、灯台のある風景を好む画家が訪れることから大王崎は1996年(平成8年)に「絵描きの町」と宣言。その象徴として、灯台が見える丘には1年中灯台を見つめる絵描きの銅像が設置されています。
灯台へ至る道は狭い路地を通るのですが、なかなか情緒があります。伊勢志摩は真珠養殖が有名で、名産品のパールが至るところで販売されていました。
大王崎近海では大正時代になると海難事故が多発し、灯台建設の需要が高まるも、大正12年の関東大震災により建設延期。1927年(昭和2年)10月に待望の灯台が点灯を開始しました。
大王埼灯台は参観灯台で200円で登ることができます。またすぐ隣には「大王埼灯台ミュージアム」に無料で入館できます。
灯台1Fには大王埼灯台をモチーフにした絵画などが展示されています。
地上約22mから眺めるパノラマは絶景。眼下に見えるのは波切神社です。
灯器はフレネルレンズではありませんが、灯質が「閃白赤互光」で特徴的な点灯姿となっています。
北西方向には、脇道から昔ながらの石畳の原風景が臨めます。
先ほど見下ろした波切神社からは威風堂々とした灯台の立ち姿が見えます。
灯台の東にある大王岩には"だんだらぼっち"という巨人がいて沖の船を沈めたといわれます。
村上 記