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レポ89:美保関灯台(2025/1/12)

島根半島の東端、島根県松江市の地蔵崎にある美保関(みほのせき)灯台。国の重要文化財にも登録された、山陰最古の現役灯台を訪問しました。

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年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台病の記者が灯台訪問の魅力などをお伝えする『全国の灯台巡礼レポ』。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、自身の原風景を護りたいと願う地元の方々にも参考にして頂ければ幸いです。

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◼️レポ89:美保関灯台(2025/1/12)

島根県松江(まつえ)市は、山陰地方最大の都市であり、島根県の県庁所在地です。宍道湖(しんじこ)や中海(なかうみ)に隣接する城下町もあります。

ただ、今回訪問する美保関(みほのせき)灯台は、日本海に面する島根半島の最北東部にある地蔵崎(じぞうさき)です。自動車にカーナビ設定して向かいます。
徒歩で行くなら、美保関町まではバス、美保関町から灯台まで徒歩1時間強の道のりとなります。

鳥取県との県境、境水道を横目に車を走る

美保関灯台には広い駐車場がありますので、安心して車で向かって大丈夫です。

駐車場からは日本海を見守る美保関灯台と地蔵崎の断崖が遠景で収めることが出来るビュースポットがあります。

美保関灯台は海抜73mの崖上に建造されている

駐車場から50mほど歩くと灯台と昔、灯台職員が暮らして働いていた旧官舎を活用したビュッフェレストランが見えてきます。

日本海を一望できると言われている灯台ビュッフェで食事をしてレポートを書こうと思いましたが、、なんとこの日は「臨時休業」で灯台敷地内にも入れません。。残念!

旧官舎がレストランになっているユニークな灯台

気を取り直して、閉ざされた門の周囲から灯台を鑑賞することにします。
1月は積雪があり、それがまた灯塔の白色と空の雲と相性抜群の景観を成しています。

中央の石碑は与謝野鉄幹・晶子の歌碑

美保関灯台の半円形の灯塔デザインは、「日本の灯台の父」リチャード・ヘンリー・ブラントン氏の設計した部埼灯台や六連島灯台などにそっくりですが、美保関灯台の建設年からブラントン氏の設計ではないとのこと。
 <関連記事>
 レポ4:部埼灯台(2019/1/3)
 
レポ11:六連島灯台(2019/4/4)

ブラントン氏の設計ではないですが、1898年(明治31年)にフランス人技師の指導により建造され、当初は地蔵崎灯台と名付けられていました。
その後、1935年(昭和10年)に「地蔵崎」という名称が全国的に多いことから「美保関灯台」に改名されました。

塔高は14mとこじんまりと可愛い灯塔も
海抜の高い地蔵崎に建設されたからこそ
美保関灯台はフレネルレンズではなく
メタルハライド電球を使用するLB-M60型灯器

灯台付近には鳥居が設置されています。
この鳥居の先には海が広がっていますが、これは眼下の島を「地之御前(ちのごぜん)」、4km先の島を「沖之御前(おきのごぜん)」としともに事代主神(えびす様)の釣り場とされており、美保神社の境内として扱われているためです。

灯台の眼前にある逢拝所(ようはいじょ)

灯台そばのビュースポットからは「地之御前」「沖之御前」が一望できます。

手前の岩場が「地之御前」
奥にわずかに白灯が見える場所が「沖之御前」

ちなみに「地之御前」「沖之御前」は信仰の対象となる場所でもありますが、現実的には岩礁として船の往来の障害物でもあります。
そのため「地之御前」は美保関灯台隣にある「美保関地ノ御前島照射灯」が常に照らし、「沖之御前」には「沖之御前島灯標」が設置され航海の安全を守っています。
 参考:境海上保安部Webサイト 航路標識について
 ※沖之御前島灯標の写真が見れます

右側にあるのが「美保関地ノ御前島照射灯」

解説板によると、地蔵崎は古来「美保之碕(みほのさき)※」とも呼ばれ、出雲国風土記の国引き伝説では「美保之碕」は北陸地方から、島根半島東側の「日御碕」は朝鮮半島から引いてきたもの、とされています。
※他のWebサイトでは「御大之御崎(みおのみさき)」「三穂(みほ)の埼」などが由来、と書かれていたり諸説あります

本来、灯台ビュッフェで過ごすはずの時間が臨時休業でぽっかり時間が空いたので、美保関の街中散策をしました。

まず福浦まで戻り、三保(みほ)神社を参拝します。
美保関の方の美保神社が有名なので、忘れられがちなのですが「島根半島四十二浦巡り」という古来の巡礼道では、この福浦が起点(終点)となっています。
 参考:島根半島四十二浦巡り 福浦

つい見逃しがちな福浦の三保神社
小さいが趣のある社

続いて美保関の港に向かい、美保神社を参拝します。美保神社も島根半島四十二浦巡りの一つですが、地理的に福浦より東に位置する美保神社が終点ではないのが不思議です。
 参考:島根半島四十二浦巡り 美保関

灯台好きも一度は参拝しておきたい神社

美保神社のご祭神は、「五穀豊穣・安産・子孫繁栄」などの守護神として三穂津姫命(みほつひめのみこと)、そして「海上安全・商売繁盛・学業」の守護神として事代主神(ことしろぬしのかみ)が祀られています。

事代主神は、別名「えびす様」の名で親しまれており(七福神の一つ)、美保神社は全国に3000以上ある、えびす神社の総本宮となります。海に関わる灯台好きとしても是非参拝しておきたい。

 参考:しまねまちなび「伝統と神話のまち美保関」

本殿は格式高そうな造り

その他、美保関町には青石畳通りなど見所がありますが、長くなるのでダイジェストでお伝えします。

美保神社から青石畳通りに繋がる
これぞ港町、という趣のある美保関町の風景
美保関港東防波堤灯台。西日が美しい。
美保関のマンホール
モデルは美保関灯台と関の五本松、鯛

ということで、日が暮れてきましたので灯台の点灯シーンを眺めに再び美保関灯台を訪れます。

駐車場のビュースポットから撮影
この日は満月に近く、空が明るい
冬場は木々の葉が枯れており、夏場とは一味違う風情
美保関灯台の灯質は単閃白光
照射灯も煌々と照らしています
灯光がレーザービームのよう
雲がなければ駐車場から
大山(だいせん)も一望できます

そんな訳で、信仰の対象としても現地の生活としても海に寄り添う美保関灯台を訪れました。

ちなみに美保関灯台は2007年に現役の灯台として日本で初めて国の登録有形文化財とされました。更に2022年2月9日には出雲日御碕灯台、江埼灯台とともに国の重要文化財に指定されました。

最後におまけとして、美保関灯台の点灯動画を貼っておきます。雑音混じりですが、ご参考までに。

村上 記

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続・灯台護(とうだいもり)プロジェクト
年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台を訪れる魅力などをお伝えするプロジェクト。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う方々の想いを大事にしていきたいです。