レポ50:麦埼灯台(2020/1/4)
日本有数のリアス式海岸が広がる三重県志摩(しま)半島。その最南端の岩礁地帯の岬に、海女の磯笛の音色とともに立つとなる灯台を訪れました。
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年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台病の記者が灯台訪問の魅力などをお伝えする『全国の灯台巡礼レポ』。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う地元の方々にも参考にして頂ければ幸いです。
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◼️レポ50:麦埼灯台(2020/1/4)
志摩(しま)半島は三重県中東部にあるリアス式海岸で有名な地域です。
麦埼(むぎさき)灯台のある地域はさきしま(前志摩)半島とも呼ばれ、半島の最南端に位置する片田岬に灯台はあります。
麦埼灯台へは漁港入口から岬方面に案内があります。ただ分岐があり、どちらからでも到達出来ますが、こちらの民家を直進した方が早いと地元の方にアドバイス頂きました。
突き当たりに案内板がありますので、それに沿って右手に進んでいきます。
そのまま突き進んでいくと、ちょっとした山道になります。しかし散策するのに適度な感じで地元の方も毎日ウォーキングしているようでした。
道中、港に目を移すと片田漁港の赤灯台が目に入ります。
暫く歩くと港から徒歩5分程度で灯台が見えてきました。
麦埼灯台には、地元の方たちの手により造られた憩いのスペースとして麦崎公園もあり、通称「ガッサの丘」とも呼ばれています。眼前にはあずま屋もあります。
三重県には海女(あま)が現在もおり、海女漁のシーズン(4月〜9月上旬)には「残したい日本の音風景百選」に選ばれた『伊勢志摩の海女の磯笛』が聞こえる場所として知られています。
これは海女が潜水して浮上する時に独特の呼吸調整法により「ピューピュー」と口笛に似た吐息が聞こえることに由来し、どこか哀調を帯びた音色であることから選ばれたとのこと。
ちなみに、麦崎の南方の海中に、海女の間で「竜宮井戸」と呼ばれる深く、碧く、澄んだところがあり、その付近では海女の作業をしないことになっているといいます。
かつて9人の海女が竜宮井戸付近でいなくなったことから旧暦6月13日は「海女人日待(あまどひまち)」とし潜り作業は休み、海の神にお供えするとのこと。
麦埼灯台の背後には麦崎神社があります。ここは約1600年前に土地の豪族が一族の安泰と、大漁満足、五穀豊穣を祈願し祀ったものです。
岬は一部を護岸補強工事も行なわれていますが、荒波に洗われた海蝕崖の岩肌が露出している箇所もあり、色々なアングルから灯台の表情が楽しめます。
麦埼灯台の沖合は「布施田(ふせだ)水道」の東口にあたり、岩礁が多く海の難所とされていました。そのため昭和に入り灯台が立てられた時には付近の機帆船や小型船は格好の目印ができ喜んだとのこと。
帰り道に港の片田港南防波堤灯台も立ち寄りました。アオリイカも釣れるポイントとして人気です。
村上 記