レポ85:岩崎ノ鼻灯台(2024/12/19)
「天然のいけす」と呼ばれるほどの豊富な海の幸に恵まれている富山湾。古来より港で栄えた伏木(ふしき)で入港を見守る灯台を訪問しました。
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年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台病の記者が灯台訪問の魅力などをお伝えする『全国の灯台巡礼レポ』。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、自身の原風景を護りたいと願う地元の方々にも参考にして頂ければ幸いです。
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◼️レポ85:岩崎ノ鼻灯台(2024/12/19)
富山県は、新潟県と石川県に挟まれる形で海に面した地形をしています。ちょうど、能登半島の東側の付け根にあたるのが富山湾です。本州のほぼ真ん中あたりの日本海側に位置します。
日本海側に生息する魚介類は約800種類と言われていますが、その内の約500種類が富山湾で獲れ、四季を通じて新鮮な魚介類が味わえることが富山湾が「天然のいけす」と呼ばれる由縁です。
何故、このような豊かな漁場があるかというと、富山は東西南の三方に標高3000m級の立山連峰が壁のように存在し、北に面する富山湾は浅瀬がほぼ無い水深1200mもの深い海になっているからです。
急峻な山々から豊富な栄養素が雨水や雪解け水とともに一気に河川を通じて富山湾に流れ出ます。その結果、藍瓶(あいがめ)と呼ばれる富山湾独特の谷のように深い地形に複数の温度帯の海層を生み、独自の漁場が育まれている訳です。
参考:とやま観光ナビ > 旬の食を求めて ぐるりとめぐる富山湾の旅<冬編>
さて、今回はこの富山湾に面する港のうち、高岡市の伏木(ふしき)港を見守る岩崎ノ鼻灯台を訪れました。
冬場の日の出も近い午前7時前。自動車のカーナビに灯台の住所(〒933-0101 富山県高岡市伏木国分7)を目標地設定して、富山県高岡市のJR高岡駅から現地に向かいます。
JR高岡駅から岩崎ノ鼻灯台までは車で約30分程度です。灯台近くに着いた頃には日も昇りつつあります。
もともと、伏木港は、江戸時代から北前船(きたまえぶね)の寄港地で栄えてきました。その後、富山県の港は現代に至るまで、3つのエリアが各々発展してきました。
一つ目は高岡市にある「伏木(ふしき)エリア」。
二つ目に伏木から小矢部川と庄川という川2本挟んで東に位置する射水(いみず)市の「新湊(しんみなと)エリア」。
三つ目が更に東にある富山市の神通川(じんづうがわ)周辺の「富山エリア」です。
現在では、この3つのエリア全体が「伏木富山港」とされています。
1951年(昭和26年)、当時の富山港と伏木港が「伏木富山港」として統合され、重要港湾に指定されたタイミングで岩崎ノ鼻灯台が設置され、同年5月30日に初点灯を迎えました。
その後、港は更なる発展を遂げ、伏木富山港は現在では北陸地方で唯一の「国際拠点港湾(※)」に指定されています。ちなみに国際拠点港湾は全国で18拠点あります。
※港湾法の区分で最上位ランクの「国際戦略港湾」に次ぐ位置付け
そのような、日本の海運事業において非常に重要度の高い伏木富山港のうち、伏木エリアに入港してくる船舶を導くのが岩崎ノ鼻灯台の役割です。
岩崎ノ鼻灯台は、高台の上に建てられた塔の高さ14mの中規模灯台です。
岩崎ノ鼻灯台の周辺は、春には桜が美しく咲き乱れ、夏には緑が生い茂るので、白亜の灯台と富山の青天、白雲とのコントラストが非常に美しいです。
是非、春に訪れたい灯台の一つですね。
※春先の風景はとやま観光ナビ参照
岩崎ノ鼻灯台の足下には、背後に佇む二上山(ふたがみやま)が海岸線に没する一帯として「雨晴(あまはらし)海岸」と呼ばれている風光明媚な観光スポットが広がっています。
雨晴海岸には女岩(めいわ)と男岩(おいわ)という景勝地があります。ここは奈良時代の歌人で、万葉集の歌の1割以上を占める大伴家持(おおとものやかもち)も絶賛した景色です。
特に冬晴れの日には、海越しに立山連峰の雄大な景観が眺められます。今回の訪問ではあいにく、厚い雲に覆われていましたが…
ちなみに万葉集に収められている大伴家持の歌は473首ありますが、そのうち越中国守の任として伏木で過ごした5年間に詠んだ歌は223首と約半分を占めていることから、如何に北陸での生活が家持の感性を刺激していたかがよく分かります。
今後も、自然豊かで風光明媚な富山湾の景色を岩崎ノ鼻灯台がともに見守っていくことでしょう。
村上 記