レポ83:大関酒造今津灯台(2024/8/14)
日本でも珍しい民営灯台で「現役最古の木造灯台」と呼ばれる兵庫県西宮(にしのみや)市にある大関酒造今津灯台。移設による灯質変更後の灯台を訪ねました
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年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台病の記者が灯台訪問の魅力などをお伝えする『全国の灯台巡礼レポ』。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、自身の原風景を護りたいと願う地元の方々にも参考にして頂ければ幸いです。
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◼️レポ83:大関酒造今津灯台(2024/8/14)
大関酒造今津灯台は兵庫県西宮(にしのみや)市南部にあります。今津港へのアクセスは公共交通機関では、阪神今津駅もしくは阪急今津駅で下車します。
灯台までの詳細なアクセスは下記のレポートもご参考ください。※但し移設前の灯台までのアクセスなので、その点はご注意ください
レポ21:大関酒造今津灯台(2019/5/1)
実は以前より高潮時の河口部浸水被害の解消や南海トラフ地震等の発生に伴う津波対策を兵庫県が進めており、それに伴い灯台も対岸部に移設工事されたのです。そして2024年4月6日に再点灯しました。今回は対岸への移設ということで、灯質(灯台の光り方)が変わるという珍しい移設でした。
灯台の光り方には全国共通のルールがあり、船が港に向かって入る時に、左手(左舷)側が緑灯、右手(右舷)側が赤灯、となるのです。今回、右舷側の岸に移設されたため緑灯から赤灯に色が変わりました。
緑灯時の写真はこちらです。
移設後の赤灯の写真はこちら。
灯台のすぐそばに建てられている水門が、とにかくバカでかいのです。全高49.5m、幅26.0mの巨大な水門で、この水門などを設置することで津波到来時の浸水地域を9割縮小させることが出来る試算です。
大関酒造今津灯台は、航路標識である灯台の中でも非常に珍しい大関株式会社が維持管理している民営の灯台なのです。
今津灯台の起源は、酒造家「大関」の長部家5代目の長兵衛によって、私費で文化七年(1810年)に建てられた燈明台(和式灯台)です。その後、6代目文次郎が再建しました。
現在の灯台は昭和59年(1984年)に創建当時の姿を復元したやぐら型の灯台で、「現役灯台の中で最古の灯台」とか「唯一の灯台」と呼ばれています。
江戸時代、大阪から江戸へ海上輸送するお酒は「下り酒」と呼ばれる重要な商品でした。そのため1730年(享保15年)にお酒だけを運ぶ樽廻船(たるかいせん)が誕生しました。
以来、今津灯台は今津郷のお酒を数多く輸送してきたのです。
大関酒造今津灯台は、日本遺産『「伊丹諸白」と「灘の生一本」〜下り酒が生んだ銘醸地、伊丹と灘五郷〜』の構成資産でもあります。
時代を超えて、灯台の機能的価値も超えて、灯質も変化しつつ残される資産です。
ただ津波がきたら、今津灯台の辺りは被害が出そうだなぁーと、津波など自然災害と灯台とは永遠に切り離せない関係ですね。そんなことを考えながらの今回の訪問となりました。
村上 記