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レポ77:剱埼灯台(2022/12/31)
日本の海の玄関口、東京湾。この東京湾の入口を指し示す緑光を放つ神奈川県の剱埼灯台。今回は年の瀬でも休まず海を照らし続ける灯台に小学3年生の子どもと訪れました。
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年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台病の記者が灯台訪問の魅力などをお伝えする『全国の灯台巡礼レポ』。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、自身の原風景を護りたいと願う地元の方々にも参考にして頂ければ幸いです。
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◼️レポ77:剱埼灯台(2022/12/31)
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神奈川県の三浦(みうら)半島は、太平洋に大きく突き出した形をしており東西南の三方を浦(湾や海)で囲まれているから、とされています。
三浦半島は東京湾の入口にあたるため、重要な灯台が多く設置されており、今回訪れた剱埼(つるぎさき)灯台もその一つです。
灯台訪問は車でないと少し難しい場所にあるため、カーナビに剱埼灯台と入力して向かうことに。
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灯台まで数百mという位置に駐車場があるため、農家の畑を横目に近づいていきます。年末だからか駐車場はガラガラ。
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駐車場の管理人さんの話だと、年末夜20時以降から近隣は日の出渋滞が凄いそうです。もし灯台で初日の出を迎えたいなら準備が必要でしょう。
駐車場から灯台までは徒歩10分程度。子どもの足でも楽勝な道のりでした。
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すぐに開けた場所に到着。手前の建造物は無線方位信号所(レーザーマークビーコン)。灯台の眼前が太平洋(東京湾)のため、入口からは背を向けるように立っています。
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遠く前方には千葉県が見えており、対角上の千葉県館山市の洲埼灯台とを結ぶ線が浦賀水道(東京湾)と太平洋を分かつ境界線とされています。そのため剱埼灯台が緑灯、洲埼灯台が赤灯と、航路標識ルールに準じた灯光になっています。
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初点灯は明治4年(1871年)3月。1866年の改税条約(江戸条約)で、アメリカ・イギリス・フランス・オランダと建設を約束した8基の内の一つで、日本で7番目の洋式灯台です。
リチャード・ヘンリー・ブラントンが設計を手掛けた初代の石造灯台は1923年の関東大震災で倒壊し、現代の剱埼灯台は1925年に再建されたコンクリート造の二代目です。
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灯台側には「皇太后陛下行啓記念碑」があります。灯台が海外貿易や先端技術として関心を寄せられていた、その中でも剱埼灯台が重要視されていたことが推し量られます。
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時刻は16時半頃。日没近くになってきましたので、眼前の海岸に降りてみると、ちょうど灯台の点灯時刻になったようです。まだやや明るい内に良い感じに点灯してくれましたので、写真にも収めやすかったです。
海上から灯台までの高さ(灯高)は約41mらしく、遠景だと緑光が周囲の岩場と対比されより際立っています。夜の暗闇だと尚のこと、貴重な灯火とされるでしょう。
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ここから水平線に沈む夕陽も美しい。アングル的に灯台と一緒に写真に収めるのは難しそうでした。
【注意】足場は比較的平らな場所も多いですが、滑りやすくもありますので、お子様連れの方はくれぐれもご注意ください
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再度、灯台に戻って点灯シーンを堪能。あまりの美しさに小学校3年生の子どもも興奮して写真を撮りまくってます。
灯台の高さ(塔高)は16.9mとそれ程高くないのですが第2等フレネルレンズを有していますので、見応え充分です。敷地も広く360°回れて安全なので子ども連れでも安心です。
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剱埼灯台の灯質は「複合群閃白緑互光」。30秒間で、小さい白光レンズ2閃光と大きな緑光レンズ1閃光が照らされます。玻璃板に映し出される光芒がまた神秘的です。
この灯質も珍しい気がするのですが、やはりそれ程重要な役割だということでしょうか。
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夕暮れ時は、灯台が夕陽を背負うような陰影と灯光のコントラストが見事。
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辺りが暗くなると、より一層エメラルドグリーンの灯光の美しさが際立ちますね。
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入口の海上保安庁製作の案内板によると、「剱埼」の由来は1660年ごろに徳川幕府の管財を積んだ船が岬の沖で難破した時、岬の突端から海南神社の神主が剣を海に投じ、龍神の怒りを鎮めたことから生じているとのこと。
古来から現代に至るまで、海の安全を守る岬にある灯台は、休むことなく働いていました。
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村上 記
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