vol3.造りへのこだわりについて

おかげさまで、2020年7月で三軒茶屋醸造所は2周年を迎えました。今まで様々な挑戦をしてきた三軒茶屋醸造所ですが、それぞれのお酒についてに語ることはあっても、そもそもどんな思いを持って造っているのか?どういうところで造っているのか?について改めてお伝えする機会はあまり取れませんでした。そこで今回は節目なのもあり、醸造所についてまとめるべく筆をとりました。

予定では

vol1.お米について
vol2.仕込水について
vol3.造りへのこだわりについて
vol4.目指すお酒について
vol5.設備紹介
vol6.杜氏紹介
vol7.蔵人紹介

のような構成でお伝えして参ります。

今回は造りへのこだわりについて。

基本的に三軒茶屋醸造所では乳酸等の添加物を用いない造りをしております。日本酒の世界では9割が「速醸酛」と呼ばれる醸造用乳酸を添加して初期発酵の衛生を確保する手法を取ると云われます。これは明治時代に江田鎌治郎先生によって発明され、衛生リスクを減らしながら、同時に発酵期間も短くするという、とても優れた手法です。安定的かつ短期間で造れるこの技法は、日本酒の歴史に於いてもとても重要なものであると言えます。ただ、我々はあえてその技法を用いません。それらに対するアンチテーゼとしてではなく、乳酸を用いない醸造に発酵の面白さを見出します。

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写真は毎年冬に挑戦している生酛の様子。
他にも独自で開発した様々な手法も取り入れます。

例えば、数字を追って全くのマニュアル通りに造ってしまうと、再現性は高くなりますが、逆にそれを超えるものが出づらいように思います。抽象的な話ではありますが、ある程度の誤差やゆらぎが出る方が、それを超えうる可能性を持ちながら、アナログ的な良さあるいは温もりがでると考えます。その時々の醸造環境を反映させ、またそのたびにアジャストしていくことが造り手には必要な能力であるとも考えます。

また、まず我々の醸造所はガラス張りで誰からも見られてしまうという特性があります。醸造用乳酸は”表示義務のない副原料”なのですが、飲み手の目の前で造りが行われている現場で、ラベルに載せないものを使うことに違和感を感じるという理由もございます。また、当醸造所ではフルーツや茶葉などの”表示義務のある”副原料素材を使用します。”表示義務のない副原料”は使わず”表示義務のある副原料を使用”するというポリシーにつながっていきます。

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併設飲食店whim sake and tapasからの風景。
ガラス越しにほぼ全ての様子がご覧いただけます。

また三軒茶屋醸造所では様々な副原料を使用する酒造りを行っていますが、基本的には同じレシピは2度造らないことを掲げています。今までSAKEの世界になかった副原料素材との発酵の世界の可能性はまだ無限大です。少量でしか仕込めないことを逆に活かして、日々新しいSAKEの開発と醸造に勤めています。(一部復刻等で登場する商品もございます。また、通年で用意するどぶろくもございます。)

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