#日刊よくできました　25

2021.2.12 

夜にネットサイン会があるのでそれまで家で原稿をしたり玄米フレークとオートミールとフルーツグラノーラを1:1:1で混ぜて牛乳をかけたものを食べたり、バレンタインカードの同封特典を作ったり、同じくカードの英字ミス部分にかわいいシールを一枚一枚貼って誤魔化したりしてから病院に行き、ロールキャベツ屋さんに入ってロールキャベツを食べ、事務所の人と合流してサイン会会場のメーカーさんへと向かった。低気圧による頭痛がひどいくせに家を出る時何も考えていないせいで、毎日のように行きずりのドラッグストアで鎮痛剤を買う。ファンの方から事務所に届いていたプレゼントを受け取り、帰ったら開封しようとわくわくしながら大事にしまう。

ネットサイン会はいつもながら楽しく、参加してくれる人たちのネットサイン会への順応もすばらしく、パソコン越しに親しい友達とチャットしているみたいな気分になる。なぜかテンションの上げ下げがコントロールしきれず（いつものことだけれど）話し方がなぜかちょっといつもより胡散臭くなってしまった気がして、これ初見だったら戸田真琴って思ったより胡散臭いな、なんか怪しい壺とか売りつけそう……と思われ少し引かれていたに違いないな、と自省する。いつものことながら、自分の声のトーンはうまく調整ができない。そのときのバイオリズムがそのまま出てしまう気がする。今の私はうさんくさいのだろうか。愛情とか、ありがとうという言葉とか、そういうのは決して嘘ではないのだけど、うーん、声色って難しい。

2021.2.13

バレンタインデー前日。毎日仕事と自分の中の達成するべきことに追われて目覚めからあっという間に夜がきてしまい、すっかりチョコレートを買う時間などないままこんな日付までやってきてしまったと気が付く。少なくともお世話になっている身の回りの人たちには何か渡さなければいけない。だけれど今日も全然チョコレートを物色しに行く時間がなかった。どうしよう。去年クリスマスと大晦日を自分の都合でずらしてしまってから、カレンダーに素直に従うことさえ億劫になってしまった。女の子から男の子へ、というチョコレート会社が作った慣習に乗るのはみんな普通に楽しいからで、無理にやるようなことではないと思うけれど、今年はバレンタインを口実にとびきりかわいいビジュアルを撮り下ろしてもらったりと都合の良いところはたっぷり利用させていただいているので、チョコレートを送り合う風習にくらいのってあげてもいいか、と思い直す。明日頑張って早く起きてチョコレートを買いに行こう、このあと、ちゃんと、早く眠れたら。

昼間は用事があって大学の級友と３人でランチ。確定申告の相談をしたりする。そろそろマジで本腰入れなければいけない。毎年ぎりぎりになってしまう。最低限の用を済ませて帰宅して、夕方からはリモートでPodcast「戸田真琴と飯田エリカの保健室」の収録。ゲストさんを２人いれて賑やかにトーク。楽しさの中に、誰かを傷つけるような発言がないか、何かをみくびって話してしまってはいないか、初めて聞いた人も面白く聴けるだろうかといろいろなことを考えてしまい、ずっと何かに焦っているような精神状態でいるような気がする。それと楽しいが両立するのが不思議なところだけれど、もしも誰かを傷つけるようなことを言ってしまっていたらそっと教えて欲しい、とも思う。エンタメに特化した話題が続く。また内容は案内するのでお楽しみに。撮り終えて、google meet上で雑談をしている間に大きめの地震が来る。　けっこう揺れたので部屋で一番大きな鏡を抑え、他に倒れそうなものがないか見渡す。google meetの各々の画面もゆれていて、この画面録画しておけばよかった、と不謹慎なことを思う。見えている限りは皆無事のまま揺れがおさまり、余震に注意しましょうね、と言い合って解散。東日本大震災がもう10年も前のことだなんて信じられない。明日はバレンタイン配信があるので顔をなるべくかわいくしたく、防災の観点でもお風呂にお湯をためておくのはいいのでお湯を沸かす。若手俳優オタクの男性が書いた「人類にとって『推し』とは何なのか？」という本を読む。一言で括れはしない感情だけれど、私にとって「推し」という概念に近い最も古い記憶は胃がよじれるほどつまらない授業と話したくもないクラスメイトたちの中で最前列にもかかわらず頭から毛布にくるまって居眠りのふりをし続けた冬の教室で、頭の中で一緒に遊んでくれていてたあるキャラクター。毛先の跳ねた女の子。世界が終わったらいいのにな、と脱力感の中思う時、その終わりにいたらきれいだろうな、と思えた唯一の存在とか、そういうもの。愛とか恋とか宗教とか、既存の概念では括れそうで括れない、心に持つことを誰の許可もなく自分自身に許した、ひとつの聖域みたいなものかもしれない。うまく言えない。言えなくていい。