[特集] 共に踏み出す わたしの一歩
元日に発生した石川県能登地震に心の痛む年明けとなりました。
東長寺には水の苑の漆画をはじめ本院の羅漢堂・文由閣の慈嶽堂にある厨子や位牌壇など、輪島塗がいたるところに施されています。
それらを手がけた工房・輪島屋善仁から、工房の損壊や関係者の自宅全壊など深刻な被害の一報を受け、山内では地震発生直後より寄付金の呼びかけを行いました。
すでに皆さまよりたくさんのご支援を頂いております。
このような中で、過日東長寺は開創430年となりました。
変化の著しい現代において、ひとつの節目を迎えられたことに感謝しつつあらためて思うのは、これからも「寺のある暮らし」を檀信徒の皆さまと育んでいきたいということです。
今回の萬亀のキーワードは「踏み出す」。
山内の様々な交流と、輪島への支援について踏み出すきっかけとなることを願って、様々な情報をお伝えします。
お寺のなかで交流へ踏み出す
お寺は本来、生きている人が集うところ。季節ごとの法要行事や、毎月のついたち法要以外にも趣味や体験・学び、ボランティアなど東長寺には人と人とが交わる集いがたくさんあります。
ご自身の得意なことやご興味に合わせて、積極的にご参加ください。
1. ヨガ・囲碁・お習字…
各種教室・同好会に参加してみる
山内では、サロン形式の教室や趣味の会・同好会など、参加型・体験型の集いを多種多様に開催しています。
この5月から、文由閣で行うヨガ教室も新登場。寒さもゆるむころ、ぜひお出かけを。詳細はWEBサイト、SNSをご確認ください。
2. 毎月ついたちは、お寺へ
仏教文化講座のお話に耳を傾けてみる
座学形式で幅広い主題について学ぶ仏教文化講座は、コロナを経て昨年再開できました。
能登半島地震を受けて、この春は災害の備えとなる講師の方々をお招きします。各月のテーマと講師情報など、詳しくはWEBサイト、SNSをご確認ください。
3. 言葉の交流を紙面で!
手紙やメールを萬亀編集部に送ってみる
お身体が思うように動かないなど、外出が難しい時、お手紙やメールを萬亀編集部に送って、紙面で交流しませんか。
お寺でおしゃべりするように、皆様と言葉で交流しましょう。
メール:info@tochoji.org
おはがき・お手紙:〒160-0004 東京都新宿区四谷4-34 東長寺「編集部」宛
4. 音楽会やギャラリーなど
文化イベントを主催してみる
楽器の演奏が趣味という方、絵画や造形など美術の心得のある方。文由閣で演奏会や展示を開催してみませんか?
発表する方も鑑賞する方も、伝え合う喜びを共に楽しみましょう。
[お問い合わせください]
文由閣:03-5315-4015
令和6年能登半島地震
支援へ踏み出す
本院も文由閣も、山内檀信徒の皆様のお参り・祈りの場に必ず存在するのが輪島屋善仁の輪島塗です。
その伝統の存続と、職人の暮らしが元日の地震によって脅かされる事態となってしまいました。
重要無形文化財〈輪島塗〉の歩みを未来へと繋げるために支援を一歩一歩進めていきたいと考えております。
東長寺の祈りの場には輪島塗があります
支援に至った背景
「未来の伝統」をつくるためにお寺ができることを
輪島塗に限らず、山内には日本の伝統工芸が随所に施されていますが、その多くは、開創400年記念事業および縁の会・結の会創立時に製作された近年の作品です。
この背景には、未来の伝統となっていく今の職人・伝統技術を絶やさぬように支援する東長寺の理念があります。
伝統工芸と言っても、職人たちは同じものを作り続けているのではありません。時代に合った解釈と最新の技術を加えて、過去には作れなかった最高のモノづくりを行おうと腕を磨いているのです。そして最高を更新し続けるからこそ、伝統は次世代へと引き継ぐことができます。
輪島屋善仁製作による水の苑「漆画」や文由閣「位牌壇」はまさにそんな職人たちの力が結実した大きなプロジェクトでした。一方で、技術や伝統をつなぐためには職人に継続的な製作環境があることも重要です。
東長寺では、輪島屋善仁にお位牌の製作や漆画の修復を定期的に依頼することで、ささやかながら職人を支え、技術を未来につなぐエネルギーとなることを目指しています。
今回の地震では、日本海側の広範囲にわたって被害がありました。当山としてはまず、ゆかりある輪島屋善仁様を支える活動を中心に、その支援へと踏み出してまいります。
文由閣の伝統工芸を手がけた職人の方々や水の苑の漆画と輪島屋善仁について、過去萬亀特別号No.3、竣工特別号No.1および萬亀143号で詳しくご紹介しております。
萬亀特別号No.3、竣工特別号No.1は東長寺ホームページより、ぜひご覧ください。
輪島屋善仁 被災状況
中室親方の来山で見えたもの
地震発生の衝撃がまだ鮮烈だった1月中旬。
輪島屋善仁の中室親方(社長)が東長寺に来山し、現状と今後についてお話いただきました。
この出張は、輪島屋善仁が全国各地に抱える顧客に、仕掛り中の品物の状態や、今後の納品について状況を伝えるためのもの。親方自らがこのようにいち早く行動されたのは、江戸時代より続く「行商」の伝統と輪島塗の塗師屋としての責任感あってのことだったと思います。
お話を伺っていると、予想以上の深刻な被害状況であることが明らかになりました。
職人・職員全員の無事が確認できた一方、ほとんどの職員が自宅の倒壊などによる避難を余儀なくされていること。工房の建物や設備が激しく損傷し、使用不能となってしまったこと。注力していた貴重な日本産漆の保管倉庫や、製作途中の作品を保管していた建物も全壊。
さらには同社が1990年に復元し、檀信徒旅行でも訪れた明治の町家「塗師の家」(昨年輪島市へ寄贈)も、河井町の大火により焼失。製作に長い時間のかかる輪島塗ですが、完成した漆器もほとんどが破損し、商品とならなくなってしまったということでした。
このような状況にあっても中室親方は職員や職人、その家族にいたるまで心を配りながら、再建に向けた道を探っており、次のように語られました。「まずは、とにかく工房の職員・職人の生活を立て直すこと。
その後に、工房を復旧させ、仕事を再開することを目指しています。職人の半数は県外に避難していますが、「地の粉(輪島塗特有の素材)」以外の素材や道具などは、輪島以外の場所でも入手できるので当社もなんとか製作を開始できる状態にしたい」
輪島情報の発信をはじめます
目指す状態に復興するまで、被災地の状況を折々に確認し、心を寄せ続けることが大切です。
今後萬亀では、現地の情報を「輪島だより」としてお伝えしていく予定です。
支援活動を続けています
このたび、寄付金専用振込口座を開設いたしました。こちらにお預けいただいた浄財は、輪島屋善仁支援として、寄付させていただきます。
また萬亀紙面にて、寄付状況をご報告いたします。
東長寺チャリティーイベントもぜひ、ご参加ください
今後山内で、寄付・支援に繋げる様々なイベントを開催していく予定です。詳しくは以下の萬亀 PDF版の「お知らせ」をご覧ください。https://www.tochoji.jp/banki_pdf/banki_no145.pdf#page=12
大般若祈祷会 災害復興ご祈祷の御礼
法要開催間際の呼びかけにも関わらず、たくさんの方にお心をお寄せいただきました。
深く御礼申し上げます。詳細は次号萬亀にてご報告いたします。
『萬亀』No.145(2024年3月号)より
<お問い合わせ連絡先>
東長寺結の会事務局
電話:03-5315-4015(9:30~17:00)
メール:toiawase@tochoji.org