結果を出して初めてストーリーを聞いてもらえる~スポーツ取材から学んだこと~
今日は「結果」と「ストーリー」という2つのキーワードについてお話ししたいと思います。
最近、企業のホームページを見ると、「こういう思いで僕たちは事業をしています」「過去にこんな経験をしたからこの課題解決に挑んでいます」など、ストーリーを語る傾向が強いように感じます。
物作りの世界でも「ストーリーが大事」というフレーズをよく耳にします。僕も自身のNFTプロジェクトで、NFTに対する思いやイラストレーターへの思いを語ってきました。
しかし、ストーリーを聞いてもらえるのは、ある程度結果を出しているからではないでしょうか。
金メダリストのストーリー
この「結果とストーリー」について考えると、僕が新聞記者時代に取材した中で最も印象に残っているエピソードを思い出します。
それは、2012年ロンドンオリンピックの女子レスリング48kg級で金メダルを獲得した小原日登美選手の話です。
2008年北京オリンピックの代表選考レース。小原選手が主戦にしていた51kg級は北京オリンピックでは実施されず、階級変更を迫られます。だが、下の48kgには妹がおり、両親から「娘同士で戦う姿を見たくない」と言われ、上の階級に挑戦することに…。
しかし、55kg級は「無敵の女王」、そう吉田沙保里が君臨した階級です。結局、北京オリンピック出場を逃してしまいます。
その後、小原選手は自殺まで考えるほど追い詰められました。しかし、父親の支えなどもあって立ち直り、ついにロンドンオリンピックで金メダルを獲得したのです。
僕はこの金メダル獲得の瞬間を会場で見ていましたが、小原選手が顔を押さえて泣き崩れる姿に、思わず目頭が熱くなりました。
結果があってこそのストーリー
このエピソードを出したのは、結果とストーリーの関係を示すためです。
小原選手が金メダルを獲得したからこそ、そこに至るまでのストーリーに重みが出たのです。もし1回戦で負けていたら、「残念だったね、苦労したのに」で終わっていたかもしれません。
実際、金メダル獲得後の新聞では大きく取り上げられましたが、1回戦敗退だったら20行程度のベタ記事(扱いの小さい記事)で終わっていたでしょう。
結果を出して初めて、「小原選手がここまで苦労して金メダルを獲得した」というストーリーが成立するのです。
ビジネスでも同じこと
これはスポーツに限らず、ビジネスでも同じことが言えます。
ストーリーを語ることは大切ですが、その前にまず目に見える成果を出すことが重要です。ビジネスであれば売上やユーザー数などの数字がそれにあたるでしょう。
まずは結果を出してから、その裏にあるストーリーを語る。そうすることで、より多くの人に響くメッセージになるのではないでしょうか。
この考え方は、経営学者のピーター・ドラッカーも強調しています。彼の著書『マネジメント』では次のように述べられています:
「成果を上げることなしには、いかなる約束も、いかなる善意も、いかなる誠実さも意味をなさない。」
結果を出すことの重要性を改めて感じさせられる言葉です。
現在、僕たちは新しいサービスの立ち上げを計画しています。このサービスに込めた思いはたくさんありますが、まずは結果を出すことに集中したいと思います。
そして、ある程度の成果が出た後にストーリーを語る。そんな順序で進めていければと考えています。
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