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NFTは死んだけど、僕らには道がある。

2021年、NFT市場は急成長し、クリエイターエコノミー時代の幕開けを予感させました。当時、僕もこの世界に飛び込み、「未来が変わる」という期待に胸が踊りました。

しかし、本記事を執筆している2024年10月現在、その期待は裏切られています。かつての熱狂は影を潜め、市場は冷静さを取り戻しました。

この3年間、NFTプロジェクトを運営しながら、市場の変化を肌で感じてきました。熱狂から極寒への移行、クリエイターが直面する課題、そして、それでもなおNFTの可能性が存在する理由。これらの経験と洞察を共有したいと思います。

【第一章】幻想のNFT

「NFTプロジェクトの96%が死んだ」

NFTニュースメディアのNFTeveningが2024年9月に発表したレポート「NFTプロジェクトの96%が死んだ」は業界に衝撃を与えました。

NFTeveningによる「死んだプロジェクト」の定義
・取引高が0
・過去7日間の販売数20件未満
・過去3カ月間Xでの活動なし
上記3つの基準のいずれかを満たす場合、NFTeveningは「プロジェクトは死んだ」と判定。

NFTevening:2024年Reportより

レポートによると、2022年には全体の22%が休止状態となり、2023年にはその比率が30%まで上昇。今年に入ってからも、既に20%のプロジェクトが運営を終了しているとあります。

ちなみに、本調査によると、NFTプロジェクトの平均寿命は1.14年(約1年2カ月)とのこと。短命すぎですね…。

もちろん、生き残っているプロジェクトも安泰ではなく、NFT市場は、流動性の枯渇、開発の停滞、コミュニティの縮小、といった三重苦に直面しています。

取引高の推移も拾っておきましょう。暗号資産メディアThe Blockのデータによると、NFTの取引高は2021年夏のピークから大幅に減少しています。

2021年8月には週次取引高が約30億ドル(約3270億円、当時レート1ドル=109円換算)に達するも、直近2024年10月(6-13日の週次計測)では約6300万ドル(約93億円、1ドル=149円換算)まで落ち込んでいます。取引高は、ピーク時の約2.8%という絶望的水準です。

The Block:NFT Trade Overview

一方、国内NFT市場は、どうでしょう。
2022年と2024年、同日のデータ(10月13日)で比べてみます。

konipuさん提供、NFTランキングJPより

246ETH…現在のレート(1ETH=約38万円)で約9350万円です。
今やトップ10銘柄が束になって「月単位」で挑んでも、2022年の遊戯苑プロジェクトのデイリーの取引高に及ばないということになります。

NFTランキングJP

古参NFTプレイヤーが「昔は良かった」なんてため息する気持ちは、筆者としてもよくわかります。

流動性の蒸発と投資家の撤退

セレブがこぞって購入しNFTブルーチップ(高級銘柄)の代表格となった「Bored Ape Yacht Club」のフロアプライスの推移がこちら。

CoinGecko

2022年4月には150ETH(約4200万円、当時レート1ETH=約28万円で計算)超え。現在の2024年10月にはピークから93%減の11ETH(約418万円、現レート)で取引可能なお猿さんになってしまいました。

今にも泣き出しそうですね…。

Bored Ape Yacht Club #4306

この現象は、NFTが投資対象としての魅力を失ったことを示唆します。かつてNFTに巨額の投資を行った投資家の多くが、この分野から撤退しました。これは市場の成熟というよりは、信頼の喪失を意味しているのではないでしょうか。

NFTマーケットプレイスの混乱

クリエイターサイドの人間としては、マーケットプレイスの混乱もマジで勘弁してくれ、でした。「OpenSea vs Blur」の覇権争いは、クリエイター(出品者)にとって最悪の結末を招きます。

ロイヤリティの撤廃です。NFTの革新的な特徴の一つだった二次流通時のクリエイターへの還元が、市場競争の中で消滅。取引量を増やすための施策、エアドロップが、皮肉にも市場の根幹を揺るがす結果になったのです。クリエイターにとっては「NFTで飯を食う」が霧散した瞬間でした。

「OpenSea vs Blur」の争いについては、Forbes Japanの記事がわかりやすいです。

かつて「NFT界のAmazon」とまで称されたOpenSeaは、完全に勢いを失い、急激な凋落を経験しています。

OpenSeaは2022年1月、月間取引量が50億ドルを超えていたものが、現在では1億ドルを切るまでにまで減少。gate.loによると、ピーク時には133億ドルに達した評価額も90%以上切り下げられているといいます。

「従業員のレイオフ(解雇)」から、「売却」といったきな臭いニュースも聞こえてきてますね…。

Dune Analytics

代替チェーンでのNFT展開は…

NFT市場の新たな展開として期待されていた代替チェーンでのNFT展開も、当初の期待ほどの成果を上げていません。CryptoSlamのデータによれば、SolanaやPolygonなどの代替チェーンでのNFT取引量も、Ethereumと同様に大幅に減少しています。

Ethereum、Solana、Polygon、Cardanoなど主要ネットワークをマッピングし、NFT市場のパフォーマンスを示すCryptoSlam 500 NFT Indexによると、2024年は年初から50%以上の下落です。

CRYPTOSLAM

これらの事例は、NFTの用途拡大が市場を即座に活性化させる特効薬にはならなかったことを示します。

NFTバブルの再来はあるか

否定しようがありません。NFTは終わりました、完全に。
2021年の熱狂が戻ることもないでしょう。

バブル

お断りが必要ですね。

本章では、「NFT」という言葉を主にアートやPFP(Profile Picture、プロフィール画像)に関連するものとして扱ってきました。

簡単に言えば、シンプルにデジタル画像をブロックチェーンに記録したもの、あるいは画像の所在情報をブロックチェーンに載せて、実際の画像は別のサーバーに保存しているもの、といったところです。

しかし当然、NFT技術の使い道はこれにとどまりません。
活用事例については後述します。

伝えたいのは、一般の人が思い浮かべるNFTのイメージ——例えば、ドット絵とか子どもの絵とか猿の絵とか——そして、そこから連想される”クリエイターが報われる世界”といった理想像は、もはや消滅した、ということです。

この現状認識から始めていきましょう。

【第二章】Web3の現在地と若干の違和感の修正

NFTから視界を広げて、Web3の現在地を確認しましょう。

Web3の現在地:記者として触れて

現在、僕はCoinDesk JAPANという暗号資産系メディアで記者をしています。日々、ブロックチェーン関連のニュースを追い、先輩記者の洞察に触れる中で、Web3界が着実に前進していることを実感しています。

特に金融分野でのWeb3技術の活用は目覚ましく、ステーブルコインやセキュリティトークンの事例を見ていると、”Why Blockchain?(なぜブロックチェーンを使うのか?)”という問いへの説得力ある回答が見えてきたように感じます。

例えば、ステーブルコインを使った国際送金は、従来の銀行システムでは数日かかっていた取引を数分で完了させることができます。また、セキュリティトークンの登場により、不動産や美術品といった実物資産(RWA:Real World Assets)を、容易に分割所有できるようになりました。

これまで大口投資家、つまりお金持ちしかアクセスできなかった投資機会が、より広い層に開放されつつあるのです。

CoinDesk JAPANには沢山のステーブルコイン、セキュリティトークンに関する記事があります。興味のある方はぜひ読んでみてください。(宣伝)

繰り返す世界線

こうした事例を見ていると、Web3技術が単なる概念を超え、実際の金融システムに具体的な変革をもたらし始めていることがわかります。

しかし、僕の中に違和感が芽生えてきます。Web3の出自は、巨大テック企業による富と権力、データの独占に対するアンチテーゼでした。

「Web3」の定義はさまざまですが、米ベンチャーキャピタルAndreessen Horowitz (アンドリーセン・ホロウィッツ、略称a16z)のパートナー、クリス・ディクソンが2021年に投稿したブログ記事が、しっくりきます。

「Web3 is the internet owned by the builders and users, orchestrated with tokens.」
(Web3とは、トークンで結びついた、開発者とユーザーによって所有されるインターネットである)。

「Why Web3 Matters(Web3が重要な理由)」

この定義は美しく、理想的です。
”平等感”があります。

しかし、現実を見ると、主要なサービスやインフラが少数の企業に依存しています。特にアメリカでは、大手ベンチャーキャピタルによる巨額投資が目立ちます。

例えば、先のアンドリーセン・ホロウィッツは2022年5月に45億ドル規模の暗号資産関連ファンド「クリプトファンド4(Crypto Fund 4)」を立ち上げています。同VCは2020年から2024年上半期の間に、Web3スタートアップ企業を中心に28件、計約27億ドル(約4020億円)もの投資を実行しています。

gate.lo:Web3 Gaming Investments in 2020-2024: The Highs, The Lows, and The Future

このような巨額資金の流入は業界の成長を促進しますが、同時に少数の投資家による影響力の集中も懸念されます。

Web2の世界線がリプレイされ始めている気がします。「結局、資本のあるプレイヤーが勝つのか」と。正直、オモンナイですよね笑。

イーサリアムのステーキング条件も添えておきましょう。最低32ETH(約1210万円)いう高額な敷居は、一般のユーザーにはまず手が届きません(ステーキングプール利用による集団の実行は可能)。これでは、富める者がより富むという構造から抜け出せないのではないでしょうか。

また、政治家や起業家がしばしば叫ぶ「日本がWeb3で勝つ」といったスローガンにも、違和感を覚えます。Web3に国家間の勝ち負けがあるのでしょうか。弱者のための「金融包摂」というブロックチェーン理念が置き去りにされている気がするのです。

再解釈の必要性

ただ、近年の経験を通じて、僕はWeb3に対する解釈を再考する必要性に迫られました。ブロックチェーンは確かに分散型のシステムですが、必ずしもプラットフォーム上で活動する個人や組織の行動までも分散化させるものではない。

つまり、Web3技術は既存の資本主義システムの中で機能するツールであり、それ自体が新しい秩序を強制するものではないということです。

業界の出来事を観察することで、徐々にクリアになってきた理解です。例えば、OpenSeaの突然の仕様変更や、DAO(分散型自律組織)を標榜するDiscordコミュニティでのユーザーBANなどの事例が挙げられます。

これらの出来事に対し、「こんなのWeb3じゃない!」と怒り出す人がいます。しかし、ここで重要なのは、Web3はあくまでもシステムの構造を指す概念であり、そのシステムを利用する人間や組織の行動規範を直接的に規定するものではないという点です。

このような理解は、Web3技術の可能性と「限界」を把握する上でとても重要です。技術そのものの革新性を認めつつ、その運用や応用における人間的要素の影響は軽視できないのです。

違和感は解消されつつあります。しかし、理解することと”受け入れる”ことは別問題です。個人的には、Web3の世界で名もなき者が台頭する姿を見たいと願っています。金満球団を弱小チームが打ち倒すドラマは、いつだって痛快ですから。

【第三章】NFTの価値を事例をもとに再考する

第一章で前述したように、NFTは単にマーケットで売買されるデジタルデータだけではありません。

前章で触れたWeb3の定義を覚えていますか?

「Web3とは、トークンで結びついた、開発者とユーザーによって所有されるインターネットである」

クリス・ディクソン「Why Web3 Matters」

100人のWeb3プレイヤーがいれば100通りの定義が生まれそうな未成熟な領域ですが、ここは一旦、ディクソンによる定義を” The定義 ”としましょう。

「Web3とは、トークンで結びついた、開発者とユーザーによって所有されるインターネット」の考え方を体現するNFTプロジェクトには、どんなものがあるのでしょうか。いくつか興味深い例を見ていきます。

「関係人口」という概念

地方創生分野では、博報堂と日本航空の「KOKYO NFT」が興味深いです。このプロジェクトは、地域の体験や現実資産(RWA)をNFT化し、国内外の購入者を地域の「関係人口」に変えることを目指しています。

博報堂ウェブサイトから

「関係人口」とは何でしょうか。総務省にいい図解がありました。

総務省|関係人口ポータルサイト

社会課題解決の文脈では、日本総研の「Good Job! Digital Factory」が障害のあるアーティストとのNFTアートプロジェクトを展開。収益を障害者支援に充てる新しい社会貢献モデルを示しています。

日本総研ウェブサイト:NFTコレクション「グッドジョブさん」

教育分野では、千葉工業大学の「キャリア証明書NFT」が学生の学修歴をNFT化し、就職活動に活用。これはNFTが個人の実績を証明する新たな「信頼の証」となる可能性を示唆しています。

千葉工業大学リリース

Web3ゲームのポテンシャル

ただ、真の意味でNFTをマスアダプションに導くのは、Web3ゲームだと筆者は考えます。理由は、ユーザーがブロックチェーンやNFTの技術的側面を意識することなく、自然にこれらを利用できる環境が整っているからです。

「TONゲーム」をご存知ですか? ユーザー数9億人のメッセージングアプリ・Telegramが開発したブロックチェーンTON(The Open Network)を基盤にしたゲームです。中でも、「Hamster Kombat」はプレイヤー数3億人を超えるとも言われています。

2023年最も遊ばれたブロックチェーンゲームに『キャプテン翼 -RIVALS-』 が選ばれるなど、既存IPを生かしたWeb3ゲームの成功例も出てきました。

これらWeb3ゲームプラットフォームでは、プレイヤーは自然にNFTを所有し、取引することが可能です。さながら「NFTは友だち(キャプテン翼の名セリフ『ボールは友だち』から)」といったところでしょうか。

こういった現象から見えてくるのは、NFTの本当の価値が技術そのものじゃなくて、それによって生まれる新しい体験にあるということです。Web3ゲームは、「デジタルな物を本当に所有する」という少し難しい概念を、楽しみながら体験できる場所を提供しているのですね。

NFTの真価をWeb3ゲームに見る

これらの事例から、NFTの真価は「唯一性」と「所有権」を付与する技術的特性だけでなく、新しい関係性や価値交換の仕組みを実現する点にあると言えます。

NFTは地域と人、アーティストと支援者、学生と企業、ゲームプレイヤーと開発者をつなぐ媒介となり、新しいつながりや価値創造の可能性を秘めます。

どうやら僕たちは、NFTを単なるデジタルアートや投機の対象ではなく、社会変革とユーザーエンパワーメントのツールとして捉え直す必要がありそうです。

【第四章】使い道のないNFTアートに価値はあるのか—、100度目、自分に問う

NFTの実用化が着実に進んでいることは、お分かりいただけたかと思います。ここで少し立ち止まって、根本的な問いに立ち返ってみましょう。

NFTアートに価値はあるのだろうか?ー

触れないアート

デジタルウォレットの中に、NFTアート作品は紛れもなく”存在”しています。しかし、時折その存在に対して疑念を抱くことがあります。

壁に飾ることもできず、実用的な価値もない。
ただ、億ものお金を出して、求める人がいる。

デジタル時代の「価値」の正体とは―。
いくつかの興味深い事例を見ていきましょう。

下の絵はBeepleによる「Everydays: The First 5000 Days」。2021年3月、約6900万ドル(当時約75億円)で落札されました。デジタルアートの世界に新時代の到来を告げる象徴的な出来事でした。

Beeple「Everydays: The First 5000 Days」:クリスティーズウェブサイトより

次に、CryptoPunks。NFTの先駆けであるピクセルアートに実用的な価値はありません。NFTアートの”象徴”として機能しています。所有者は、単なるアートではなく、文化的アイデンティティを手に入れているのです。

2024年3月、4850ETH(当時レートで約25億円!)で取引されたCryptoPunks。

日本の例では、現代アーティスト村上隆氏による「Murakami Flowers」が賑やかですが、花をモチーフにしたこのNFTアートにも実用的な価値はありません。

Murakami.Flowers Official

これらの事例を踏まえると、NFTアートの価値は必ずしも”使い道”にあるのではないことに気がつきます。価値は、むしろ以下の点にあるのではないでしょうか。

  1. 歴史的・文化的意義:Beeple、CryptoPunksの作品のように、デジタルアート史に名を残す作品を保有する。

  2. コミュニティとアイデンティティ:所有すること自体が特定のコミュニティへの帰属を示す。

  3. 新しい表現の可能性:物理的制約のないデジタル空間だからこそ可能になる表現がある。

  4. 所有の証明:ブロックチェーン上で明確に所有権が証明される。

  5. 希少性と独自性:デジタルでありながら、唯一無二の存在であることが保証される。

しかし、これらの価値を認識しつつも、依然として疑問は残ります。果たして、デジタルアートの「価値」は、高額な取引を正当化するほどのものなのか。

人が「価値」を感じれば「価値」

NFTアートの市場は、まだ発展途上(もしくは消滅?)です。バブル的な側面も否定できません。しかし、同時に、デジタル時代における「所有」や「価値」の概念を根本から問い直す機会を僕たちに与えてくれています。

物理的な実用性が欠如していても、人間がある対象の存在自体に価値を認めるならば、当該対象には紛れもなく本質的な価値が宿ります。従来の美術品と何ら変わりありません。

東大教授の三浦俊彦先生は、著書の中でアートをこう定義しています。

実用性から遠ざけるほど、アートらしくなる。

「東大の先生、超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!」より

NFTアートの本当の価値は、結局のところ、僕たち一人ひとりの見方で決まるのかもしれません。例えば、技術としてどれほど革新的か、芸術作品としての表現力はどうか、市場でどれくらい希少なのか、そして何より、見る人の心にどんな感情や思考を呼び起こすか。

これらの要素を総合的に見て、「ああ、これには価値があるな」と感じるかどうか。判断は人それぞれ異なるはずです。

100回の自問自答を重ねて、今、僕の中でひとつの考えが形になりつつあります。NFTアートの本当の価値って、もしかしたら、デジタル時代の「価値」そのものを新しく定義し直すことにあるのかもしれません。

つまり、単に「これは何かの役に立つか?」という視点を超えて、価値観そのものが新しく創造されていく。デジタル世界で「所有する」ことの意味や、アートを「体験する」ことの新しい形を提案しているのかもしれません。

先日、レンタルアート事業を京都で手掛ける経営者の方と、ギャラリーでお話する機会がありました。その時の言葉が印象的です。

「私たちの事業は作品を貸しているのではない。アートを楽しむ文化を作っている。だから100年の覚悟でやっている」

NFTプロジェクト「ZUTTO MAMORU(通称:ずとまも)」の運営を通じて、より”価値の再定義”への欲求が強くなりました。ずとまもプロジェクトは、イラストレーター・mamoruさんが描くアートの価値を提案しています。

同時にコミュニティ形成の可能性も追求しています。NFTアートは単なるデジタル資産ではなく、人をつなぎ、新しい価値を共創する媒体となり得るのです。

【第五章】日本のWeb3推進―弱小プロジェクトはいかにして生き残るか

僕自身、本記事を書きながら、デジタルアートの価値の正体がほんのり見えた気がします。が、期待と同時に震えています。どうやって生き残るんだと…。

本章は「生存戦略編」です。

平将明デジタル大臣

政府レベルの動きは、業界に大きな影響を与えます。Web3推進派として知られる平将明氏がデジタル大臣に就任したことは、業界にとって疑いようのない追い風です。頭脳明晰。

法整備も進んでいます。2023年6月に改正資金決済法が施行され、ステーブルコインの規制が明確化されました。この法改正により、ステーブルコインは「電子決済手段」として国内発行が可能になりました。

直近では、ソニーグループとAstar Networkファウンダー・渡辺創太氏率いるStartale Labsの合弁会社である「Sony Block Solutions Labs」が開発するパブリックブロックチェーン「Soneium(ソニューム)」が話題になりましたが、ソニーに限らず大手企業のWeb3の参入は相次いでいます。

事例を挙げると、、、とんでもない数になるので、以下のサイトを案内させてもらいます。

(僕らのような)弱小プロジェクトはどのように立ち回れば生存できるのか―。いくつかの成功事例から学びます。

弱小プロジェクトの”勝ち筋”

「Azuki」の例を見てみましょう。Zagabond氏が手がけるAzukiプロジェクトは、関連コレクションも含め、総売上は12億ドル(約1800億円)を超えます。グローバル市場で成功を収めた”ニッチだが深い”ジャパンテイストの世界観は、学べるところが多いように思います。

コミュニティ主導型でいえば、「Nouns」プロジェクトをスルーできません。NFTホルダーがDAOを通じてプロジェクトの方向性に関与できる仕組みを取り入れています。大手企業には真似しづらい、小規模プロジェクトならではの強みといえそうです。

※Nounsのトレジャリー(プロジェクトの金庫)には本記事を書いている2024年10月15日時点で4283ETH(約16億2700万円)ものお金が入っています。もはや「小規模プロジェクト」とは言えんですね…。

nouns.wtf

国内では「Crypto Ninja」が強いなー、という印象です。インフルエンサーのイケハヤさんが代表を務めるこのNFT発プロジェクトは、約2万人の活発なコミュニティを基盤にNFTの枠組みを超えた多角的な展開を進めています。

デジタル分野ではアニメ化(「忍ばない!クリプトニンジャ咲耶」)、フィジカル分野ではトレーディングカード事業(運営は株式会社モノリス)を立ち上げるなど、オンラインとオフラインの両面でコンテンツを拡充しています。

これらの事例から、小さなプロジェクトの「勝ち筋」が見えてきます:

  1. 独自性の追求:大手にはない、独特の世界観や表現を追求する。

  2. コミュニティ重視:ファンとの強い結びつきを作り、共に成長していく。

  3. 創造性の発揮:技術的制約にとらわれない、新しい表現や体験の創出。

  4. グローバル視点:日本市場だけでなく、世界を見据えた展開を考える。

  5. 技術革新:新しい技術やアイデアを積極的に取り入れ、常に進化し続ける。

確かに、大手企業の参入とビッグタイトルの展開は市場に大きな影響を与えます。でも、Web3の本質である「分散化」と「個人のエンパワーメント(力を引き出すこと)」を考えると、どんなプロジェクトにもチャンスはあると僕は信じています。

コミュニティドリブン

日本のWeb3は今、転換点を迎えています。政府が少しずつ後押しを始め、法整備も進んできて、業界全体が前に進む雰囲気が出てきました(あとは税制改正!)。

この新しい波の中で、本当に成功するのは、きっと独自の価値を生み出し、ファンとの絆を深められるプロジェクトだと思います。ファンとの繋がりを築くのは一朝一夕ではありませんが、大企業では困難なフィールドです。挑戦する価値は十分にあると感じています。

「ZUTTO MAMORU」プロジェクトも、独自のやり方を模索しています。ZUTTO MAMORUは、コミュニティを通じて、イラストレーター・mamoru氏の作品を世界に届けていくことをビジョンにしています。

技術ギミック(仕掛け)でも野心的な取り組みをしています。1年毎に女の子が変化するプログラムを組み、リアルの空模様と連動する世界初(?)の「天気連動型NFT」も過去のステージで実装しました。

6年間で女の子の一生を描く、ずとまものロードマップ

デジタルアートの可能性を追求しながら、NFTホルダーと深いつながりを構築するー。これは単にデジタルデータを売るだけでなく、新しい表現の場とコミュニティを同時に作り出そうというチャレンジなのです。

【最終章】ZUTTO MAMORUの苦悩と希望―mamoruアートが教えてくれたこと

最終章です。

「僕らには道がある」とタイトルに書きました。

これまで「デジタルアートの価値」について散々に論じてきましたが、実はZUTTO MAMORUプロジェクトにとって、NFTは目的達成のための一手段に過ぎません。

端的に言えば、「mamoruさんの作品が広まりゃ何だっていい」。ビジョン実現に向かって前進している限り、手法にこだわる必要はないと考えています。

NFTであれ、従来のアート形式であれ、あるいは全く新しいアプローチであれ、mamoruさんの素晴らしい作品をより多くの人々に届けられるのであれば、それこそが最も重要な成果だと信じています。

この文脈で、11月16、17日に東京秋葉原で開催予定の「ZUTTO MAMORUギャラリー展」も、まさにビジョン実現への一歩です。このイベントを通じて、デジタルとフィジカルの境界を超えた新たな体験を提供し、mamoruさんの作品の魅力をより直接的に伝える機会を創出します。

どん底のフロアプライス

ZUTTO MAMORUプロジェクトは決して順風満帆ではありません。正直、何度も諦めかけています、ハイ。

フロア価格、0.002ETH。数字を見た瞬間、胃がギュッとなりました。「作品は素晴らしいはずなのに、その価値をちゃんと伝えられてない…」。自責の日々です。

ZUTTO MAMORUフロアプライス推移:NFTGO

約定ゼロが2カ月、続きました。ただ怖いのは、売れないことではありません。慣れです。約定ゼロに「痛み」を感じなくなることが一番怖い。「市況が…」の言い訳は誰だってできるし、僕も何度も口にしました。逃げている自分にも気づいていました。

コミュニティからの反発もありました。
「方向性間違ってませんか?」
グサッ…血が吹き出ました。

力不足にメンタルを病み、発信すらできなくなった時期もありました。ZUTTO MAMORUコミュニティ(「ずとまも心臓部」)の皆さんは特に感じられたでしょうが、ファウンダーの発信が止まることはプロジェクトの「死」を意味します。

そんな窮地から僕を救ってくれたのも、またZUTTO MAMORUであり、mamoruさんの作品です。

コミュニティの方々から、たくさんのDMをもらいました。
「大丈夫ですか?」「いつでも味方です」とか。今度は涙が吹き出ました。

(心配かけてる場合じゃないぞ、こら)
復活です…単純。

クラファンやります

ZUTTO MAMORUは、mamoruさんのアートを通じて人々に感動を届けるプロジェクトです。しかし、実のところ、最も深く癒されているのは僕自身かもしれません。mamoruさんの作品を眺めているだけで、心のトゲが抜けていくのを感じます。まさに、まもり神です笑。

第一章で述べたように、NFT市場は厳しい状況に直面しています。この現実を踏まえ、僕たちは新たな挑戦への一歩を踏み出します。ギャラリー展の開催は、まさにZUTTO MAMORUの「生命力」の象徴です。

展示会を通じて、"mamoruアート"の力を、みなさんにも直接感じていただきたいと思います。会場でお待ちしています!

「ZUTTO MAMORUギャラリー展」の開催に向けてクラウドファンディングを10月16日(水)20時にスタートします。下のキャンバスアートをメインに魅力的なリターンをご用意しています。ご支援のほど、よろしくお願いいたしますm(__)m

https://camp-fire.jp/projects/799283/view

『ZUTTO MAMORUギャラリー展』
開催日:2024/11/16.17
場所:SEEKBASE AKI-OKA MANUFACTURE(東京都千代田区神田練塀町13-1)

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