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善光寺から牟礼まで(北国街道を歩く5)

 湯田中に宿を取ったのは正解でした。探しても宿は満室ばかりで、やっと見つけた宿は夫婦経営の簡素な宿でした。でもひとり旅には、適当に放ってくれるところが過ごしやすくて、チェックアウトにお土産まで貰い、楽しく過ごせたものです。運転手不足のせいか湯田中駅発の列車は減便され、長野直通の便はさらに少ない。ちょっと使いづらくなっています。車内はほどほどに客が埋まり、湯田中から善光寺下駅まで向かう列車は、ぼちぼち立ち客が出るくらい。ほんの1〜2キロほどの地下区間を長野駅まで乗車する客もいます。確かに善光寺近辺の混雑を考えれば、これが1番早いかも知れませんね。
 善光寺下駅で降り善光寺まで向かいます。長野市街地は真っ平らな土地ではなくて、善光寺を中心に坂を下るような地形になっています。ほんの10分程度の歩きもけっこうきつい坂です。今朝も善光寺にお参りして、続きを歩きます。善光寺あたりも住宅地ですが、昨日に歩いた長野市南部に比べれば築年数は古そうな住宅が多く、早い時期から長野近郊として開けていったものと思います。かつては賑やかだったのか潰れた商店がちらほら見られます。近くには朝に乗った長野電鉄が並行していて踏切の音が聞こえます。トイレに寄った長野電鉄の信濃吉田駅前には、ながの東急の立派なスーパーが店を構えていて、まるで大手私鉄の駅前のようですね。さきの道中にはたいした店も無さそうなので食べ物を揃えます。中は衣食住のいろんなものがなんでも揃う、ちょっと懐かしい感じの総合スーパーの店構えです。そこそこ活気があるように見えるのですが、この店舗は近々閉店するらしいです。
 狭い道を自動車が切れなく過ぎていくのも落ち着かないのは昨日と同じですが、旧い街では道路の拡幅もままならないようです。公共交通が整備されれば1番良いのですが、運転手不足ではそれも難しいようです。

道中は、こんどは上り一辺倒になります。いくら山を登っても集落が途切れないどころか、むしろ山裾のような場所にこそ集落が開けているようなのが、いつも長野に行って不思議に思うところです。新町宿のある長野市若槻地区もそのような場所です。きつい坂を登り終えても、まだその先に坂が続いていますが、人家は途切れずに集落が延々と続いています。路面を見れば道路脇が緑に塗られている。すなわち通学路になっているわけのです。このあたりの小学生はこんなきつい坂道を毎朝歩いて通学しているのかと驚きます。さて、この先に田子池という池があります。池の上では鴨が羽を広げていますが、周りは柵で囲われていて、池のほとりを散策するような場所ではありませんでした。本当はおにぎりを広げて休憩したかったのですがあえなく断念。先を進みます。
ついさっきまで、はるか下方を通っていた国道バイパスは、いつのまにか同じ高さを通っています。国道を渡ると、明治天皇の一行が野点をした場所だという石碑が立っていて、その袂でようやく昼飯にありつけました。とても眺めの良い場所です。

 ここらで長野市から飯綱町に代わります。このあたりの標高は550メートルくらい。善光寺から200メートルは上っているでしょうか。ここでも人家が途切れることはありません。途中の平出という集落は、まるで天空の集落のような趣で、りんご畑がポツポツと広がっています。でもその天空の集落を過ぎた先は国道にぶつかります。さびれるどころかコンビニやスーパーもある、町の郊外の景色に変わりました。
このあたり道端には眺めの良い直売所の施設があり休憩します。中にはいろんな種類のりんごが並んでいます。酸味の強いものや甘みの強いもの、色味も様々で、眺めてるのは面白いものです。この直売所のテラス席から見える山々の景色がとても素敵なものでした。直売所のあたりが本日の工程のピークで、標高600メートルくらい。ここからは下りの道になりますが、このあたりで見える山々は、とても素晴らしい景色でした。
坂を降りたあたりが飯綱町の中心市街地です。道沿いにはいろんな店が並んでますが、日曜は休みの店も多くとても静かなものです。

飯綱町役場のとなりに本陣跡があります。日曜日ですから役場は閉じていてとても静かです。今日の行程はここまでにします。少し余力はあるのですが、すでに3時を過ぎていて、これから古間宿に着く頃には真っ暗になるでしょう。なにより見えるすぐ先に大きな上り坂があるのを見て、これは止めとこう。と思ったのが一番の理由です。
ここまでの行程にはバス路線が通っているはずで、沿道にはバス停も並んでいたのですが、とうとう1台もバスには出合いませんでした。どうやら日曜日は全便運休になっているようです。途中で通り過ぎた長野電鉄のバス営業所は、営業所まるごと休んでます。あって当たり前と思っていたバスも鉄道も、いまや運転手不足と待遇を改善することなしに維持が難しくなって来ています。そのことを思い知らされています。

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