【報酬未払いで逃げた取締役】中村が中村を追う3話
前回までのあらすじ 雑誌ライター中村が、70万の未払い金の被害にあった。委託先の取締役社長の中村は、未払いにも関わらず、アイドルグループと契約した写真集の編集を進めてほしいという。ライター中村は、それを断固として拒否するがー。
別冊ふろくの制作を断った数日後、エディトルアルデザイナーからメールがきた。「未払い分を支払ってもらったので進めます」というのだ。聞けば「編集長からなる早で進めて欲しい」と連絡があったという。
写真のセレクトやマンガも入稿できるだけの材料は揃っていた。なるほど、私がダメだとわかったから、デザイナーのストッパーを外しにかかったという訳か。
私の編集費はその間も支払われず、デザイナーから上がってきたレイアウトをチェックして、校了とした。それが7月末のこと。すぐに「別冊ふろく分の請求書出してね」と編集長に言われる。
私は即日発行した。中村と約束した7月半ばには支払いがないまま、別冊は強制的に校了。なんだかあんまりなやり口に腹が立ってた。さらに後に知るが、この時小額の報酬未払いのスタッフは数人支払われていたという。
私は5月・7月と未払いが続き、一気に窮困した。電話の口調から嘘をついているようにも思えなかったため、7月半ばの支払いを信じていたのだ。そこで、夏休みがスタートした。
夏期講習、習い事、合宿など予定していたイベントに大量の諭吉が飛んだ。この時点では、ライターとしてはほぼ未収入。小・中学生はまだしも、末っ子はまだ幼稚園児のため、パートに出るわけにもいかない。
私は覚悟をもって、中村宛に内容証明を送った。1週間以内に入金がなければ、法的措置をとりますと書面に書いた。このまま連絡がなければ、支払督促を出すつもりだった。
ちょうど、それと同時に未払いスタッフでLINEグループができた。ライター3名・カメラマン3名・スタイリスト3名・ヘアメイク2名・デザイナー2名といった未払いの面々たち、総勢13名である。
一斉に中村に連絡を取る中で、ほとんどのスタッフが電話を無視されていた。しかし、グループラインで情報交換をする中で、一人中村と電話でやりとりできたという人からLINEが入った。
中村と一度合って道義的責任について話し合い、最終的に「念書」を交わすことを目的にグループ代表として会ってきます、という。この後、この夏川氏がリーダーとなって、私たち未払いグループを牽引していくことになる。
私はこの時、平行して支払督促の手続きも進めていた。中村が「7月半ばに入金する」といった約束の日から、すでに1ヶ月が経過していた。3月・5月の未払いが7月半ばと言っていたが、それも未払い。
どうにも中村が信用ならなかった。さらに、8月いっぱいは在宅での仕事しか受けられないし、さすがにお金が底をついてマズイことになってきていたのだ。
私は区の弁護士の無料相談に行き、ネットで調べて、法務局に行って登記簿を取得。簡易裁判所に電話をして、支払督促の書式の書き方や印紙代について聞いた。
そして無事に夏川氏が中村と直談判し、念書を取り交わした。念書の内容は、9月末に各自20万円ずつ支払うというものだった。それ以上の未払い金がある人は、11月までに全額支払い終える、という話だった。
何でも、中村は現在土地を売却中で、それが契約段階まできているから9月末までにはまとまった資金が手に入る、というのだ。夏川氏は、グループLINEでそう報告した。皆が沸いた。
そのあと、夏川氏から直接電話がきた。内容は「別冊の未払い分については、代理店から入金があるそうです。まずは、8月末に1回。次に9月上旬です。本誌の支払いとは別会社からの入金になるので、と中村社長が言ってました」というものだった。
私は了承した。皆は沸いていたが、私は冷静だった。むしろ、静かな怒りすらわいていた。もし、その2回の支払いが1回でも予定通り支払われなかったら、支払督促を出そう。そう、心に決めていた。
グレーゾーンの知的障害者の家族のコミュニティや生活のあり方などをもっと広めたいと思っています。人にいえずに悩んでいる「言葉にしたい人」「不安」を吐き出せるような場所を作りたいです