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🎧アツいのは夜だけでなく

まだまだ毎日暑い。
それでも、カレンダーは9月になっているのだから、気持ちの上では「負けたくない」という思いに駆られる。

夜、寝るときにクーラーを入れるかどうかである。

6月にも散々この想いと戦った。
真夏であるならば、容易に白旗を上げるくせに、カレンダー1枚めくった途端負けた気になるのは何故なんだ。

賞味期限が1日過ぎたものを「腐ってるー!」と騒ぐ、我が家のしずかちゃん…じゃなく夫に対し鼻で笑っているにも関わらず。(しずかちゃんのイメージが間違ってきている)


「今日、クーラー入れる?」
毎晩毎晩、窓を開け、外の空気に触れる。
かすかに虫の音が聞こえ、明らかに真夏のそれとは違う空気が、だけどそれでもまだ、じっとりとした重さを孕んでまとわりつく。


扇風機でいけるだろうか?

そう、我が家の扇風機の話だ。
我が家には非常に奮発したダイソンさんがいる。
羽のないタイプのアレだ。

それまで、我が家の扇風機は自己主張が強すぎるやつで、夜中、全員が寝静まった頃、不意に大音量で「ブィぃィィィーーーン」と唸り出し、「うるさいよ!」と起きてちょっと殴ってやろうと布団から出ると、途端に「スーーーン…」と音を出すのをやめるという、典型的なかまってちゃん野郎だった。

そうして「くそう…まじで静かにしろよ?」ともう一度布団に入り、まどろみ出す頃
「ヴィぃぃぃィィィーーー!!」

今から一緒に、これから一緒に、殴りに行こうかー!?

私の中の飛鳥が拳を振り上げたあたりで、隣のチャゲも目を覚ます。

この一連の流れを繰り返していた頃、ジャパネットでダイソンさんが非常にお安くCMに出ていた。
YAHー!YAHー!YAHー!

そうして、我が家にしてはスタイリッシュすぎる扇風機を手に入れたわけだが、いざ寝室に持ち込んで愕然とした。
「こいつ、下向かねぇ…」

我が家は、ベッドではなく布団を敷いているのだが、ダイソンさんが真正面に向かってしか風を送らない。一応部屋の空気をかき回してはいるが、違う、風にあたりたいのだ私たちは。
「下、向いてくれ、下むけよ、下だ下ーーー!」

それはまるで、某テレビドラマの土下座を強要するがごとく、夫はダイソンさんを斜めにしたりリモコンをひっくり返したりしていた。
しかし、ダイソンさんはプライドが高かった。
絶対土下座なんてしない、俺はしない…!!という気位の高さを崩さない。

頭にきた夫は、次週ゴミの日に出そうと思っていた旧式扇風機を持ってきた。

ダイソンさんが隣にいるからだろか?
彼は、しなやかにその首を下に向けると「まだまだ若いもんには負けねーよ」と言わんが如く柔らかな空気を送り出した。
そして、彼は、その日、一度も唸らなかった。
「新しいものだけが優れているわけじゃねぇだろ?」
…じゃねーよ!!
それが出来るなら、最初から、唸るんじゃねーよ!!

そんなわけで、我が家の9月の熱帯夜には、2台の新旧扇風機が、己たちの権力争いに勤しんでいる。
寝室では
「クーラーつける?」という私の横で
「いやいや、俺が」「夜中に唸るあなたに夜の静けさが守れますか?」「うるせぇ、上下に首も振れないポンコツ野郎が!」「ポンコツとは失敬な!私は最新技術を搭載しているんです!この埃まみれのジジィ…!」
2台が言い争う声が聞こえる。
いや…クーラーつけようそうしよう。
大阪の夜はまだまだ暑い。


というわけで!
今回は、玉三郎さんの『夜の隙間』を読ませていただきました。


こちらは、我が家の小煩いのとちがって、あたたかい。
否、熱帯夜ににホッとする涼風を送り出してくれる。
もしも彼の唸る声をきいたなら。
間違っても殴りに行きはしないのだ。


玉三郎さんのショートショートは、いつも必ず「見守る」視線が入っている気がする。小さな子供や、かつての小さな子供を思い出す視線。
それはきっと、玉三郎さんそのものの視線。
私はそれが大好き。
少し覗いた闇の先、玉三郎さんの愛情が、朝を連れてきてくれます。


そして、こーたさんの朗読は、あいこうしょうたさん『たまには何かのせいにして』

激しく胸キュンしてしまいました。
もどかしい。とてももどかしい恋が、こーたさんの声によってさらにリアルになります。
こんな夜、私にもかつてあったなぁ!
茹だる暑さの中、決して快適ではない浴衣に身を纏ったあの頃を思い出すのです。

そう!涼し気に見せているけど、浴衣の中は、特に帯周りは、大変なことになってます。
それでもさりげない風を装うのは「花火よりも私に見惚れておくんなんし」と思うからこそ!(一概にそうとは限らない)

そんな昔々の真夏の恋を思い出しながら、高鳴る胸キュンをそのままに、なぜかこーたさんに向かって「走れーーー!!」という、ピリカさんと私なのでありました(笑)
ああ、ときめいた。
さて、2人はこのあとどんな会話をしたのかしら?熱帯夜の余韻に浸れます。


朗読は緊張します。
緊張しますが、声に出して読むうちに、自分がその世界の主人公になった気がします。
そんな感覚にさせてくれることが、本当にありがたいのです。
あなたの世界を壊すことがありませんように。
そう思いながら、日々勉強です。


前回のTシャツのお題は、ピリカさんとこーたさんの朗読でした。

2作品とも、軽やかなTシャツとはちがうイメージの物語。
その少しだけ重さのあるストーリーが、胸に優しく響きます。
その響きに呼応するように、2人の朗読の息遣いも優しさで満ちていきます。

題名で「ん?」となり、ちょっとポップなイメージで読み始めると、その世界は全く違うものでした。
気付けば涙が出そうになってます。
「あーと、わわいい」これほどまでに救われる言葉とは。

『花柄』もまた、イメージは明るいポップなものでした。
でもそこには日本の現実。あなたのためを思って選んだものでは無い。そんな日常はきっと、たくさんあるはずなのだ。
でもそれが、1人の青年を変えるきっかけになっていく。

2作品とも、日本のあちこちにある少し残酷な現実。それがたった1枚のTシャツに救われ、胸にとても響きます。

そうそう、その後のトークのチビTも響きました(笑)私もめっちゃ着た!


そして、Marmaladeさんはイギリスから!
距離を超えて、イギリスと日本、全く違和感がなく、時差も感じず、久しぶりの軽快なカフェペンギントーク。
ワードル?むしろ、そっちが異国のトークだった!(笑)
2人の楽しそうな会話、いつまでも聴いていられます。まさにcafe。
ホッと一息、コーヒーを飲み終わる頃には、不思議と元気が湧いてるはず✨


んー!
皆さん、本当にアツいです!




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