ナカミチの考察(VOL.19) 700ZXL - 1000ZXLに続くNO.2のポジション
VOL.6ではナカミチのカセットデッキの最高峰である1000ZXLを取りあげました。今回は次席ポジションである700ZXLを取りあげます。
はじめに
この700ZXLというモデルは、最高峰の1000ZXLと機能的には肉薄するものがありますが、1000ZXLは機能をパネルデザインにそのまま投影したメカメカしいプロ向けのツール、片や700ZXLは使用頻度の低いスイッチはシーリングパネル下に隠すというスタイリッシュでホームユース向け。一言で表すと「剛と柔」。それは基調色でも黒とシルバーと全く印象が異なります。
オートキャリブレーション
1000ZXLのオートキャリブレーション時に使用する内蔵発振器は400Hz、2.4KHz、7.2KHz、20KHzの4種類。片や、700ZXLは400Hz、7KHz、15KHzの3種類。1000ZXLがバイアス調整に15KHzでなく、400Hzを使用。また400Hzと2.4KHz、400Hzと7.2KHzのレベルを比較して処理するのに対して、700ZXLは400Hzでレベル感度、15KHzでバイアス調整、7KHzで録音イコライザ調整と、これまでのABLE非搭載モデルで行ってきた400Hzでレベル感度、15KHzでバイアス調整に7KHzで録音イコライザ調整を加えたものになっています。
1000ZXLと比較すると、20Hz-20,000Hz±0.75dBに対し、20Hz-20,000Hz±1.5dBとなりますが、これがメタルテープだけでなく、ハイポジ、ノーマルポジションのテープでも担保されるというのは他社のカセットデッキに対してはアドバンテージになると思います。
ALBE正常終了後のメモリーも1000ZXLと同じくA、B、C、Dの4つ保存することができます。また保存される情報もアジマスを除くABLE設定、イコライザ設定(70/120)、ノイズリダクション設定と同仕様です。
RAMM
RAMM(ランダム・アクセス・ミュージック・メモリ)はその名の通り、自動頭出し装置。5Hzの超低周波コード信号を用いて、曲順コードを記録し、再生時に演奏順や、リピートなどを自由にプログラムすることができます。また、このコードと同時に録音した時のノイズリダクションの状態と再生イコライザの状態を記録することができ、再生時に自動的に読み出し、スイッチの状態と無関係にセットされます。
コードは再生イコライザおよびノイズリダクションの情報が7ビット、曲順コードの13ビットの合計20ビットで構成され、15曲までの録音と、30曲までの再生予約プログラムが可能です。コード信号は5Hz±0.1Hz、レベルは60nwb/mで左右チャンネルに逆相で同時に記録され、検知エラーをなくしています。5Hzという超低周波を記録し、読み出しを行うためにデッキはほぼ直流に近い3Hzからの記録再生が必要とされ、巻き戻し、早送りにおいてサーチ検出するために音声信号と高精度なフィルターで分離されます。
その他の特長
・3ポイントマイクロホン入力を持ち、ライン入力とのミキシングが可能
・低域の有害信号を除くサブソニックフィルタ、FMマルチプレックスを除くMPXフィルタ
・400Hz 0dBのテスト信号を内蔵、基準レベルとして利用可能
・DC化された再生アンプ、録音アンプ、ダブルNF回路等により、歪の少ないダイナミックレンジの大きな録音再生が可能です。
※ナカミチで録音されたテープを他社で再生すると歪むのは、このダイナミックレンジが異なるためと思われます。
・リモートコントロールRM-300(オプション)でメカニズムのコントロール、およびRAMMコードの記録、再生プログラミングが可能。テープカウンタも内蔵
・タイマーによる留守録音や再生が可能
・ピッチコントロール(±6%)
・高出力ヘッドホン端子
スペック
トラック形式 :4トラック・2チャンネル・ステレオ方式
ヘッド :3(消去x1、録音x1、再生x1)
モーター(テープ駆動用) :PLLサーボモーター(キャプスタン用)x1、DCモーター(リール用)x1、 DCモーター(アジマス用)x1、DCモーター(メカコントロール用)x1
電源 :100V 50/60Hz
消費電力 :最大50W
テープ速度 :4.8cm/秒
ワウ・フラッター :0.04%以下(WTD RMS)、0.08%以下(WTD PEAK)
周波数特性 :20Hz-20,000Hz±1.5dB、18Hz-24,000Hz±3dB
(録音レベル-20dB、EX、EXII、SX、ZXテープ)
総合S/N比 :66dB以上(3%THD)、60dB以上(0%)
(IHF-A、Wrms、400Hz、ドルビーNR、ZXテープ、70μS)
総合歪率 :0.8%(ZXテープ)、1.0%(SX、EXIIテープ)
(400Hz、0dB)
消去率 :60dB以上(100Hz)
チャンネル・セパレーション:37dB以上(1KHz、0dB)
バイアス周波数 :105KHz
入力(ライン) :50mV 50KΩ
(マイクロホン) :0.2mV 10KΩ
(ノイズリダクション) :100mV 50KΩ
出力(ライン) :1V(400Hz、0dB、アウトプットレベル最大)
(ヘッドホン) :45mW(400Hz、0dB、アウトプットレベル最大)
(ノイズリダクション) :100mV、2.2KΩ
寸法 :W500xH262xD250mm
重量 :約14kg
販売年 :1981年
当時の定価 :450,000円
出典: ナカミチ株式会社 700ZXL カタログ (1981年)
最後に
今回は700ZXLについて取り上げましたが、ランク的にはNO.3となる700ZXEというモデルが存在します。700ZXEについてはまたの機会に取り上げたいと思います。
2024.4.20