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[ナカミチの考察(VOL.20)]  1000p/1000(DAT) - 世界最高のデジタルオーディオレコーダーを目指して開発されたデジタルオーディオプロセッサーとDATトランスポート

今回は、世界最高のデジタルオーディオレコーダーを目指して開発されたデジタルオーディオプロセッサーとDATトランスポートと組み合わせてアナログデッキの最高峰を超える最高の音質を追求して開発されたデジタルオーディオレコーディングシステムの紹介です。

以前「ナカミチの考察」VOL.15の1000mbで1000p/1000DATについて今後取り上げますとお約束しておりました。

DATトランスポートの1000はカセットデッキの1000と同じモデル番号なので、以降1000DATと表記します。


はじめに

ナカミチは、世界初の3ヘッドカセットデッキであるモデル1000を世に送り出してカセットオーディオをHi-Fiオーディオの世界に引き上げました。そのナカミチがオーディオメーカーとしての原点に立ち返り、あらゆる意味で現在考え得る最高を目指した録音再生システムがNakamichi 1000デジタルレコーディングシステムとして再度世に問いかけたモデルなのです。

デジタルオーディオプロセッサー(1000p)

・20ビット・フルキャリブレート・D/Aコンバージョンシステム(1000p)

DATやCDのフォーマットが16ビット方式を採る限りこれらデジタルオーディオ機器の音質はその16ビット分の精度をいかにきっちり再現できるかで決まります。この「変換精度」を極限まで高め、そこに刻まれた音楽情報を寸分違わぬ正確さで取り出すことこそが、デジタルオーディオにおける音質改善の第一歩であり終着点でもあるわけです。ナカミチが1000p/1000DATのために作り上げた20ビット・フルキャリブレートD/Aコンバージョンシステム。D/AコンバータIC、一基ごとの「処方」=エラーデータをすべて記憶し、その変換精度を完全補正するデジタルROMキャリブレーション、片チャンネルあたり2基のD/Aコンバータをビット上下に割り当て、真の20ビット精度を獲得するタンデム20ビットコンバータ、そしてめざましい高精度化に伴い明らかになった、より微細なグリッジをも完璧なまでに除去するグリッジイレーサー。この3つの独創的キーテクノロジーにより、圧倒的変換精度と理論限界値の超低歪率とをあわせて実現しました。かつて誰も経験したことのない至高の音を響かせる、驚異のD/A変換システムです。

・サンプルホールドレス・オートキャリブレーションデュアルA/Dコンバータ(1000p)

ホームユースのみならず、ライブレコーディングなどプロフェッショナルの分野でも活躍が期待される1000/1000p。そのA/Dコンバータセクションには、従来のプロ用デジタルマスターレコーダーを凌ぐ高品位なマスタリングクオリティが求められています。そこで1000pでは最先端のA/D変換方式である電荷比較法をオーディオ用として実用化。各ビットの重みづけに電荷を利用し、A/D変換においても音質劣化の原因となっていたサンプルホールド回路を排除することに成功しました。されに各ビットの重みづけ精度を自動較正するオートビットキャリブレーションシステムや16ビット2倍オーバーサンプリングデジタルフィルターの採用など、ナカミチならではの意欲的装備が満載です。

1000pの内部

・アナログ信号の入力/出力(1000p)
プロ機としても使用されるので、入出力はRCA端子以外にバランス接続のキャノンコネクタも装備しています。

・デジタル信号の入力/出力(1000p)
デジタル信号は同軸/オプティカルの切り替えが可能です。

後期モデルについて(1000p)

前期モデルの各ボードは、
A/DコンバータがAD101p
D/AコンバータがDA101p
I/FボードがIF101p
に対して、
A/DコンバータがAD102p
D/AコンバータがDA102p
I/FボードがIF102p
と品番が変わっています。カタログなど公的資料に、前期モデル/後期モデルやボードの違いについての情報は現時点で入手出来ておりません。

後期モデル+DA-111p

オプションDA-111pについて (1000p)

DA-111pは1000p専用に開発された、プラグインユニット方式のD/Aコンバータボードです。
当時の価格は17万円で1000pの本体価格が55万円に対し1/3というものでした。
また、標準のD/Aコンバーボードに対して、

周波数特性(1000p/1000DAT)
 5-20000Hz±0.5dB(44.1KHz) → DC-20000Hz±0.5dB(44.1KHz)
全高調波歪率+雑音
 0.0015%(1KHz、44.1KHz) → 0.002%(20-20000Hz、44.1KHz)

オプションDAボード DA-111p

・可変出力(1000p)

1000pのアナログ出力はアンバランス出力が固定と可変、バランス接続は可変のみで出力ボリューム連動です。これにより、1000pのアナログ出力をパワーアンプに接続して1000pをプリアンプとして利用することが可能です。

DATトランスポート(1000DAT)

・次世代DATメカニズムFAST(1000DAT)

<FAST>=ファスト・アクセス・ステーショナリーテープガイド・トランスポート。その名のとおりのスピーディでダイレクトな操作感覚と、独自のステーショナリーテープガイドがもたらす驚くべき記録精度で、究極を主張する次世代のDATメカニズムとして誕生しました。

 *ローディングタイム1.8秒、早巻き19秒のファスト・アクセス

テープを入れ、ドアを手で閉めた瞬間にテープは音もなく回転ヘッドへ吸い寄せられ、すぐさまプレイが始まります。その間、わずか1.8秒。従来のDATに動作がウソのような、目も醒める鮮やかなアクションです。その秘密はクイックローディングアーム。人間の関節の動きにも似たユニークな特殊リンクアームと対話型マイクロプロセッサーの働きで「テープを引き出すときは弱いトルクでゆっくり、途中はすばやく、テープがヘッドに当たる瞬間はまたゆっくり、そしてピンチローラーやローディングアームが定位置にロックされるときは強いトルクでゆっくり」とアーム速度や力の入れ具合を理想的にコントロール。テープを優しく守りながら、従来の2倍以上という驚異的なローディング速度を実現しました。

また、従来のDATは早送り・巻き戻しの時も常にヘッドにテープが巻き付いたままの状態でした。そのため、早巻き速度はどうしても遅くなり、そればかりかテープ自体にも大きな負担をかけていました。<FAST>では、シンプルなテープパス構造を活かしたユニークなハーフロードポジションを設定。FFまたはREWボタンを続けて2回押すとテープがヘッドから完全にはなれた状態にセットされ、即座に平均400倍速での早巻きが始まります。早巻きを開始すると最初は徐々に加速してテープ中央部付近で約600倍速にまで達し、テープが終わりに近づくと約150倍速以下に減速。テープ終端のリーダーテープを検知するとリールモーター制御によるソフトなブレーキングでテープを安全に停止させます。その結果、120分テープで従来45秒から60秒程度も掛かっていた早巻き時間を約19秒にまで短縮。ハーフロード状態で、テープに当たっているのはガイドローラーだけなので、テープにはほとんど負担をかけずに超高速での早巻きが可能になりました。

 *テープとヘッドの位置関係を厳密に管理するステーショナリーテープガイド

DATのトラック幅はわずか13μm足らず。例えば回転ヘッド・ヘリカルスキャン方式という基本レイアウトを共有する機器、中でも高密度記録の代表選手といわれる8mmVTRのトラック幅(約20μm)、同じくVHS長時間モード(19μm)と比べても、DATのテープ走行精度がいかにシビアなのか、想像できるかと思います。それだけに毎分2000回転で廻るヘッドでわずか1000分の13ミリのトラックを正確にトレースさせるDATの記録/再生では、回転ヘッドに対するテープのアライメント、すなわちテープの「横傾斜」「高さ」「前後のアオリ」の3点の精度をひときわ厳密に管理する必要があります。ところが既存のVTR技術をベースにした従来のすべてのDATメカニズムは、この大切なアライメント管理をローディングの度に移動する一対の可動テープガイドだけに頼っていたのです。そこで生まれたのがステーショナリーテープガイドなのです。

 *静かでスムーズなテープオペレーション

<FAST>の動作を眺めていると、とても素早く、しかもエレガントで穏やか。まるで生き物のように洗練された身のこなしが印象的です。その秘密は大トルク・低回転のモーターを得て、テープを滑らかにピックアップするクイックローディングアーム、テープを傷めずに俊敏にコントロールされるリールサーボやブレーキ、そして静かで余裕ある高精度4D.D.方式などナカミチの伝統ともいえる「サイレントメカニズム」で培われたノウハウの数々。メカにもテープにも無駄な動き一切させないことで、きわめて静粛な動作を実現しています。

・アフターモニターを可能にした4ヘッドシステム(1000DAT)

1000DATに搭載されたヘッドは、録音/再生2個ずつの専用高精度ヘッドをそれぞれ90度おきに配置した4ヘッドシステムです。テープ/ソース切り替え時のあらゆるノイズを有効に遮断する超高速デジタルミューティング回路網の開発により、従来のデジタルレコーダーでは困難とされていたアナログさながらのスムースなアフターモニターを実現しています。
録音、とりわけ失敗が許されないプロの世界において、アフターモニターのもたらす絶大な安心感がどれほど貴重なモノであるかは説明するまでもないことです。同じ理由から、1000DATにはカセットテープやローディングアームの動きをわざわざ見せる、ユニークなディスプレイウィンドウを採用しています。

・リモートコントローラー 1000r (1000DAT)

1000DATの操作パネルをそのままリモートコントローラーに仕立てた1000r。キーレイアウトやサイズはもちろん、キー・ストロークまでも1000DAT本体のものを忠実に再現し、リモート操作時の違和感を払拭しています。1000rは1000DATのほとんどの機能を備えており、しかも2台までの1000DATを独立して操作することが可能です。ワイヤード、ワイヤレスのいずれかを注文時に選ぶことが可能でした。ワイヤードはレアでこれまで一度もお目に掛かったことがありません。

ワイヤレスリモコン1000r

・長時間録音モード(1000DAT)

1000DATは長時間録音モードの再生、録音ともに非対応です。

主要回路をそっくり交換できるプラグインユニット方式

主要回路を合計6ブロックにモジュール化し、裏面ボードからの差し替えが可能。将来におけるDATフォーマットの変更や性能面でのバージョンアップなどを考慮したフレキシブルな設計です。必要に応じて内容をリフレッシュ出来るうえに、アプリケーションの可能性も広がる成長するマシンと言えると思います。後述しますが、1000pは後期モデルで3枚のボードすべてをバージョンアップしています。

プロフェッショナルバージョンの存在

一部の方にしか、ご存じないかと思いますがこの1000pには通常タイプとは別にプロフェッショナルバージョンがあるのです。

通常バージョンとプロフェッショナルバージョンの違いですが、通常バージョンはCD複製防止のために、CDからDATにデジタルコピーが出来ない様になっています。具体的にはプロフェッショナルバージョンには48KHzオシレーターにプラスして44.1KHzオシレーターが組み込まれており、アナログ信号を44.1KHzのデジタル変換出力が可能です。(切り替えにはリアパネルからADC基板を外してDIPスイッチを切り替える必要があります) またプロフェッショナルバージョンの1000DATでは32KHz、41.1KHz、48KHzのデジタル録音すべて録音可能です。(コピー禁止コードも記録されます)さらにCDからの44.1KHzサンプリングのデジタル出力をデジタルtoデジタルで1000DATで録音することが可能です。

ところがこのバージョン違いなのですが、銘板ではプロフェッショナルバージョンと通常バージョンともに全く同じであり、見分けがつきません。私が経験則で確実ではないのですが、ラックマウント用のハンドルが付いているものはプロフェッショナルバージョンである可能性が高いと判断しています。プロは大抵EIA19インチラックにインストールして使用して、家庭ではオーディオラックに入れているのでラックマウントハンドルは不要ですからね。

1000DAT+1000p

1000シリーズの弱点?

1000mbを含めた1000p、1000DATの1000シリーズ。技術的に一切の妥協をせずに開発された製品なのですが、弱点があるとすれば、脚部のゴムが加水分解してベトベトになることです。
カセットデッキのゴムベルト同様に、劣化したゴムを除去するのが大変なのです。そのまま放置すると、周辺にこの黒いベトベトを広げてしまい、被害が広範囲に渡ってしまいます。オークションで出品されている個体は養生テープなどで覆っているのをよく見かけます。?き出しのままで放置すると被害が広がりますし、かといって対処するのも大変ですから。きっと所有されている方で困っている方が多いでしょうね。TN-SoundTechのメンテ対象モデルに加えることも検討したいと思います。


メンテナンス済みの脚部

仕様

D/Aコンバータ(デジタルオーディオプロセッサー)


<D/Aコンバータ部(44.1kHzにて測定)>
方式 :20ビット・フルキャリブレートD/Aコンバータ
20ビット・8倍オーバーサンプリングデジタルフィルター
標本化周波数: 48kHz、44.1kHz、32kHz
周波数特性: 5Hz~20kHz ±0.5dB
S/N比: 106dB以上
ダイナミックレンジ :100dB以上
全高調波歪率: 0.0005%(1kHz)
全高調波歪率:雑音 0.0015%(1kHz)
チャンネルセパレーション: 106dB以上
<A/Dコンバータ部(標本化周波数48kHz、A/D→D/Aにて測定)>
方式 16ビット・オートキャリブレーションA/Dコンバータ
16ビット・2倍オーバーサンプリングデジタルフィルター
標本化周波数: 48kHz
周波数特性: 5Hz~22kHz ±0.5dB
S/N比: 95dB以上
ダイナミックレンジ: 95dB以上
全高調波歪率: 0.001%(1kHz)
全高調波歪率:雑音 0.003%(1kHz)
チャンネルセパレーション: 85dB以上
<入出力部>
デジタル入力: 75Ω同軸/光(切換)x3
デジタル出力 :75Ω同軸/光(パラレル)x2
ライン入力: 平衡:50mV(-18dB、Rec level最大)/40kΩ
不平衡:50mV(-18dB、Rec level最大)/25kΩ
ライン出力(平衡): Fixed:2V(0dB)/100Ω
Variable:2V(0dB、Output level最大)/100Ω
ライン出力(不平衡): Fixed:2V(0dB)/1kΩ
Variable:2V(0dB、Ouput level最大)/1kΩ
ヘッドホン出力: 100mW(0dB、Phones level最大)/40Ω
<総合>
電源: AC100V、50Hz/60Hz
消費電力: 最大70W
外形寸法: 幅435x高さ133x奥行370mm
重量: 約17.5kg

DATデッキ(DATトランスポート)


形式: 回転ヘッド方式デジタルオーディオレコーダー
標本化周波数: 48kHz、32kHz(録音/再生)、44.1kHz(再生)
ヘッド回転数: 2000rpm(録音/再生時)
テープ速度: 8.15mm/s
ワウ・フラッター: 測定限界以下
デジタル入力: 75Ω同軸/光(切換)
デジタル出力: 75Ω同軸/光(パラレル)
電源: AC100V、50Hz/60Hz
消費電力: 最大40W
外形寸法: 幅435x高さ133x奥行370mm
重量: 約16kg
付属:リモートコントローラー Nakamichi1000r
電源: DC3V(1.5Vx2)
外形寸法: 幅307x高さ44x奥行123mm
重量: 約900g(乾電池含)

ご参考

以前ステレオ時代のDAT特集で私が持ち込んだ1000p、1000DATが掲載されています。以下にAmazonのリンクを貼っておきます。

ステレオ時代 VOL.19

アマゾンのKindle Unlimited会員の方は、無料で読めます。

最後に

今回でナカミチ1000シリーズを全て取り上げたことになります。この1000シリーズ特筆すべきは高級感溢れるデザイン、機械加工されたアルミ素材の美しさ。特に1000pは専用設計のアルミ無垢ノブ、梨地処理されマットなフロントパネルは鏡面処理で縁取られた手の込んだモノ。1000DATはメカの特徴的な部分であるローディング・ドラムヘッドがシースルーで見ることの出来る窓。見える部分だけでなく、性能を重視した回路設計と高品質な電子パーツ、銅シャーシ。妥協やコストダウンが透ける様な、ガッカリする部分が一切見られない設計・製造から漂う、深部から湧き出てくるオーラは所有欲を十分に満たしてくれます。

ナカミチのマガジンである「ナカミチの考察」ですが、今回で20回となりました。通算20回という一区切りであり、「ナカミチの考察」は一旦お休みさせて頂こうかと思います。「ナカミチの考察」以外のコラムはこれまで通り続けていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

2024.05.18


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