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コンビニのおでんを見ると思い出す甘酸っぱい記憶(エッセイ)

私にとってコンビニのおでんは思い出深い。

私が大学生の時、当時好きだった先輩と一緒に食べたから。
その先輩はサークルの2つ上の先輩で、明らかに女慣れした彼女が途切れることのない人である。

先輩とは下宿先が近く、帰り道が一緒になることが多かった。
好きな漫画やアニメが一緒だったこともあり、すぐに仲良くなった。
その先輩の仲良しグループの飲み会になぜか私が呼ばれて行くことも多々あった。
私は先輩からお誘いがくれば、嬉しくて嬉しくて、特別用事がない限りは飛んで行った。
都合のいい後輩である。
私はきっと先輩にとって「妹のような存在」だったと思う。

ある飲み会の帰り道、いつも通り二人で歩いていると、
「おでん食いたくね?」と先輩が突然言い出した。
私は即答で、
「私も同じこと思ってました!!!!!!」と言った。
そんなこと思ってもないのに。
家を一旦通り過ぎて、遠回りをしてセブンイレブンに寄った。
そこで先輩は大根と牛すじ、私は卵とこんにゃくを選び、ついでに缶チューハイを2本買った。

それから先輩の家に行き、深夜番組を見ながらおでんを食べた。
私にとっては、好きな人と家で二人っきりという夢のような空間。
来客を想定していない散らかった部屋も愛おしかった。
おでんの出汁をどちらが多く飲むかで言い合いをしたり、ワンピースの名シーンを見たり、これまでの恋愛の話をしながら、
私はほんのちょっとだけ「手出されるかも、」という期待を抱いていた。
しかし、7畳の部屋に3時間いても、私は先輩にとって「妹のような存在」のまま終わった。

社会人となった今でも、その先輩とは数か月に一回飲みに行く仲である。
あの時私が何か仕掛けていれば、と少しだけ後悔もあるが、
何もなかったからこそ、今でも仲良くできているのかもしれない。

コンビニのおでんを見ると思い出す大学時代の甘酸っぱい記憶である。

おわり

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