「宇宙戦士バルディオス」全話レビュー(2)パルサ・バーンの秘密
あらすじ
木星基地が攻撃を受ける中、Sー1星から亜空間突入して太陽系にきたマリンは地球防衛組織ブルーフィクサーの捕虜になる。火星基地が異星人の攻撃を受け、オリバーがバルディ・プライズで出撃する。
Aパート:マリン発見、尋問、クインシュタイン博士の提案
Bパート:マリンのジェミー説得、敵との遭遇、バルディプライズ発進
コメント
第2話で、いよいよ地球側の主要キャラクターが登場する。月に不時着したマリンだが、折悪く木星のバーナード基地が何者かに襲撃されるという事件が発生しており、不審な人物としてマリンは救助されたものの、いきなり捕虜扱いされることになる。重ねて火星基地も襲撃され、異星人だと名乗るマリンの関与を疑った月影長官は、彼を脳波検査にかけることにする。
マリンを救助、尋問するという流れの中で、オリバー、雷太、ジェミーという主要キャラを、その性格を印象付けながら紹介している。驚くべきことに、異星人でありながらマリンとは特に翻訳なども介さず言葉が通じ、コミュニケーションが成り立ってしまう。「えらいご都合主義だな」とそのときは思ったが、実はこれは視聴者へ投げかけられた「ナゾ」だったことが終盤になってわかってくる。ちなみに当初、オリバーは「言葉が通じるということは、地球人だな?おまえ」と言うが、太陽系全域のレーター網に引っかかることなく侵入したという事実から、マリンが異星人であることに疑いを持たなくなった。
一方雷太は、木星のバーナード基地を襲ったのはおまえか? とマリンを詰問し、「襲った?」と不思議そうに問い返したマリンにふさけるな、と椅子を投げ飛ばすなど、粗暴な振る舞いを見せる。このとき机の上の花瓶が落ちて粉々になり、マリンが驚きの表情を見せるという何気ない一コマで、彼の純朴さと、なにかを予見するかのような不吉さを表現しているのが印象的であった。
一方脳波検査の実行を命じた月影長官に対し、クインシュタイン博士はその軽率さをたしなめる。捕虜としたマリンの扱いをめぐって対立するなど、二人はのっけから険悪である。
監禁室に閉じ込められたマリンは「外の空気を吸ってみたら」というジェミーのアドバイスに驚き、窓から見た青い海と夕暮れ時の美しい空に感動する。故郷のSー1星でははるか昔に失われた光景だった。放射能汚染のため、外に出て深呼吸することもできなかったのである。そんな彼の様子から、次第にジェミーはマリンのことを信じるようになる。
その頃、Sー1星移民団側も、地球の映像を驚きの目で見ていた。アフロディアの報告で、木星、火星に墜落した移民船は、これらの基地のエネルギーフィールドに吸い寄せられたことがわかり、地球には科学力を有した先住民がいることが明らかになる。偵察のため、出動したアフロディアは透明円盤を出撃させ、その技術力の高さに月影長官らは驚愕するのだった。
第2話でようやく主人公サイドの登場となるが、彼らのメカ、バルディプライズとキャタレンジャーのうち、今回出動するのはバルディプライズだけである。それも、敵の科学力の前にまったく歯が立たず、出たとたんにピンチとなる。ガットラーが地球に向かってきたことを知ったマリンが、父の遺言を思い出し出撃を決意し、異星人に対抗するためマリンを利用する、というクインシュタイン博士の策謀が図らずも実現してゆく。
合体メカを1機ずつ小出しにするという見せ方が実に巧みである。時間のかかる合体シーンをオミットすることで、異星人が味方になり、その科学技術を手に入れるまでの複雑な経緯をまじえながら、主要キャラクターの関係なども含めて描き出し、息もつかせぬ濃密な展開となっている。
キャラクター紹介
ジャック・オリバー
ブルー・フィクサー隊員でバルディプライズを操縦する。マリンを救助したあとの最初の尋問で、言葉が通じるにもかかわらず、彼が異星人であることを見抜くなど、冷静沈着な一面を見せた。
北斗雷太
ブルー・フィクサー隊員でキャタレンジャーを操縦する。月に不時着したマリンを最初に発見した。粗暴な振る舞いで、かっとなりやすい性格であり、マリンが異星人だと知って火星基地襲撃を疑う。
ジェミー星野
ブルー・フィクサー隊員でオリバー、雷太とともに行動する。異星人襲撃に怒りをあらわにしたが、監禁されたマリンと対話を図り、彼が敵ではないこと、地球の側に立って戦う意志を知って最初に彼を信じた。
月影長官
ブルー・フィクサーを率いる指揮官。火星基地襲撃の第一報で「おそらく、生存者はいまい」と調べもせずに断定するなど、短絡的で深慮遠謀に欠ける人物という印象である。そのために、科学技術面を担当するクインシュタイン博士との関係もギクシャクしている様子が伺える。
クインシュタイン博士
ブルー・フィクサーの科学技術面を担当する科学者。長官の月影に対しても対等な立場で越権行為をたしなめるなど、大きな力を持っている。パルサ・バーンを調べて異星人の高い技術力を見抜いた。マリンの扱いをめぐって月影長官と対立する。
今回のポンコツ指揮官:月影長官
「わたくしの許可なく、脳波探査機をセットしたのは誰?
長官、越権行為は困ります。委員会に提訴しますよ」
捕虜としたマリンから情報を得るため、月影長官は脳波探査機の使用を命じるが、そこに横槍を入れるのがクインシュタイン博士である。なんと、月影は博士に無断で機械をセットさせたのだ。一刻を争うのだという月影に対し、彼女は下手をすれば捕虜を死なせ、その結果一番困るのは長官だと説教を食らわせる。マリンの乗機パルサ・バーンを調査した博士は、彼の助けなしに異星人を退けることはできないと見抜いていたのだ。博士のこの助言がなければ、地球は2話にして滅びていたかもしれない、と思うと感慨深い。
今回の謎用語:脳波探査機
どう見ても拷問用具にしか見えないが、脳波を探査して供述の真偽を解析するための装置である。わかりやすく言えばウソ発見器で、質問に対してウソを答えると、背後にあるモニターに異常な波長が表示される仕組みになっているようである。脳波探査機はマリンの供述を真実と判定したが、月影長官はそれを受け入れようとしなかった。使う人間にどうも問題がありそうである。
評点
★★★★★
マリンとの接触から彼が地球側に立つまでを一気に描いて密度の濃い内容。