僕は何を思えばいいんだろう 僕は何て言えばいいんだろう
家のチャイムが鳴った。
インターホンのモニターを見たけど、相手が見える位置に立ってくれていないので誰かわからない。
1/2のガチャ。
この前は勇気を出してガチャを回して応答してみたが、N●K受信料徴収の方だった。
ハズレだった…
なので今回は躊躇った。
しばらくするとポストに何か差し込まれた。
不在通知票だ。
「出れば良かった」と僕と同じ気持ちを味わった人は今日も日本に何万人といるだろう。
この郵便物ネタは “あるあるネタ” の鉄板だ。
共感ネタとしては、打率10割を誇るアベレージヒッター。
「今ならまだ間に合う」
と、玄関へ向かおうとした瞬間、自分がパンツ一丁姿だったことに気づいた。
先ほどシャワーを浴びて、部屋が暑かったから、けどエアコンを入れるほどまだ暑くないので、とりあえずこのままでいようとずっとこの姿だったのだ。
急いでTシャツを着て、ズボンを履いた。
焦っていたからだろう、片方の足を通して、もう1つの足を通そうとした時にバランスを崩した。
幸い横が壁だったから、もたれるだけで事なきを得た。
何とかズボンを履いてドアを開けて外に出たが、郵便配達員の姿はもうない。
そう時間は経ってないしまだ間に合うと思い、エレベーターに向かうが、「ただいま点検中」と書かれた札がおかれており、すぐにエレベーターが使用できないので階段を使うしかないのだと判断し階段を降りた。
マンションの下に着くと、郵便局のバンが見えた。近付くと、郵便配達員がおそらく僕に渡すはずだった大きい封筒を持っていた。
僕が「すいません!」と声をかけようとしたコンマ何秒か早く、郵便配達員が封筒を開いたバックドアから車の中に思い切り投げつけているところを見てしまった…
「あっ…」と言葉が漏れそうになった。
郵便配達員が僕の姿に気付いた。
「あの、先ほどチャイム鳴ったけど出れなくて…」で息継ぎして次の言葉を言おうとしたけれど、察しの良い郵便配達員は不在通知を入れた主が追いかけてきたことを瞬時に察知し、「あ、これですね」と先ほど車に投げつけた封筒を車から取り出し、「飛田将行様ですね?」と訪ねてきた。
「どうしよう、見てしまった…」
受け答えしながら、郵便配達員の顔をチラッと覗いてみると通常運転に見えたので、封筒を投げつけてるところを僕が見ていたと気付いてはいないのだろう。
自分の名前を記入して、郵便物を受け取り、「ありがとうございました」と言って車に乗り込み去っていった。
「これ(封筒)、投げてたよな?」
頭の中で反芻する。
エレベーターが使えないから、階段登って手間かけてチャイム鳴らしたのに受取人は出てこない。
確かに腹立つけど…
僕の前も不在だらけだったとか、郵便物全然ハケれないからイライラしてたとか、それで「つい!」って感じだったのか?
色々考えたけど、事実はどうにせよ、自分の郵便物を雑に扱われたことがどうも腑に落ちない。
モヤモヤする。
僕はあの郵便配達員に何か言うべきだったのだろうか?
けど、何を言えば良かったのだろうか?
何かグルグルTHE YELLOW MONKEYの『JAM』みたいなことを考える。
そんな昼下がりの話。
2023/06/24
飛田将行 とびたまさゆき
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