坂本誠志郎がマウンドでかけた言葉【8/22 対ドラゴンズ戦○】
延長10回、加治屋蓮の後を受けてリリーフした島本浩也が2アウト満塁のピンチを迎えた。1点でも取られたら絶対的守護神のR.マルティネスが出てくることは間違いない。失点した瞬間に試合が終わると言っても過言では無いだろう。
そんなプレッシャーを感じ取ったのか、島本が投じたボールは2球続けてボールになった。2ボール0ストライクになったところで、キャッチャーの坂本誠志郎がタイムをかける。坂本がマウンドまで駆け寄り、島本に何か話しかけた。
坂本がマウンドを後にし、試合が再開する。島本はストレート2球でストライクを奪い、5球目に投じた得意のフォークでサードゴロに打ち取った。ピンチを0点で切り抜けた。
「信用してます」。
試合後のヒーローインタビューで島本は坂本からもらった言葉を明かしてくれた。
信用の意味を国語辞典で調べてみる。
不確かなものばかりであふれる野球の試合、しかもこの極限に近い状況でどうしてこんな言葉をさらっと出せるのだろう。
誰が言い出したのかは分からないけど、野球にはこんな言葉がある。「抑えたらピッチャーのおかげ。打たれたらキャッチャーの責任」。
たとえ坂本がこれまでの経験と洞察力を発揮してサインを出しても、ピッチャーがど真ん中に投げミスすれば容赦なく打たれる。そうなってしまったら、もはやキャッチャーとしては何もできない。厳しく批判されることが多いポジションで腹を括ること、決して誰もができることじゃない。
あの場面で島本にかけるべき言葉が「信用してます」の一言だったのか、それは誰にも分からない。だが坂本がマウンドに行ったあの一呼吸を経て、島本がもう1度スイッチを入れ直したことは間違いない。2ボールになって不穏な空気が漂い始めるなか、マウンドで孤独になりかけていた島本を、坂本の一言が救ってくれた。
チームのみんなから信用されている坂本が「信用してます」と言うからこそ、あの言葉に重みが出てくる。
10回裏、大山悠輔のサヨナラ打でチームは勝利した。ピッチャーの良さを引き出した坂本とキャッチャーの期待に応えた島本のふたりがチームを歓喜の瞬間に導いてくれた。